流星はここに在る(基山/inzmGO)

 “基山タツヤ”は父さんに拾われて“基山ヒロト”になった。
 “基山ヒロト”は父さんの願いの為に“グラン”という宇宙人になった。
 円堂君たちと出会って“グラン”は消えて“基山ヒロト”が残った。
 “基山ヒロト”は大人になって“吉良ヒロト”になって父さんの事業の手伝いを始めた。

 今の俺は“吉良ヒロト”。

 だけど“吉良ヒロト”は父さんの息子の名前で、俺の本当の名前じゃない。

 本当の僕は誰なんだろうと、時々考える。

 夜中に目が覚めてしまい二度寝しようにも妙に冴えてしまってどうしようかととりあえず上体を起こして、隣で静かに寝息を立てている名前を眺めていたら不意に自分が何者なのかという疑問が湧き上がった。
 神様が僕にこの疑問を思い浮かばせるために目が覚めたのではないかと疑いたくなるくらいに、その事しか考えられなくなっていたのだ。
 そっとベッドから抜け出して、明かりも点けずにリビングのソファーに腰を下ろす。脳内に走馬灯のように二十四年間の思い出が浮かび上がっては消えていく。

 タツヤでもヒロトでもグランでも基山でも吉良でもない今の俺は一体何者なんだろう。そう考えては、無性に泣きたくなる。

「どうしたのヒロト」
「名前……」

 真っ暗なリビングのソファーで静かに涙を零す俺を見つけた名前はまだ眠たそうな眼をこすりながら僕の眼前までやってきてそっと僕の頭を抱え込むように抱きしめた。
 完全に真っ暗になった視界で、柔らかい感触と彼女の匂いだけが俺の五感を支配する。今この世界に僕ら二人しかいないのだと教えてくれているようだった。

「大丈夫だよ」

 泣きやまない子供をあやすみたいな優しい声が耳朶に触れる。鼻の奥がツンと痛くなるのを誤魔化すように彼女の腰に腕を回す。彼女のパジャマが更に濡れてしまうが、彼女はきっと許してくれるだろう。

「あなたは吉良ヒロトで、グランで、基山ヒロトで、基山タツヤよ。全てがあなた」
「……うん」

 名前はいつだってオレの欲しい言葉をくれるんだ。
 優しい手つきで俺の頭を撫でてくれる名前の手が心地よくて、何よりも俺の心を安らげてくれる。

「全てがあるから今の“吉良ヒロト”がここにいるの」
「う゛ん……」
「大丈夫よヒロト。どんなに名前が変わろうと、他人から与えられた役割が変わろうと、あなたがどう感じようとあなたはあなたでしかいられない」
「うっ……うぅ……」
「大好きよ、ヒロト」
「……ありがとう」

 首筋に宛てられた彼女の手は温かく、さっきまでは一睡も出来そうになかったのに今はもう眠気がすぐそこまでやってきていた。名前という存在はいつだってはオレをこの世界に留めてくれる。



  
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