【瞳子妹が農大に通う】(ヒロト/長谷川贔屓/もやしもん×inzm)
※書きたいシーンだけ書いて満足してしまったためここで供養、文章以下の書き溜め集です
※発酵や製造などに関する長い説明はほとんど省きますので気になる方はもやしもんの単行本を読んで下さい
吉良名前
農業経済学部二年で吉良星二郎の実子かつ瞳子の妹、ヒロトの二つ年上で彼が養子縁組みをしたため義姉となる
小さい頃にパーティーで長谷川と出会った以来彼女を親愛し、今は同じマンションの隣に一人暮らしをしている
樹教授とも長谷川家主催のパーティーで知り合う
最初は長谷川を追いかける形で農大に入学したが現在は自分のために勉学に励んでいる
将来は農業関係の事業をしたいと考えている
日本酒大好き
瞳子妹が農大に通う01
・沢木が菌が見えなくなった時
「ねえ名前、あたし何か間違ったこと言った?」
「うーん、不正解じゃないけど決して正解とも言えないって感じかな」
「それってどういうこと?」
「遥さんは人が人を評価するのはその人の能力だって言ったけど……じゃあ遥さん、私を評価してしてよ」
「……あんたは成績優秀で研究熱心、経営術にも長けている、好奇心旺盛でたまに突拍子のないことをしでかしては失敗するけど成功することの方が多い、あと誰よりもあたしのことを理解してくれているし、どんなことがあっても負けない強い子、少し引っ込み思案な所も可愛いし容姿も……!」
私の評価を口にしていて気付いたみたいだ、やっぱり遥さんは聡明だ、そして遥さんにそんな誉められたら照れちゃうね
人が人を評価するのはその人の能力だけじゃない、もちろん秀でた能力を持っている人はそれも評価の対象となるが結局はその人の人間性を評価する事になるのだ
例えば、どんなに物覚えの悪い人でも一生懸命覚えようと努力していれば評価される、これは日本が結果主義ではなく過程も見てくれる国だから、もちろん結果も大事だが
能力が無い人でも人間性がしっかりしていれば評価されるし、その逆で、どんなに秀でた能力があろうと人間性が最悪だったらその人の評価も下がるわけだ
小学校で貰う通信簿だってそう、能力が成績として評価されているが同じように協調性があるか授業態度はどうとか、素行の評価もされている
最近は絶対評価が主流となっているのでテストでの成績だけではなく授業態度などを加味した評価となっている、だからテストの結果が悪かろうとしっかり授業を受けていれば評価は上がるのだ
ご丁寧に最後は先生の言葉でこの子は積極性がいまいちなのでもう少し自信を持ちましょうなんてことまで書いてくれる
沢木くんの能力は全人類を探し回ってもいるかいないかってほど貴重なもの、だけどそれを失ったからといって沢木くんの評価がゼロになったわけではない
美里くんや川浜くんは能力はおまけだと言った、これは彼らが沢木くんの人間性を評価しているということ、いい先輩を持ったね
遥さんは沢木くんと接している時間が短くて能力しか知らない段階、彼の人間性を知るにはまだまだ時間がかかると思う
つまり何を言いたいのかと言いますと、沢木くんを評価するには時期尚早であるということを私は言いたいのだ
まあ遥さんの育ってきた環境があれだからそういう評価方法になってしまうのは仕方ないかもしれない、私は遥さんにとって特別だから例外ってことで
遥さんが私の評価をしたときに良いことばかり言ってくれたのは遥さんが良い人で、人の良い部分を探す能力が長けているから
「そんな遥さんならきっと沢木くんの良い部分をいっぱい見つけられるよ!」
「……仲直りってどうやってするの?」
「仲直りかぁ……」
私の場合というか私たち兄妹の場合喧嘩とかしたら、自分が悪かったと思った方から抱きついて謝ってたっけか、この方法だと相手に顔見られなくて済むから謝罪の言葉も出やすいんだよね
それを聞いた遙さんは意を決して、沢木くんと仲直りするようだ。
だけどこの方法ってして親しい人じゃないと意味ないよね、面白いから言わないけど
でも沢木くんって童貞っぽいし遥さんに抱きつかれたらびっくりしちゃうかも
瞳子妹が農大に通う02
私の所属している農業経済学部は一年のときは農学部と同じくらい実習が入っていたが二年になると農学部より実習が少ないのだ
