【FA→AOT】(ライナー/FA→AOT)

※進撃アニメ1期くらいの時期に書いたものです

ハガレン→進撃00

 ナマエ・名字少将。爆轟の二つ名を持つ国家錬金術師、純血日本人。
 過去に人体錬成をした際に左腕の二の腕から先までを持って行かれ現在は機械鎧を使用。そのため左肩が若干下がっている。

 原子を振動させ物質の温度調節や大気中にある酸素などの濃度調節を得意とする。水蒸気爆発、水素爆発などの爆発系はお手の物。後は博識故に大体のことが出来るチート錬金術師。
 イシュヴァール殲滅戦にも参加。


ハガレン→進撃01

 ウォール・マリア内シガンシナ区にある修理屋といえば少しは有名な店だ。
 若い女一人で切り盛りしていることも理由の一つではあるが、何より修理屋としての技術は内地からわざわざ修理を頼む人がいるくらいだ。

「ご依頼されていた品です。ご確認下さい」
「……おお、素晴らしい! 買ったときより綺麗に直ってるよ、ありがとう」

 ガラス細工のオルゴールの修理依頼を持ち込んだ男性は元通り綺麗な状態に戻ったオルゴールを見て、その出来の良さに感動していた。
 一度分解して再構築しているため復元とも修復とも言い難いが、そんなことを説明しても無駄だろう。彼らはこの店に、そんな能書きを求めているのではない。
 代金代わりに大量の野菜を頂く。金銭よりも物資の方が買いに行く手間が省けて私的には有り難い。
 客を見送り店の奥へと野菜を運ぶと、早速調理に取りかかった。と言っても鍋に材料を入れて錬成するだけの簡単な作業だ。
 仕事や研究に関しては熱心だが身の回りのことにはズボラかつすぐ楽をしようとする傾向にある、なんて上司に言われたのを思い出した。全く持ってその通りである。
 しかし一々調理するより生ゴミ排出量も減りエコノミーだと考えられる。出来上がったシチューの味見をしながら余った野菜を固形食料や缶詰め、金平糖といった非常食の類に錬成して持ち運びやすく、いつでもここを出ていけるようしておくのを忘れない。

 この世界へ来てからも錬金術師としての本分は忘れていない。錬金術という言葉も技術も関連書物も一切存在しない世界で、錬金術の研究を怠ってはいない。この世界の仕組みを学びそこから錬金術に利用出来るものは利用していく。
 前の世界での研究成果は全て頭の中に入っている。幸いなことに英語も母国語である日本語もこの世界には存在していないので暗号化する必要なく研究書を作成できた。日記帳のようなものが三冊、この世界での研究成果だ。
 シチューを食べつつ今後のことを考える。そろそろ別の区へ移住するべきだ、いつまでもここにはいられない。それは錬金術という外法を守るため、この世界の秩序を乱さぬため。

 シチューを食べ終えた頃、外が妙に騒がしい事に気が付いた。どうしたのだろうかと、外を確認するかどうか決めかねているとドアを叩かれ、返事もしないうちに何者かに開けられた。
 それは物取りや店を訪ねてきた客でもない、言わずもがな緊急事態だ。

「巨人だ! 巨人が壁を破壊したんだ! あんたも早く逃げろ!」
「! わかりました」

 その人は用件だけを伝えると走って行ってしまった。私はあるだけの金銭と食料、研究書を鞄に入れトロスト区へ移住する決意をした。
 この騒ぎはトロスト区まで伝わっているだろうから騒ぎに乗じれば潜入もとい移住は簡単に出来るだろう。なに、守りを強くしたところで錬金術を使えば簡単に入れる。
 準備と装備を整え外へ出れば破壊された外壁と、その穴から侵入してきた巨人たちが目に入る。中でも、外壁の高さを軽く超える身長を持つ巨人に目を奪われた。

「!……あれが、巨人」

 その時初めて、巨人と呼ばれる生物を見たのだが、恐怖の類は生まれなかった。それどころか彼らに対する知的好奇心が沸いた。ただ純粋に、知りたいと思った。
 彼らは手当たり次第に人間を掴み上げ口へと放り込み咀嚼している。かつて対峙したことがある、暴食の名を与えられたホムンクルスの食事風景によく似ていた。

