【怪物語】(オール/inzm/物語パロ)

怪物語

(解)

 この話は西尾先生原作の物語シリーズのパロディ夢となりますが、完全なパロディではありません。
 ですから原作に登場していない怪異などを創作し登場させたり、原作には存在していない設定などが多々あります。
 また、物語シリーズのキャラクターは一切登場しませんので期待していた方はすみません。




 この奇妙な物語の主人公は主人公とは到底思えぬ人物で、名脇役のごとく唐突に現れては他人に取りついた怪異を消してどこかへ姿を眩ます。
 誰も彼女のことを知らないが彼女に救われたと言う人間は数多く、その姿は大人だったり幼い子供だったりと実に不思議な女性。これまた奇妙に右手にだけ手袋をしている。
 性格はさっぱりしており、口調はそこらにいるような年頃の娘よりは大人びている、というより品があると言うべきだろう。
 しかしながらその冷静さや何もかもを見透かしたような冷ややかな瞳は我々よりも遥かに先を行く者のようにも感じられる。
 単に精神的に大人であるというだけなのかもしれないが、彼女とかかわった人間は必ずこう言う。

「彼女といると安心できる。不思議な何かを持っている人だった」


(以上、民明出版オカルト雑誌内「怪異に関する考察と、一人の女性の存在について」の記事より抜粋)


▽ネタバレ

 以下、この話に登場する怪異の名前及び簡易的解説を登場順に記載
 激しいネタバレに注意してください



烏→狸→蝸牛→魚→蜂
狼→蟹→狐→蛇→犬


▽時間軸はイナイレ

影烏(くうすけクロウ)半田視点
烏に休まれた少年
 一つのところに留まらずにいた人間が一つ物に執着を見せたとき、頭で羽を休めた白い烏が怪異となって取りつく
 他の物への興味を徐々に断たれていきやがてその一つのもの以外できなくなってしまう
 取りついた人間に気づかれぬよう少しずつ苦しめていく怪異

迷い牛(あつやマイマイ)ヒロイン視点
蝸牛に迷った少年
 所謂蝸牛で、目的地にたどり着くことができず永遠に迷い続ける怪異
 「家に帰りたくない」と思う者の前に現れ、ついてくる者を永遠に迷わせて帰路を阻害する
 しかし、迷い牛から離れれば迷うことはなくなる

眠り狸(はるなラクーン)鬼道視点
狸に化かされた少女
 取りついた人間の睡眠時間を食べる怪異、当然食べられた分だけ睡眠時間は増えていく
 睡眠時間が徐々に長くなり一日の睡眠時間が20時間に達する前に怪異を身体から追い出さないと永遠に目を覚まさなくなる

願い魚(フィッシュ)視点
魚を飲み込んだ少年
 願いを叶える代わりに対価としてその願いと同等の物を奪っていく、考え方であったり命であったりと対価は人によって違う
 飲み込むというのは魚を受け入れたということであり本当に魚を丸呑みにしたという意味ではない

囲い火蜂(はるやビー)涼野視点
蜂に刺された少年
 「触れないハチに刺され全身が火で包まれたよう」と言われ室町時代に流行った原因不明の感染病が起源とされるが実際は怪異などではなく実際はただのプラシーボ効果であり、身動き困難になるほどの高熱を伴うが数日程度で治る風邪

▽ここから時間軸はイナGO

追われ狼(たくとウルフ)霧野視点
狼に咬まれた少年
 現状に飲み込まれ心の弱っている人間の夢に出てきてその足に咬み付く真っ黒いの狼
 咬まれた人間の影に潜み、周囲からのその人間にとって良い言葉を聞こえなくする
 取りつかれた人間は自分に都合の悪い言葉しか聞こえなくなり、精神的に追い込まれ、やがて自ら命を絶つ状況にまで至る
 銀の弾丸でその影を打ち抜くことにより怪異が身体から出ていく

おもし蟹(ひょうがクラブ)吹雪視点
蟹に行き遭った少年
 行き遭った人の願いを聞き入れ「思い」とともに「重さ」を引き受ける
 体重を奪われると精神的な苦痛を感じなくなるが代わりに無感情になり、存在をも奪うとされている

狐(たいがフォックス)照美視点
狐につままれた少年
 「狐に化かされたように性格が変わってしまった」というのが怪異の由来とされているが、根も葉もない噂が原因で潜在的にそうであると思い込む一種のプラシーボ効果であり、噂自体は75日程度でなくなる
 しかし、それまでの期間噂の聞こえる場所から遠ざける必要がある