その代わりに研究レポートの量が農学部の倍近くあるのでレポートが苦手な生徒はそれだけで夏休みが潰れてしまい仕舞いには単位が落ちてしまう人もいるらしい
以上の情報は同じ学科の一年先輩である亜矢さんに去年教えてもらった
夏休みが実習漬けという事実にうなだれている沢木くんと葉月ちゃん、遥さんは泡盛の二百年古酒の真相を知るべく先生と共に沖縄に行くそうだ
沢木くんたちは実習先が同じ沖縄であることを知り一転、歓喜し抱き合う後輩二人が微笑ましくてにこにこしていたら葉月ちゃんが私と葵ちゃんを見た
「名前さんたちも行くんですよね? 沖縄」
「え、ああ、私は実家に帰るから行かないよ」
「私も発酵蔵の管理があるから無理」
「えーっ」
葉月ちゃんだけではなく沢木くんや先生も意外とでも言いたげな声をあげる 遥さんも私が当然行くと思っていたのか驚いた顔をしていた
生憎今年の夏休みはお日さま園で過ごすことが決まっているので、例え樹先生と遥さんの誘いでも今回はパスだ
月に数えるくらいしか実家にも帰っていないからお姉ちゃんやヒロトに会いたいし、お兄ちゃんのお墓参りにも行きたい
「それじゃあ遥さんに先生、お土産期待してますね、一年たちは実習頑張れ!」
私の長い夏休みが始まった
「さあ名前、やりましょうか」
「はい!」
久しぶりに私とお姉ちゃんがお日さま園に揃った時は定期報告会を執り行う決まりになっている
吉良財閥の後ろ盾があるとは言え児童養護保育施設として、支出は最低限に抑えるのがお日さま園の経営理念であり義務である
そのため月に数回施設の現責任者であるお姉ちゃんと、立会人兼副責任者の私が揃った際に出納帳のチェックをするのが恒例となっている
浮いたお金は子供たちのために衣服や教材費などに変わっている
それとは別に園の子たちの進路相談と進路報告も兼ねているので一日では終わらないのだ、私に纏まった休みがあるとチャンスと言わんばかりにこの報告会は開かれる
今年はヒロト達高校三年組と中学三年組の進路相談の日、学校で行われる三者面談ではお姉ちゃんと私が保護者として担任と話をしているので進路相談はスムーズにことが進む
ヒロトは正式に養子縁組みをし今は私の義弟だ、将来はお父さんの持っている会社の内の一つを任せられることになっているので猛勉強の末、現在は国立大学への進学を目指している
一つ上の治はサッカーの特待で体育大学へ、玲奈は看護学校へ進学希望など、なるべく普通の子供たちと同じよう希望の進路に進ませてあげたい
親のいない子たちにも、親がいる子供たちと同じように教育を受けさせてあげたい、そして何より愛情を与えてあげたいという父さんの思いを大切にしている
瞳子妹が農大に通う03
・フランス編
遥さんたちと飲もうと思ってとっておいたお酒を家に忘れたのでマンションまで取りに戻ったのだが、何かがおかしい
私の隣の部屋は遥さんが住んでいるのは周知のこと
何か嫌な予感がして目的の瓶を持って大急ぎで学校に戻った、こういう時の嫌な予感って当たってしまうのが悔しい
「ああ、吉良さんのとこの……、今まで遥の我が儘に付き合わせてすまなかったね」
「? あっ、遥さ……」
何を今さらと思ったが半分だけ開いたウィンドウから見えた遥さんはいつもと違って元気が無かった
本当に僅かな変化なのだけど小さい頃から遥さんを見てきた私だから分かる変化、不満と残念と申し訳ないという思いが混ざった複雑な顔
遥さんがそっぽを向いたままウィンドウが閉められ車は行ってしまった
「名前ちゃん?」
葵さんに声をかけられるまでその場を動けなかった
「フランスで挙式……!?」
結婚式を挙げるときはお互い招待し合うって約束したのに、確かに私からした一方的な約束だったけど
遥さんは例え私から一方的にした約束であっても、私とした約束はどんなことがあっても守ってくれた、嫌そうな顔をしながらでも必ず最後には仕方ないわねって笑ってくれていた
急遽に決まったことでも私にメールの一つもくれないのはおかしい、
葵さんの言っていた通り遥さんが笑っていないのなら
「……遥さんは無理やり連れて行かれたんだ、助けに行かなきゃ」
「ちょお吉良、お前何言うてんの!?」
「遥さんが自分から退学届けを渡して、自分からフランスへ行くって、結婚式を挙げるって言ったのなら、私、だって……!」
「遥さんの意志と関係なく連れて行ったのなら例え実の親でも誘拐と変わらない」