 付近に人間の目がないことを確認し手を合わせれば、家はものの数秒足らずで瓦礫へと変わる。誰がどうみても巨人に壊された家屋。私がここにいた痕跡を消せれば十分だ。
 その場から離れようとしたまさにその時、巨人がすぐそこまで迫っていた。私は少将の地位を与えられた軍人だ、例えあの頃より多少勘が鈍っていようと油断などは決してしていない。
 ただ彼らの一人が私に気付いて近づいてきたのだ。後に鎧の巨人と呼ばれる彼は人より何十倍も大きい歩幅で私との距離を縮めてゆく。
 これは逃げ切れない、そう判断して足を止める。しかし諦めた訳ではない。案の定私は鎧の巨人に捕まったが恐怖はない。
 これが巨人、人類が憎むべき敵だと定めている生き物。私が見詰めると、彼が一瞬戸惑うように動きを止めた。
 それも束の間に、鎧のように硬い筋肉質な手が私を掴む力を強める。

「っ、……貴方に恨みはないけど、ごめんなさいね」

 唯一自由に動かせた右手で指を鳴らす。ぱちん、乾いた音と共にすさまじい爆発が起き、私を掴んでいた手が緩んだ。その隙に手から抜け出る。
 鎧の巨人の顔付近に、瞬時に水素を錬成し指ぱっちんで静電気を発生させることにより簡単に大きな爆発を起こすことができる。これは雨の日でも有能な水素爆発だ。
 ちらりと背後を見やれば鎧の巨人の顔が私の起こした水素爆発により赤黒く焼けただれていた。すぐに回復するとは言え、多少なりとも罪悪感を感じるのは私が彼ら巨人に何の恨みも辛みもないからだろう。
 私は物陰に隠れるように走りながら、シガンシナ区を後にした。


ハガレン→進撃02

 教官は私と目を合わせるなり目を見開いた。ほんの一瞬の事だったから向こうは気付かれてないと思っているだろうが、私の方は見逃さなかった。
 まあ、見逃さなかったところで何もないのだが、教官はそのまま私から目を逸らし何事もなかったように次の者を怒鳴りつけていた。

 年端もいかぬ子供たちが兵士になろうとしている現実に軍人として溜め息を吐きたかった。かく言う私も士官学校へ入ったのは彼らくらいの時だったので強くは言えないが。
 それにしても堂々と芋を食べている子には呆れてしまった。時と場所を考えなさいと説教したい気分だ。まあ、士官学校に通いながらも女性とのデートを欠かさない男もいたが。


 初日の訓練は終了し皆一様に私服に着替え食堂に集まっていた。私の服装は白いワイシャツに、薄茶のスラックス、それと手袋。
 私個人としては、初日にしてはこんなものかと思っていたのだが他の人たちはそうではなかったようだ。
 それなりに厳しいものであったらしく、その厳しさに心が折れ自ら開拓地へと向かう者もいた。自分の体力の有り余りように呆れてしまった。
 パンとスープを受け取り適当な席へと腰を下ろし、薄味のスープを胃に収めつつ周りを見渡す。
 シガンシナ区で巨人を見たという男の子が質問責めにあっているが、私には関係ないので食事に視線を戻した。

「……!」
「?」

 がっちりとした体格をした男の子が私の正面に座り、私を見るなり驚いたような表情を見せる。教官といいこの子といい、私の顔はそんなに驚きで満ちているのか。
 確かに純血な日本人もとい東洋人はこの世界では貴重らしいが、先ほど巨人の話をしていた子と一緒にいたマフラーの女の子だって東洋人っぽい顔をしているじゃないか。

「すまない、見過ぎていたな」
「……いえ、私の方こそ初対面の相手にするような顔じゃなかったわ」

 思っていたことが顔に出ていたのか目の前の彼が目を逸らした。そんなに不機嫌な表情をしていたのだろうか。

「俺はライナー・ブラウン。ウォール・マリア南東の、山奥出身だ」
「ナマエ・名字よ。トロスト区から来たわ」

 改めてライナーの顔を見ると既視感を感じた、が彼とは初対面のはず。それとも私が忘れているだけで訓練中に見かけたのかもしれない。
 彼は私の口からでたトロスト区という言葉に、そうか、と少し安堵した様子だった。自分から出身地域を話したのも私の出身地区を聞き出すためだと理解できたので敢えてシガンシナの名は口にしない。
 私を見て驚いたのも、トロスト区と聞いて安堵したのも、私の感じた既視感と関係があるのだろう。けれど、今はまだ聞かないことにした。いずれ分かることだ。


 パンを半分ほど残し食事を済ませる。残したパンを持って食堂を出れば洗礼中に芋を摘み食いしていた芋女ことサシャ・ブラウスが未だに走っている。
 死ぬまで走れと言われるより飯抜きと言われた方が辛そうだった、なんて会話を耳にしながら彼女が走り終えるのを待つ。