蛇切縄(スネイク)
蛇に巻かれた少年
 悪意によって遣わされる怪異であり、呪われたものは見えない蛇に足から徐々に巻きつかれ顔に到達した時点で殺される
 蛇切縄を引き剥がすことはできるがそのとき引き剥がした当人に蛇切縄が襲い掛かり、それをやり過ごしても今度は呪いをかけた本人を襲う(呪い返し)

犬(ドッグ)
犬に吠えられた少年
何をしてもうだつの上がらぬ結果をもたらし良い所を全て他人に持っていかれる
誰にも評価されることのない


四月蠅(名前フライ)
 七つの大罪の一つである暴食が起源であるとも言われており怪異を食べることで取り付いた人間の時間を変動させる怪異
 巻き戻る時間は食べた怪異の階級などに比例し老いる時間はほぼ一定



・時間軸
くうすけクロウ(帝国との練習試合〜FFの間)
あつやマイマイ(エイリア編終了直後あたり)
はるなラクーン(エイリア編終了〜FFI選手集結の間)
かずやフィッシュ(FFIアメリカ戦前、一之瀬幼い頃)
はるやビー(FFI予選終了直後あたり)

たくとウルフ(天馬入学前後あたり)
ひょうがクラブ(ゴッドエデン調査終了直後あたり)



 ここまで考えて飽きました。記載内容は“はるなラクーン”までと“かずやフィッシュ”“ひょうがクラブ”をちょろっとだけ。




くうすけクロウ

(壹)

 帝国学園との練習試合をきっかけに松野空介という奴と仲良くなった、ボーダーの猫耳帽子を被っていて猫のような奴だが実際に性格も猫のようだった
 サッカー部に正式に入部するまでは飽きっぽい性格のため特定の部に所属せず試合のときなどに助っ人として活躍している器用な奴で、初めてやるスポーツでも難なくこなして結構勝利に導いているという噂をよく聞いた
 俺は自分で言うのも何だが結構普通で何事も中途半端な人間だから同じクラスの松野の噂話を聞くたびに俺とは性格もタイプも違ったので少し敬遠していた
 だけど実際に話してみれば普通に良い奴ですぐに仲良くなった、時には冗談を言い合ったりして今ではお互いが気の許した親友だった

 その日もいつもと同じく部活が終わりマックスと一緒に帰るときのことだった、バスケ部の一人だろう男子が俺たちの所まで走ってきたので何事かと立ち止まればそれはマックスへ助っ人の依頼だった
 サッカー部に正式に入部しているマックスだがいつものノリで助っ人の依頼を二つ返事で承諾するのかと思いきや奴の口から出てきた言葉は拒否だった

「悪いけど、もう部活の助っ人はしないって決めたんだ」
「……そうか、わかった」

 バスケ部の奴は少し残念そうな顔をしてそのまま帰っていったので、俺が本当に良かったのかと聞けば今はサッカーが楽しくて他の事を考える暇はないのだと笑っていた、俺も釣られて笑みを浮かべる
 飽きっぽいマックスが一つのことに執着を見せるのは珍しいな、サッカー部に入るときも飽きっぽいけど円堂と一緒なら飽きなさそうだと笑っていたのを思い出す、それほどにサッカーが楽しいのだということは俺としても喜ばしいことだ

 それからはいつもの道をいつものように談笑しながら歩いたのだが今日に限ってカラスの鳴き声が妙に耳につく、この時間帯はあまりカラスが現れないのだが今日のこの道だけは違っていた
 いつも通る住宅街なのに人は俺たち以外一人も居らず電線には無数のカラスが連なり空を飛んでいるカラスたちと一緒にかあかあと鳴いている
 いつもならば夕焼けの綺麗な道なのだが大量のカラスによって薄暗く感じ不気味でならない
 マックスも同じことを考えていたのかさっさとこの道を通ってあの角を曲がろうと俺を促した時だった、一羽のカラスがマックスの頭の上にとまった

「うひゃあっ!?」
「なっ!?」

 しかもそいつは他のとは違い全身が真っ白いカラスで、唐突な出来事に動けずにいるマックスを知ってか知らずか優雅に羽を休めているそいつは、真っ白い体とは正反対の闇のように暗い瞳を俺に向け、他のカラスと同じ声でかあと鳴いた
 そして白い翼を広げるのを何かの合図としたかのように電線や空にいたカラスも羽を広げマックスの後方へ一斉に飛んでいった、どこかの写真展にありそうなその光景があまりにも神秘的でいて不気味だったのだけは覚えている
 マックスがカラスを見ようと振り返るもカラスはすでに夕闇に消えていった後で、マックスのニット帽と道路に少しだけ抜けた羽が残されれていた
 しかしその羽は先ほどマックスの頭上で羽を休めていたカラスが残していった物のはずなのに真っ白いあいつとは正反対の黒い羽だった
 カラスたちが一斉にどこかへ消えていったためいつも見ている綺麗な夕焼けが広がっているだけ、大群で飛んでいったはずなのに羽の音が聞こえなかったのは気のせいだと思いたい