言葉と一緒に涙まで出てきてまともに喋れなくなっていく、本当に私は遥さんがいないとダメダメだ
「うんうん、じゃあ吉良くんも行っておいで」
「先生……!」
「というよりもう先に行ってると思ってチケットは三枚しかないんだよね」
「私なら大丈夫です、同じ便のファースト取ります」
「ブルジョアめ!」
「俺らもファーストに乗せろ!」
「貴方たちは先生がチケット用意してくれてるでしょ!」
「ああそうだ、吉良くん」
「先生まだ何か……?」
「ついでにワインとチーズ買ってきてくれない?」
「……はいっ、最高の逸品を買ってきます」
「何でフィディオがいるのよー!」
「たまたま、偶然だよ、でも名前に会えるなんて、僕たち運命の赤い糸で結ばれてるね」
ぽんぽんと女を口説く言葉が出てくるあたり流石イタリア男としか言いようがない
「イタリアの白い流星じゃねえか、お前らどういう関係なんだよ!?」
「弟の知り合いだよ」
「名前行くわよ」
「はいっ!」
私も遥さんを追いかけて部屋を出ていこうとした刹那、自称遥さんの婚約者が舌打ちするのが聞こえた
「遥……、ふざけんな舐めやがって、誰のためにやっていると思ってるんだ」
「っ!」
その言葉に私の理性はぷっつんした
「舐め腐ってんのはアンタの方よ」
思わずテーブルの上のグラスを手に取り中のワインをぶっかけてしまった、だが後悔はしていない、むしろスッキリした
「人生で大切な人を失うのはもううんざりよ」
「名前……」
「ううっ、私も遥さんと一緒に逃避行したいよう……」
「仕方ないやんか、お前は目立ちすぎる」
「だから吉良は囮役をして、しばらくしたらマリーんとこに行ってくれ」
「名前、ごめんね」
遥さんに言われたら頷くしかないじゃない、まあ遥さんのことを考えるなら私が囮役になるのが適任なのは頷ける
この後フィディオか誰かと囮をする予定だった(はず)
瞳子妹が農大に通う04
・夢主の好きな人編
「ねえ名前ちゃん、長谷川さんの噂って本当なの?」
「名前ちゃんって長谷川さんといつも一緒にいるから何か分かると思って……」
「ああ、あの噂うそっぱちだよ……だって遥さんは私と付き合ってるから」
「名前さんが言うと洒落になんないですよ!」
「あ、沢木くん」
実際のところ私は誰が好きなんだろうかわからない、初恋はお兄ちゃんで本気で好きだった
お姉ちゃんはギリギリ家族愛だと思う、きっとお兄ちゃんがいなかったらお姉ちゃんが初恋だったかもしれない
それから遥さんは本気で好き、恋愛かはまだよく分からないけど常に一緒にいたいくらい好き
あとはヒロト、義弟になる前から懐いてくれてたから好きだし
うーん、考えれば考えるほど分からなくなってしまう
『そこの少年よー』
「? 吉良さんの皮膚の菌か?」
『オレら名前の肌守ってんだけどよー、いつも完璧に整ってんのに最近荒れまくってんの』
『名前って案外悩みやすいからさ、少年がちょろっと相談にでも乗ってやってよー』
『聞いてやるだけでもいいからさー』
相談に乗ってやってくれって言われても吉良さんが俺に悩みを打ち明けてくれるか分からない
「……ヒロト、一緒にお風呂入ろっか」
「ええっ!?」
・自分は誰が好きなのか分からなくなり、それを確かめるためにヒロトと風呂に入ろうとする暴挙に出る
・本来ならば落ち決めアンケートを取ってここらへんでお相手を決める予定だった
瞳子妹が農大に通う05
・日本酒造り
「豆の監督補佐って言いたいところだけど、人数が偏っちゃうから私は米で」
まあ先生が言い出さなくても私が精米機を借りるつもりだったから良いのだけど
「分担して夜も見ないと」
「あ、私レポートしなきゃいけないんで無理です」
「はああぁあぁっ!?」
「何でや!」
「ほら、農業経済学部は農学部と違ってレポート多いからさ」
ちゃんと樹先生には言ってあるから大丈夫だよ、と満面の笑みを向ける
・オクトーバーフェス編
「私の知り合いのビール蔵もあるじゃん、ここらへんは私が担当するよー」
「じゃその辺は頼むわ」
「遥さん鞭やって、私が愛嬌振りまくからさ」
「うーん、自給率云々言うのも良いことではあるんじゃないかな、それに対して食の意識を変える人は少なからずいると思うし」
「足なっげーっ、小坂!」
「今時だ! 今時の子だー!」
「何なのっ、ちょっと名前助けてー!」