 私が残していた分のパンも彼女に渡す。

「あなたも神様ですか!?」
「……私は神様じゃないよ」

 人は神には成れない、それが世の常、世の理なのだ。なんて皮肉を心の中で呟きながらサシャがパンをかき込む姿を眺めた。

「お前ら良いことしようとしてるだろ?」

「私がしているのは人助けや偽善なんてそんな綺麗なものじゃないわ」


ハガレン→進撃03

「ナマエ・名字。体力・知力、その他全てにおいて優秀、そのためどの訓練も成績は常にトップだがそれを鼻にかける事もなく、仲間からの信頼も厚い。しかし未だに謎の多い存在だ」



 日本特有の合気道と柔道の技を使いならず者役を軽くいなす。

「ナマエ! 今の技は何なんだ!?」
「合気道、って言うの」
「あいきどう?」
「相手の勢いを殺さず、逆に利用してやるの」

 右手を前に出し指先のみを手前に動かし、掛かってくるよう指示する。
 それに従い木剣を握ったライナーが真っ直ぐ向かって来たので木剣を持っている右手を避け、そのままその手を掴んで引いてやれば相手は体勢を崩す。

「こうすれば最小限の力だけで相手を倒すことが出来るわ。だからクリスタみたいに小柄な子でもライナーみたいな巨体を倒すことは可能よ」


ハガレン→進撃04

「内地は快適よ、でも内地に居てはこの世界を知ることは出来ない。だから私は調査兵団でこの世界を見定めるの」
「世界を見定める……」


「死ぬために戦うのではなく、生きるために戦うの。調査兵団の人たち全員、誰一人として無駄死ぬことは考えてないと思うわ」


「もし、死ぬんだとすれば、それは誰かのため。人類とかそんな不特定多数のためじゃなく、家族や恋人や友人、大切な誰かを守るために、彼らは命を懸けて戦うのよ」


「私たちに出来ることは、仲間の死から目を背けるのではなく、彼らの最期を、彼らとの思い出を、忘れないでいること。人に忘れられた時に、本当の意味で死ぬの」

 言っていて、自分の頬が濡れていることに気づいた。私の話を聴いていた何人かが涙を流していた。彼らも大切な人を思い出しているのだろう。
 私は、軍法会議所勤めだった友人を思い出していた。愛妻家で愛娘が生まれたばかりの、絵に描いた順風満帆だったというのに、彼は殺された。
 彼と私ともう一人、私の上司を加えた三人は士官学校からの付き合いで、互いの理想を語り合った仲だったから、彼の訃報は信じがたかった。
 何かの悪い冗談だったらどんなに良かったことか。だが現実は現実だ。

「変な話してごめんなさいね」


ハガレン→進撃05

 右の手の甲には錬成陣、これはまあいい。問題は左腕の機械鎧。
 これを見られるとまずいので風呂に入るのはいつも最後に、一人で入っていた。掃除当番の子には悪いが入浴時間はちゃんと守っているので問題はないだろう。
 普通ならば大人数が入った後の湯船に浸かるのは憚られるが私には錬金術がある。手を合わせて湯船の中の不純物を取り除けばいつでも綺麗な風呂に入れるという訳だ。
 今日もまた一人でゆっくりと湯船に浸かっていた。機械鎧は防水化工が施されている物を使用しているが、一応湯に付けぬよう気を付け、濡らしたタオルで機械鎧の汚れを拭いていた時だった。

 がらり。風呂場の扉の開く音がして、近づく気配に気づけなかったとか、機械鎧を隠し忘れたとか、そういうのよりも入ってきた子の腹に目が行った。

「ミカサすごい、腹筋割れてるのね」
「……ああ。私は筋肉が付きやすい、体質らしい」

 私も長らく軍属だったが腹筋が割れたことは一度もなかったのでちょっと羨ましくある。私と同じく軍属の女性で腹筋が割れている者は少なかったのを覚えている。ミカサの言うとおり、きっと彼女は腹筋がつきやすいタイプなのだろう。
 髪と体を洗い、湯船に浸かったところでミカサは私の腕に目をやり、首を傾げた。それはこの世界に機械鎧、つまりは義肢の概念がないのを意味していた。
 風呂場に入った時確実に見えていたのに何も聞いてこなかったから、てっきり義肢という概念があるのだと思ってしまった。

「これ? 義手、って言って伝わるかわからないけど……」
「……それは腕なの? 機械なの?」
「うーん、機械で出来た腕って言うのが正しいわね」

 とある事情で腕を失い、機械で出来た腕の代わりを付けているのだと説明すればミカサは納得してくれた。
 それから恐る恐る機械鎧に触れ、ゆっくりと撫で始める。時折きゅっきゅと、金属が擦れる音が風呂場に響いた。
 珍しく入浴時間が遅れたのはどうやらエレンの居残り特訓に付き合っていたかららしい。