「何だカラスかー、びっくりした」
「いやいや、あのカラス白かっただろ!」
「何言ってんの? 頭の上に乗ってたんだから見えるはずないって、っていうかこの羽黒いじゃん」

 夢でも見てたんじゃない、と笑われてしまった、確かに俺はその白い体を見たはずなのだが手元にあるのは黒い羽で、俺は夕方だけど白昼夢でも見ていたのだろうか
 しかしあの闇のような瞳を向けられたときの嫌な感じは夢でないと思いたい、だが当の本人は気にしていないようなので俺も気にしないようにしよう




(貳)

 それから数日間あの烏が気になったが俺もマックスもこれといった変化は無かった、あれ以来通学路にカラスの群れが現れることも無くなったし本当にただの偶然だったのかもしれない
 そのことをマックスに話したらまだ気にしているのかとあの時と同様に笑われた、人がせっかく心配してやってるというのに、まあマックスらしいと言ってしまえばそれまでだがやはり気になるものは気になってしまう
 それからほぼ毎日のようにマックスを観察していたら気持ち悪いと一蹴されてしまった、改めて自分の行動を思い返してみるとストーカーのようで確かに気持ち悪い、何も変化も無いことだし諦めようと決めたときだった、その変化の兆しが見られたのは

 体育で隣のクラスと合同で
セパタクローをしていたときのことだった、例の如くマックスと同じチームになったのでお得意の器用さで良い具合に勝てると安心していた矢先に何を思ったのかマックスが相手コートに向けてクロスドライブを打ち込んだのだ
 地上技のクロスドライブを空中から打ったのはさすがとしか言えなかったが体育での必殺技使用は禁止になっている
 たまたま相手チームだった円堂がキャッチしてくれたので怪我人が出なかったのだが、クロスドライブを打ったときのマックスはいつもと違っていた

「あれ、僕今サッカーしてて……?」
「どうしたんだよマックス、今はセパタクローだろ」
「えっ、セパ……?」

 その眼は虚ろで先生や俺たちが止めに入ると自分が今していたことをよく分かっていない様子、まるで無意識のままにやっていたみたいだ
 疲れでも溜まってるのかと先生が笑うのでみんなもつられて笑う、けれど俺だけはもしかしたらあの時の不思議体験から起きたことなのではないかと気が気じゃなかった

「サッカーしすぎて円堂みたいになったんじゃねえの?」
「俺みたいって何だよー!」
「半田、松野を保健室に連れて行ってやれ」

 先生の指示通り戸惑うマックスを保健室に連れて行けば都合よく保健医はおらず堂々とベッドを使わせてもらうことにした、マックスをベッドに座らせ聞きたかったことを聞くことにした、先ほどは何故クロスドライブを打ったのか尋ねればマックスは困惑気味に全てを話してくれた
 ここ最近サッカーのことばかりを考えていて先ほどの授業でもサッカーのことしか考えられず、サッカーの試合と勘違いしてしまったらしい、誰が聞いてもおかしいことに気づくだろう
 円堂くらいのサッカー馬鹿ならばまだしも飽き性のマックスがここまでサッカーにのめり込み授業内容を間違えるほどにサッカーのことを考えてしまうのは明らかにおかしい、深く聞けば授業中や食事中にもサッカーがしたくなってしまうという
 俺は精神的な問題とか病の類には詳しくなかったのでこれは何かの病気なのではないかと、一度病院で診てもらった方が良いのではと提案もしてみたがそんなことよりサッカーしたいと言われた

「それどころじゃねえよ!」
「……そうだよね、飽きっぽい僕がここまでサッカーのこと考えるなんて、病気かも」

 一応自覚はあったみたいで現状をどうにかしなければいけないということだけは理解しているらしい、やっぱり病院行ってみようかなと考え直している
 このタイミングなら言えると思い、あの不思議体験が原因かもしれないと俺が言えば眉間にしわを寄せて頷いた、マックス自身あの日以来サッカーのことを考えている時間が増えていることに薄々気づいていたらしい
 しかしそれはサッカー自体が楽しいからだと結論付け深くは気にしていなかったようだ、そして先の事件が起きてしまい考えを変えざるを得なかった

 話し込んでいたらいつの間にか授業終了のチャイムが鳴った、とりあえず原因がわかっても解決策がないのでは誰かに話しても混乱させるだけだということでこのことは二人の秘密に、マックスはもう一時間保健室で寝ることにし俺は授業に戻った




