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「ヒロト、しっかりして!」
自分たちの存在を否定した父さんに向け玲奈が蹴りつけたボールは、庇うように前へ出たヒロトの腹部に直撃した、私は目を見開くことしか出来ず、ヒロトが倒れ込む音でようやく動くことが出来た
苦痛に顔を歪めるヒロトを抱き起こせば玲奈がヒロトを咎めるように怒鳴りつける、存在を否定したそいつを何故庇うのだと
私に肩を貸りながら立ち上がったヒロトは腹部の痛みに耐えながらそれに答える、それでも大事な父さんなんだと
「……それでも構わなかった、父さんが俺に本当のヒロトの姿を重ね合わせるだけでも……、俺は姉さんみたいに強くはないから」
私だって強くないよ、出掛かった言葉を飲み込んでヒロトの決意の篭った目を見詰めた
私とヒロトが父さんの双子の子供と名前も容姿も瓜二つだと瞳子さんから聞かされたときだって、さっきの試合だって自分の立場と弱さを知ってただ泣くことしかできなかったのだから
ヒロトの言葉に父さんが何かを決意したのか玲奈の方へボールを転がし、お前の気が治まるのならば私に打てと、両手を広げた
父さんの思いを誰も止めることは出来ない、玲奈が叫び声を上げながらボールを打とうと足を振り上げるが、怒りに満ちていた表情をゆがませ、涙を流した
「打てない、打てるわけない……! だって、だってあなたは、私にとっても大切な父さんさんだ……!」
膝を着いて泣き崩れる玲奈を抱きしめたくて、ヒロトには自力で立ってもらい、玲奈の元へ走った
「玲奈、玲奈!」
「名前……、私は、わたしは……!」
「玲奈、今までよく頑張ったわ、偉い偉い」
「っ、うああぁあぁっ!」
玲奈を抱きしめ、昔そうやっていたように頭を撫でてやれば小さい子供のように声を荒げて泣いた
それに触発された由宇や君之たちも一斉に抱きついてきたのでちゃんと受け止め、みんなに偉い偉いをしてあげた、みんな本当によく頑張ったよ
「私は人として恥ずかしい、こんなにも私を想ってくれている子供たちを、単なる復讐の道具に……」
「……話してもらえませんか、吉良さん、何故ジェネシス計画などどいうものを企てたのか、どこで道を間違ってしまったのか」
刑事さんに促され、父さんは重々しく口を開いて事情を説明し始めた
「……グランの言う通り、私にはヒロトと名前という双子の子供がいた」
静かに話し出した全ての元凶に、その場の全員が黙り込んで父さんの言葉に耳を傾けた
父さんの実の子であった吉良ヒロトと吉良名前は、とてもサッカーの好きな子で夢はプロの選手になること
ふたりはいつでも一緒でサッカー留学をした海外の地で、謎の死を遂げてしまった、
当然真相の解明を求めた父さんが知った事実はあまりに凄惨なもので、事件に政府要人の息子が関わっていたらしく、そのまま二人は事故死として処理されたというもの
自分の子供に何もしてあげられなかった悔しさと二人を失った喪失感に、当時生きる気力すらも無くしていたのだという
そんな父さんを見ていられなくなった瞳子姉さんは、親を無くした子供たちの施設、お日さま園を薦めたのだと言う
「初めは娘の頼みと思い作ったお日さま園だったが、子供たちの笑顔に私の心の傷も癒えていったのだ、本当にお前たちには感謝している、お前たちだけが私の生きがいだった、特に名前が施設の前に捨てられていたときは不謹慎ではあるが神に感謝すらした」
「父さん……」
「お前を見た時の衝撃は未だに覚えている、あの子と同じ顔、同じ名前、北海道に引き取られてしまった後に来たヒロトとも実の姉弟だと分かり、神様からの贈り物だと思えた」
「父さん……」
そして五年前の隕石落下、それが全ての始まりであるエイリア石であった
紫色に妖しく輝くエイリア石の分析を始めた父さんたちは、すぐにその恐るべきエナジーに気付いた、人の身体能力を増幅させるという神のようなそのチカラ
それを知った途端に父さんの心の奥底に押し殺していた復讐心が再びふつふつと込み上がってきたのだという
そのことを聞いた姉さんは当然反対したそうで、父さんは復讐だけではあきたらず、世界をこの手で支配することさえも考え始めたのだらしい
「すまない、本当に皆すまなかった、私が愚かだった」
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