 いつお偉いさん方に目を付けられ面倒なことになるかわからない為この腕のことは誰にも言わないでほしいと頼めば、ミカサは少しの沈黙の後にゆっくりと頷いた。

「……ナマエが知られたくないのならば、他言しないと誓おう」
「ありがとうミカサ」

 私が笑みを浮かべるとミカサも照れたように微笑み返してくれた。
 そろそろ上がろうかと提案し二人で脱衣所で体を拭いていると、ミカサがじっと私を見ていることに気が付いた。どうしたのか尋ねると彼女は私に、一つだけ質問をしたいと言う。

「ええ、私が答えられる範囲なら何でも聞いて」

 口数は少ないけれど言いたいことはちゃんというミカサが珍しく戸惑いがちに口を開く。

「……ナマエは東洋人、なの?」
「ええ、そうよ。ミカサもそうなの?」
「母親が東洋人で、父親は違う。だから半分だけ、東洋人」

 ということは、ミカサの母親は純血東洋人となる。この世界に来てから東洋人というだけで様々な人間に襲われた経験がある。
 尤も、私には自分の身を守る術を持っていたから、無傷で生きてこれたが、ミカサやその母親はただの一般人だったはずだ。きっと苦労という一言では表わせきれないほど辛い思いもしてきただろう。

「ミカサ」
「なに……?」
「東洋人の血が流れていることを、不快に思わないで欲しいの。こんな世の中では東洋人は辛い思いしかしないだろうけど、私は東洋人として生まれて良かったと思っているし誇りも持っている。だから、身勝手な話かもしれないけど、東洋の血を嫌わないでほしい」
「……私は、東洋人を嫌いになったりしない。母親も、もちろんナマエも」


ハガレン→進撃06

 ここ数日雨が続いたせいか洗濯物が乾かず、私服が底をつき兵団服を着る者も少なくない。女子は余分に持っている者から借りているのが多いようだ。
 ユミルもその内の一人のようで先ほど、満面の笑みを浮かべたクリスタに私服を押し付けられていたのを見た。勿論クリスタの私服はスカートだ、ユミルは全力で拒否していたがどうなったのだろうか。
 かく言う私も、今着ているものを含め残りの衣類は二着しかなく、出来ればもう一着の方は着たくない。
 しかしそんな思いも虚しく、夕食よりも少し早い時間に食堂へと行こうとしていたところで事は起きた。
 夕食当番だったミーナが足早に食堂へと向かっていたのだが不意に、泥に足を滑らせたのだ。私は彼女を庇うよう地面と彼女の間に体を滑らせた。

「きゃっ! ああっ、ナマエありがとう、ってナマエ泥だらけ! あたしのせいでごめんなさい!」
「ミーナ落ち着いて! 怪我はない?」
「あたしは大丈夫だけどナマエが……!」

 当然私は泥だらけになったが彼女が無事ならば問題ない。私も怪我などはしていないから、とりあえず彼女を落ち着かせる。

「私なら大丈夫だから、替えの服もある」
「でも……」
「夕食当番なんでしょ? 早く行った方がいいわ」

 渋るミーナを説得すれば、今日の夕食をこっそりサービスすると言い残し彼女は走っていった。
 錬金術で服を元に戻すのは簡単だが、今着ているものが綺麗さっぱり元通りになっていると怪しまれること間違いなし。
 着たくはないが残りの一着を着よう。女子部屋へと向かえば私服に着替えていたサシャがいて、私の格好を見て目を丸くした。

「ナマエどうしたんですか泥だらけですよ!?」
「サシャ、悪いんだけど私の荷物から服取ってくれない?」
「それくらいお安いご用です!」

 私の鞄を開けて中からお目当ての服を出したところでサシャの動きが止まった。何とも目ざとい子だ、特に食べ物に関しては。
 きらきらとした目で私を見つめるサシャに一粒だけよと一言。嬉々として巾着に入った金平糖を一粒取り出し頬張るサシャに、笑みがこぼれた。
 まあお礼と言うことで、受け取った服を早速着ようと思い、機械鎧を隠すため兵団のマントを羽織り上を脱ぐ。幸い下着までは汚れていなかった。
 恍惚の表情を浮かべるサシャに今着ていた服を洗濯場まで運ぶよう頼めば二つ返事で部屋を飛び出していった。これくらいは頼んでも罰は当たらないだろう。