「あははっ、諦めたら楽になれるよ!」
「小坂は真面目でいい生徒です」
「そうだね」
「実のところ吉良もウチに欲しくて入学当初から目を付けていたのですが、真っ先に樹先生の所へ行きましたね」
「正確には長谷川くんの所だけどね」
立花先生がそんな風に私を見ていたなんて、確かに入学当初からやたら私に話しかけてきていた
「ストーブ……名前は知ってた?」
「うん、一応」
財閥の娘とはいえ父親はそれなりに庶民的な感覚もあったし、そこまで世間知らずではない
お日さま園にもストーブはあった
「みんなと出会って遥さんは変わった、もちろん良い意味でね」
私は一緒の籠に入ってあげることしか出来なかったけど、みんなは遥さんの籠をこじ開けて自由にしてくれている
遥さんは自由に羽ばたいて、私は独り籠に取り残される
「寂しい?」
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、遥さんにとってはこれが一番なのよ」
隣に座っているヒロトの肩に頭を乗せる、この温かさが心地よくて安心する
「あれ、何で泣いてんだろ、訳わかんないや……」
「姉さん……」
気付けばヒロトに抱き締められていた
「ちょっと、ヒロト……?」
「大丈夫、姉さん……名前には俺がいるよ」
「……ありがとう」
瞳子妹が農大に通う06
・ミス農大落とし編
ネタバレとしては、ミス農大落としに名前さんをエントリーさせるため出場枠を原作では五人のところ、六人までとさせて頂きます
でも結果は原作と変わりませんゆえ、何とぞ!
遥さんはクリスマスとカウントダウンパーティーで年の瀬は日本にいないから、私はお姉ちゃんやお日さま園のみんなと年の瀬を過ごすことになっている
今はそのクリスマスパーティーの準備で大忙し、本番は明日なのだけれど飾り付けは園の子たちが率先し料理等はお姉ちゃんやお手伝いさんたち、高校生は何組かに別れてそれぞれを手伝う形となっている
私の役割は中学生までの子たちに配るプレゼントを買うため、ヒロトたちを引き連れ大型ショッピングセンターに来ていた
園の子たちにはクリスマスの翌朝までバレないようにするため、購入したプレゼントはとりあえず私のマンションに保管するのが去年からの恒例だ
私が遥さんの隣の部屋を買うまでプレゼントは実家に置いていたのだけど、私のマンションは園から近いので今までより取りに行ったりするのが楽になったのだ
「名前姉さん、ここではあと何買うの?」
「ここはもう終わり、次は隣の店で子供服ね」
「了解」
私が支払いをするため必然的にヒロトたちが荷物持ちとなる、
まあ隠し場所が近くなり運搬作業が楽になったと言えどプレゼントの量が量なので何度か家に運ばねばならないのだ
この前アメリカへ行った時に樹先生から言われていて、冬休み前に提出しようと思っていたレポートが置かれていた
なるべく早く出してねと言われていたのを思い出して、慌てて家を出る
「ミス農大落とし?……下らない」
「吉良さん、俺らの推薦状受け取ってください!」
「えっと……じゃあ少しだけ」
なんやかんやで農業経済学部の学生殆どから票を貰ってしまった訳だが、ミス農大おとしに参加するつもりはない
「はあ、ミス農大落としにエントリー? 葵ちゃんは? 宣戦布告したって何が、話が見えないんだけど、ちょっと!」
「どうしたの? 名前姉さん」
「大学の変な祭りに巻き込まれた」
「?」
「名前先輩!」
「円?」
円は高校の時に一番懐いてくれていた可愛い後輩だ、話を聞けば私を追いかけてこの大学を受験しようと思っており春休みから大学生協でバイト中なのだとか
そうと知っていれば毎日生協行ってたのに
「小坂さんのお父さまお母さま、キャサリン号は畜産の牛の名前でありあなた方の娘、小坂伽沙凜さんとは関係ありませんのでご安心下さい!」
「ちょっと、名前!?」
「……伽沙凜、両親のためとは言え自分を偽るのはもう止めよう、貴女はどこにいても何をやっていても小坂伽沙凜なのよ、誰も貴女には成れないし貴女は他の誰にも成れない、私の大切な親友なの」
「!」
「胸を張っていいの!」
「名前……」
・円のお家事情編
「親が過ちを犯そうとしているとき、子供にはそれを止める権利も、義務もあるの」
かつてお姉ちゃんがそうしたように、円も父親の過ちを正してあげることは悪いことじゃない