 残っていた服に着替え、戻ってきたサシャと共に食堂へと向かう。私の格好を見たサシャは案の定首を傾げて変な服ですねと、笑った。
 食堂に入ればまだ夕食の時間ではないもののちらほらと他の訓練兵がいた。当然私たち、否、私は注目を浴びる。
 それもそのはず、私が今着用しているのはただの私服ではなく、アメストリス軍の軍服だ。こちらの世界ではこれ以外存在しないのでこれは私の私服ということになる。
 久しぶりに着た青い軍服は、やはり自分の居場所はそこしかないとでも言いたげに、嫌に着心地が良かった。何とも皮肉なものだ。

「よぉ、妙な服着てると思ったらナマエじゃねぇか。どうしたんだよその服」
「見たことない服だけど、何かナマエ格好良い。似合ってるわ!」
「ありがとうクリスタ。……この服は私がナマエ・名字である証そのものだから、大切なものなの」

 食堂の入り口付近でユミルとクリスタに話しかけられた。ユミルは兵団服を着ていて、内心スカート姿が見れなくて残念に思う。

 この軍服は私がアメストリス軍に属している証跡、国家錬金術師である証の銀時計もしっかりと持っている。私が私であると証明出来る唯一の服と、時計。
 いつか元の世界に帰るかもしれない、その時まで大切に持っておかねばならないのだ。

「へぇ、お前どっかの組織にでもいたのかよ」
「……ええ、そうよ。これでもお偉いさんなの」

 真面目な顔で言う私に対してユミルは一瞬だけ目を見開き、ゆっくりと細める。

「ハッ、冗談ならもっとマシなのにしな」
「分かっちゃった? 信じるかと思ったけど、残念」
「ふん、そう簡単にあたしは騙せねーよ」

 笑い出した私とユミルに、私はちょっと信じちゃったと笑うクリスタ。
 本当は冗談半分で、半分は本気で言っていた。でもユミルは優しいから冗談として受け取ってくれたのだ。

「ナマエ早く食べましょう!」

 サシャに呼ばれて振り返れば、彼女は既に出来上がった夕食を持って席に着いている。勿論私の分も用意してある。

「サシャってば相変わらず早いわね」

 私もサシャの横に腰を下ろし二人で手を合わせる。いただきます、二人で声を合わせて夕食に手を付ける。

「サシャ、三十回以上噛んで食べるのよ」
「んぐっ、わかりまひた」
「すっかり手懐けてるな」

 上から降りてきた言葉に顔を少し上げるとライナーとベルトルトとアニが、同じく食事を持って立っていた。

「隣、いいか?」
「ええ、どうぞ」

 私の返事に対し、ライナーは私の左隣、その正面にベルトルトが座った。アニ私の正面、ベルトルトの左隣に座った。三人とも兵団服は着ていないので衣類の件はどうにかしたのだろう。
 黙々と食事をする中、ふと、ベルトルトから視線を感じ彼を見つめ返すと頬を染め目線を逸らされてしまった。言いたいことがあるなら言えばいいのに。
 何事もなく夕食を食べ終わり食器を片付け、宿舎へ戻った。

「はあ……」
「どうしたんですか? 溜め息ついたら幸せが逃げちゃうってクリスタが言ってましたよー?」
「気にしないで。おやすみ」
「おやすみなさい!」

 軍服で寝るなんて、上司が女性とデートをして期限内に終わらなかった大量の書類を徹夜で手伝ったとき以来。あの書類は佐官以上じゃないと手が付けられなかったから私と大佐の二人だけで丸二日、徹夜で終わらせたのよね。
 期限の確認を怠った私にも非があると思い手伝ったが、今思えば仕事を放って女性と出掛けていた大佐が全面的に悪い。思い出しただけでも腹が立つ。もう寝る。

 翌日は、それまでとは打って変わった晴天に恵まれ訓練中に全ての洗濯物が乾いていた。

「残念、ユミルのスカート姿見たかったのに」
「おまっ、あのやりとり見てたのかよ!?」


ハガレン→進撃07

 サバイバル訓練の最中、左腕が崩れてゆく感覚にいつか義肢装具屋の彼女の言っていた言葉が頭に浮かんだ。やはり機械鎧は専門家に調整してしてもらわないと駄目だ、でないとこうも簡単に外れてしまう。
 一応機械鎧の仕組みについては学んだが素人は素人に変わりなく、私が錬成した機械鎧はオイルの差し忘れが原因により服の袖からバラバラに外れ落ちた。これが兵站訓練だったら大変なことになっていた、サバイバル訓練で良かった。
 それに今日はもうどこかで休むつもりだったので丁度よい、水溜まりに落ちたそれらを右手で拾っていると誰かが後ろから近付いているのが分かった。

「ナマエか? どうしたんだ、そんな所にしゃがみ込んで」
「拾いもの。大切な物を落としてしまったから」

 背後にいたのはライナーだった。この世界にはない機械鎧を見られたら何を言われるか、何を勘ぐられるか分かったものではない。特に彼はなかなかに聡い。
 辺りは暗いが一応念には念を入れ、彼に見えぬよう配慮する。幸い肘間接部分が外れただけだったのでベアリングやボルトなどの細かい部品数点を左手にしていた手袋に入れ、後は腕部分を持つ。
 長いマントのお陰で私の左腕がないことも、その左腕を抱えていることも彼には見えていない。私が立ち上がったのを確認してライナーが再び話しかけてくる。

「大丈夫なのか?」
「ええ、全部拾ったから」

 あとはどこか雨風が凌げる場所を探すだけ。


「なあ、ナマエは巨人にあったことがあるか?」
「……ええ、あるわ」

 彼の真剣な表情に、私も真剣に返答する。


「これから話すことは紛れもない事実だ。驚かないで聞いてほしい」

「その時の巨人は俺なんだ。とある理由があってシガンシナを襲った」


「やっぱり、あの時の巨人はライナーだったのね。ごめんなさいね、あの時痛かったでしょう?」
「いや、気にしないでくれ。あの時は俺も、その、悪かった」


「……怖くは、ないのか? 巨人である俺が、俺たちが……」
「私は巨人に恐怖したこともなければ彼らを憎いと思ったこともないわ。ただ純粋にこの世界について、貴方たち巨人について知りたくなっただけよ」

 私は自分の思ったことを正直に話した。
 人類は彼ら巨人を憎むべき敵だと定めているが私にはそうは思えなかった。巨人が善だと言っているのではなく、悪とはみなしきれないのではないかと言いたいのだ。
 私たちは彼らについて知らなさすぎる。彼らの行動原理、目的、全てが不明。人間が美味しいから食べるのか、それともそうしなければいけない理由があるのか、はたまた周りが食べているから己も食べているだけなのか、何も解明されていない。
 知らなければいけない事だらけだ。

 人が巨人に成れるのならばその質量の差はどこから補っているのか、質量保存の法則で成り立っていた世界で生きていた私にとって巨人化の原理は是が非でも解明したい謎だ。

 この世界にも海が存在するのであれば別の島、元の世界で言う日本のような島国も存在するはず。知りたい、見てみたい、そういった知的探求心が私を動かすのだ。


「貴方の秘密を知ったのだから私の秘密も教えてあげるわね」

 そう言って背後に隠していた機械鎧とそれが取れた左腕を露わにする。刹那、彼が息を飲み大きく開かれた愛で私を見つめた。

「何だそれは……左腕!? まさか、巨人に……?」
「違う違う、これを失ったのはこの世界に来るずっとずっと前」
「この世界……?」

 辺りを静寂が包む。無音ともいえるその一瞬、ライナーの顔に

「そ、私はこの世界の人間じゃないの」


 この世界の人間ではないことと、向こうの世界では軍にいたことを、彼と同じように正直に話した。

「……何故そんな重要なことを俺に言ったんだ」
「言ったでしょう? 貴方の秘密を知ったから、私の秘密も教えてあげるって。それが等価交換」
「等価交換?」
「何かを得るためには同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則」


ハガレン→進撃08

 こちらの世界に来た時、私の体は幼くなっていた。伸ばしていた髪も、私が錬金術に手を出した頃まで短くなっている。
 真理の扉を通るための対価として、私の時間を奪われたのだと理解するのは容易だった。

 本来の身体に合わせて造られた機械鎧は今の私には随分と大きかった。幸い日本にある私行きつけの機械鎧屋と、エルリック兄弟行きつけの義肢装具屋から色々と教わっていたので素材も構造も着脱方法も、手入れの仕方もよく解る。
 片腕が使えないので地面に錬成陣を描きその上に機械鎧の部品を乗せる。
 理解、分解、再構築、錬金術の基本を行い今の私に合うサイズに調整された機械鎧と、不要な金属類を錬成する。余った金属類は成長した時に必要となるので大事に保管しておく必要がある。
 最後に微調整をして神経を繋ぐ、この瞬間だけは悲鳴こそ出ないがいつまで経っても慣れない。
 私の一連の動作を見たらきっと義肢装具屋は邪道だとか、それじゃあ駄目だとか怒るのだろう。特にリゼンブールの義肢装具屋の女の子は、日本の機械鎧屋で造られた特別な金属を用いた軽量だが丈夫なそれをいたく気に入っていたから。
 良いものはちゃんとした所で定期的にメンテナンスしてもらわないと駄目だと、何度か言われたのを覚えている。
 しかしこの世界に義肢装具屋があるなんて聞いたことがないし、そもそも機械鎧自体が存在しないようだ。義肢が存在するのかさえ分からない。