「だから円のしていることは正しいと、私は思うよ」
「せん、ぱい……!」
大人っぽいと言われているが本当の円はただの子供なんだ、弱い自分を見せまいと虚勢を張る子供と一緒
だから私は円が安心して弱音を吐ける場所となる、あの子を受け止めてあげれる人間になりたい
瞳子妹が農大に通う07
▽番外編
・番外編は長谷川との出会い、兄ヒロトの葬式、エイリア編などを書く予定だった
・遙との出会い
小さい頃の私は引っ込み思案でいつもお兄ちゃんとお姉ちゃんにくっついていた、父が関係する社交場では特に家族以外の人と接するのを嫌った
最初は三人で父に連れられ色んな人に挨拶をして回る、それが終わったら父は世間話をして私たち三兄姉妹はパーティーが終わるまでご飯を食べたりお話をしたり
お兄ちゃんの持っている話題はサッカーの話ばっかりだったけど、あまりにもお兄ちゃんが楽しそうに話すからいつも楽しかった
お姉ちゃんはお洒落とか料理とか私の知らない話題をたくさん持っていて、さらにはお姉ちゃんもサッカーが好きで戦略とかそういう話をコーチング技術など様々な知識と
私にはそれらのどれもが魅力的で、毎日のように聞いている話題も場所が違えばそれだけて新鮮に聞こえる
「えっと、食べないの? ですか?」
あたしより幼いその女の子は慣れていないのか覚束ない敬語で話しかけてきた
「敬語使わなくてもいいよ」
「うん、私吉良名前って名前なの、あなたは?」
「長谷川遥」
「遥ちゃん、ご飯食べないの?」
「いらないの、美味しくないから」
名前と話すのすら億劫になってきたので素っ気ない返事になったが、名前はそんなの気にもとめず言葉を返してくる
「きっと一人で食べてるからだよっ、一緒に食べよ!」
「!」
満面の笑みを浮かべた名前に、あたしはいつの間にか絆されてしまっていた
そして名前に促されるままに料理を口に運ぶ
「ね、美味しいでしょ?」
「……うん、美味しい」
生まれて初めてご飯が美味しいと思えた
私しかいなかった篭の中に名前というまぶしい鳥が入ってきた
・兄の事件後の長谷川家ホームパーティ
父親がパーティーを開くときは必ず名前の父親も招待していたので必然的に名前とも会えた、だけどその日のパーティーは名前だけではなく名前の一家全員がいなかった
父親に聞いても都合が悪かっただけだの一点張りですぐに誰かと会話をし始め、あたしはまた独りきりだった
名前がいないとやっぱり料理も美味しく感じないしつまらない、二羽だった篭の鳥も一羽じゃほんとに篭の鳥
そんなときに樹先生と出会って、どうして食べないの、とあのときの名前と同じ言葉で、興味を惹かれた
・エイリア編で遙に悩み相談する夢主
「遥さん、私どうすればいいんだろう……」
「あんたが間違ったことをしたらあたしがほっぺた叩いて更生させてあげるから、安心して自分の思った道を進みなさい」
「ありがとう、遥さん」
あたしには出来ないけど名前にはそれができるんだから、あんたのやりたいようにやってみればいいの
・大学入学当初編、小坂との出会い
腫れ物に触るかのようにみんな私に対してエイリア学園のことを聞かない、私に気を使っているつもりなのかそれが鬱陶しい
いっそのことお前の父ちゃん犯罪者って言われたほうが気が楽だわ、いやでもあんまり堂々と言われたら傷付く
「ねえ貴女、エイリア学園の事件って知ってるわよね?」
「……うん」
ショートカットのボーイッシュな女の子は堂々と話しかけてきた
「貴女のお兄さんのこととかダーク何たらを指揮していた人とかそういうの含めても、一概に貴女の父親が全部悪いとも言えない、けど」
我が家の家庭事情はテレビのしかも生放送で流されてしまったので、お兄ちゃんのこととかお日さま園のこととか剣崎のこととか全てが公になっている
「貴女のお父さんは自分の非を認め十分に反省しているから、貴女が思い悩むことなんてないわ、もっと胸を張っていいのよ!」
「えっ……?」
「あたしは小坂」
「? 下の名前は……?」
「絶対に笑わないでよ?」
「笑わないって、もし笑ったら名誉毀損で訴えてもいいよ」
「小坂、伽沙凛」
「きゃさりん? 良い名前だね、どこが変なの?」
「貴女って意外と男前ね」
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