 それからは情報収集を兼ねてシガンシナ区という場所でひっそりと修理屋を営んで食いつないだ。


ハガレン→進撃09

 雪山訓練はその厳しさと過酷さ故に二人一組のペアを組んで行われる。


「ダメよ、もうじき荒れるから今日はこのあたりで少し暖をとりましょう」

 暖をとるのに適当な場所が見つからず、彼女が手を合わせ雪で洞穴のようなものを作り出した。彼女はこれをカマクラと呼んだ。
 見た目に反してカマクラの中はなかなかに暖かかった。俺が集めてきた薪に火をつけるのだって指をパチンと鳴らすだけで簡単に点く。
 レンキンジュツという不思議な術に加えて彼女は天候を読む力でもあるのだろうか。暖を取り始めたら本当に天気が荒れ、外はあっと言う間に吹雪いた。

「吹雪くのがよくわかったな」
「経験則で分かっただけよ」
「それは前の世界での経験か?」
「ええ」

 俺の質問に対して彼女はあっけらかんと答え、笑った。

 この世界にはない術を使っている彼女は明らかに狡いが、憲兵団に入って内地へ行くという目的を持っている俺は、ナマエと組めたのは幸いだ。例え狡い方法でも成績を上げられるのは助かる。
 仮にナマエがレンキンジュツを使えなかったとしても成績も順位も変わらないだろう。彼女には軍属としての経験と知識がある。


「大気中の原子を振動させて気温を上げてるの」
「そ、そうか……」

 生憎、俺には原子だの何だのという化学的な話はさっぱり分からん。きっとアルミンならば会話を成立させることが出来るのだろう。


「見張りは私に任せて、ライナーは寝て」
「えっ、それだとナマエの寝る時間が……」
「知ってるでしょ、私は軍人。一日くらい寝なくても平気よ」
「しかしだな」


ハガレン→進撃10

 ナマエは時々訓練兵とは思えぬ行動をとっていた。己を律し慎重に振る舞う、まるで兵士の鑑のようだ。
 その判断力と決断力から訓練で班長を任されることが多く、いずれの訓練も成績はトップだった。まるで訓練兵とは思えぬ采配に教官たちも一目を置く存在。
 座学もアルミンに引けを取らない成績で技巧術の理解力は断然トップ。
 アルミンの作戦が過去の凡例を用いた理論的なものならば、ナマエの作戦はそれらを応用し実践に基づいた経験論から導き出されたものであると言っていい。
 いくつもの戦いを経験してきた者にのみ導き出せる作戦、一体彼女は何者だと言うんだ。知れば知る程ナマエ・名字という人物が分からなくなってゆく。


 彼女は時たま、僕たちの知らない文字を描いていることがある。僕たち人類が使うような文字に似ているものもあればもっと複雑なもの、子供の落書きみたいなミミズのようなものも、多分文字だろう。




「どうも貴方を見ると別のジャンを思い出すわ」
「別のジャンだぁ?」
「そ、私の古い知り合いのジャンに似てるのよね。成績はギリギリだったらしいけど仕事はきっちりとこなしてて。まあ文句の一つや二つも聞いたけど、仲間からの信頼もあって私も彼を信頼していた。だけど……」
「……だけど、何だよ」
「女性運はとことん無かったわ。どこかの誰かさんと一緒ね!」
「どういう意味だよ!?」

 おっと、危ない危ない。彼が任務中の負傷で下半身不随になってしまったことを喋ってしまうところだった。こんなことを話たら色々と感づかれてしまう。
 何とか誤魔化してその場を流す。


「この国の兵士は楽ね、巨人という明確な敵がいるのだから」

 イシュヴァール殲滅戦の始まりは将軍が罪のないイシュヴァール人を殺してしまっただけ、それを火種に争いは大きくなったのに軍は全く悪びれずに彼らを殲滅するように指示をだした。ここぞとばかりに国家錬金術師の実用実験を兼ねた、戦争という名を借りたただの大量虐殺だ。勿論私も国家錬金術師として駆り出された、あれ程嫌な仕事はない。
 この世界では巨人は悪と見なされ殺すのが当たり前、巨人を殺しても憎まれず非難されない、寧ろ感謝こそされる。当然良心はそこまで痛むことはない良心の呵責云々言っている時点で軍人としては未熟なのだろう。


ハガレン→進撃11

 去年とは違い、今回の雪山訓練は地図は各班一つ、荷物も最低限、コンパスすら持つことが許されない過酷なものだ。例のごとく参加は任意。
 
 当然のごとく私は班長とされ、班員はエレン、サシャ、ベルトルト、マルコの四人。全員が前回の雪山訓練を経験しているため要領は分かっているだろう。
 前回はペアがライナーだったから多少のズルをしたが、今回は違う。班員の誰一人として私の秘密を知らない、この状態を保たねばならない。

「まず、私が班長になったからには全員を生きて目的地まで連れて行く。覚悟してくれ」

 気合いが入りすぎて軍人然とした口調になるが仕方がないだろう。彼らの命を預かる身として失態は許されないのだ。


「エレン。貴方は感情任せに行動するところがある。それが必ずしも悪いという訳ではない。しかし時として仲間を危険に晒すことになり得るのを覚えておいて。雪山訓練の時だけでもいい、いつでも正しい状況判断ができるよう冷静さを残しておくよう心掛けて」
「ああ、わかった」

 私の言葉に頷いたエレンの顔は真剣そのもので、彼ならば大丈夫だろうと確信した。


「ベルトルトは意思表示が少々弱いから、意見があるときはいつでも言ってほしい。みんなの前で言いにくいなら私にだけでもいいから、貴方の考えを教えてほしい。結果、それが間違っていようとも、貴方を責めたりはしない、だれにでも失敗や間違いはあるから」
「……あ、ああ。わかった」


「サシャは食欲任せに行動するのを控えてくれれば言うことはないんだが……無理だろうね」
「無理ですね!」
「まあ、その性格が時に正しい道に進む切っ掛けとなる場合もあるんだけど……とにかく、サシャは無駄に動かないよう、エネルギー温存を心掛けて、いつでも食事にありつける訳じゃないんだからね」
「はい! 努力します」


「マルコはちゃんと意見も言ってくれるし、一人で突っ走ったりしないからそのままで大丈夫だけど、優しくて押しに弱いからサシャに食料を取られそうになってもちゃんと断ること」
「うん」
「寒ければ寒いほどエネルギーが必要になってくるから。みんなも食事の量は厳守よ」


「去年の雪山訓練を経験しているから大丈夫だと思うけど、自分が足手まといになるだとか迷惑を掛けたくないなんて気持ちは露ほども要らない。仲間を信用して、頼りなさい」


「私も人間だ。感情的に動いたり、判断ミスをするかもしれない。私が間違ったことをしようとしたら殴ってでも止めてほしい」


「悪い、足手まといになっちまった……」
「あれは雪の下が空洞になっていたから足を踏み抜いてしまったのであって、決してエレンのせいじゃない。むしろそれに注意がいかなかった私にも落ち度があるわ」

 班長として安全確認を怠った私の責任だ。


「それに言ったでしょう? 全員を生きて目的地まで連れて行くって」
「ああ、そうだったな。ありがとう」


ハガレン→進撃12

「ナマエ・名字はハンジ・ゾエ分隊長の部隊に配属となる。ゾエ分隊長直々の招請だが、断るなら今のうちだぞ」
「断るなんてとんでもない、光栄の至りです」

 この世界を知るにはこの世界を研究している人の下で働くのが一番である。それにおいてはハンジ・ゾエの部隊に配属されるのは僥倖であった。


 卒業の日、一人ずつキース教官から言葉を貰っていく。次は私の番だ。

「ナマエ・名字」
「はい」
「入団式の日、お前の眼は他の者とは違っていた。全てを悟り覚悟した兵士の眼だった」
「お褒めに預かり光栄です」

 そりゃあ当然、私は全てを経験した立派な軍人なのだ。立派な、なんて言葉は使いたくなかったが軍人としてあの上司の下で働けたことは私の誇りだ。
 それと同時にまだ軍人としての眼を、覚悟を忘れていなかったことに安心した。


「分隊長」
「堅苦しいのは苦手だから、ハンジでいいよ」
「では、ハンジさん」
「何?」
「自分の隊に引き入れたのだから最後まで責任を持って下さいね。私、この隊から出て行きたくないですから」
「……いいね、その眼。気に入ったよ。絶対逃がしたくなくなっちゃった」


 ってな具合で軍人夢主が進撃の世界を見て回る原作沿いにしたかったけど途中で飽きた。笑



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