(參)

 いつものようにマックスと二人で帰路に着いて例の住宅街に差し掛かったときだ、やはりあの時のようなカラスの集団は存在せず怪しいものがないか周りを探してみたが何一つ手がかりが見つからなかった、仕方なく諦めて帰ろうと夕焼けに向かって歩き出そうとしたときにその声は俺たちに話しかけた

「貴方、怪異に取り付かれているわよ」

 声のする方を見やれば塀の上に座ってこちらを見ている少女がいた、綺麗な顔立ちをしているその子は背格好から見て俺たちと同じくらいの年だろう、俺とマックスがお互いを見合ってどちらの知り合いでもないことを確認しているとその子はひょいと塀から降りてマックスの元へと歩いていった

「えっと、君は……?」
「私はただの通りすがりだけど、貴方たちよりは怪異の知識は豊富よ」
「怪異?」

 マックスを下から上へ全身を確認するように見やったその子は、厄介な怪異ね、と口元に笑みを浮かべた、怪異という聞きなれない言葉に二人そろって首を傾げれば親切に怪異とやらの説明をしてくれた

 怪異というのは都市伝説や怪談話などの信仰や噂によって生まれる俺たち人間とは異なる存在、大体は病気などの体調異常や体質改変や催眠効果等として影響が出てくるそうだ
 初対面の謎の女の子の言葉なのに全てを信じられるような何かをその子は持っていた、説明を聞き終わったマックスが自分がおかしいのはその怪異のせいだと彼女に問えば答えは肯定
 そんな小説のようなことが起きてしまっているのかと頭が多少混乱したがあの時の虚ろな眼が何よりの証拠だ
 彼女に促されどうしてこの状態になってしまったのか思い当たることはないかを事細かく話した、あの日カラスの群れの中一羽のカラスがマックスの頭に乗って一鳴きして一斉に飛び立ったこと、気のせいかも知れないがそのカラスが真っ白であったこともきちんと話した
 俺らの話を聞き終わった彼女は少し考えた後に思い出したように頷いた、それから再びマックスの全身を見てから口を開いた

「君って飽きっぽい性格?」
「そうだけど、何で分かったの?」
「影烏に休まれる人は飽きっぽい人が多いの」
「かげからす……?」

 影烏は取りついた人間を少しずつ知らないうちに苦しめていく怪異らしい、一つのものに興味を示さない人が一つのものに執着を見せたときに取り付くと言う、なので飽きっぽい人に取り付きやすいとのこと
 その姿は普通の烏とは違い真っ白で取り付く人間の頭で羽を休めるのだと聞き、まさにあの時の状況と同じだったのであれが怪異だったのかとあの闇のような瞳を思い出して今更ながらにぞっとした
 その怪異に取り付かれたらどうなるのかマックスが聞けば、サッカー以外のことに対する興味が一切断たれやがて食事や排泄その他生命に関わること全てに対しての意欲がなくなり寝る間も惜しんでサッカーをするようになる、最悪の場合病院で植物人間状態になるかそのまま死ぬかという運命を辿るのだと答えた
 授業内容を間違えてしまうほどサッカーにのめりこんでいた時点ではまだ大丈夫な状態であったのだ、自分がそんな状態になっていたことに恐怖を覚えたのかマックスが彼女に懇願するように彼女に嘆願した

「お願い、助けて……!」

「ええ、いいわよ」

 やけにあっさりとした返事で拍子抜けてしまったが助けてくれるのに越したことは無い、とりあえずもう空が暗い上に住宅街でそういったことを行うのは目立つのでどこか閉鎖的な場所はないかと聞かれたので明日の部活後にサッカー部の部室でということになった
 まだ怪異の侵食が浅いので明日の放課後までくらいならばマックスも耐えられるようだ、彼女にサッカー部室の場所と時間を細かく伝えれば分かったと言ってどこかへ去っていった
 明日来てくれるなんて保障はどこにも無かったが彼女は嘘を吐かない人だと本能が分かっていた




(肆)

 昨日の今日で症状が悪化するするはずないと思っていたのだがそれは間違いでセパタクローでサッカーをするには留まらず授業にも手がつかず食事すらも疎かだった、午後の授業はまた体調が悪いと言って保健室で休んでいた
 部活のときだけが唯一マックスの息つける時間だった、異常なまでに活き活きとボールを蹴るマックスが珍しくて不謹慎ながらにもある意味貴重な体験なのかもしれないと思った
 部活が終わりを告げみんながそそくさと帰っていく中俺たちは部室に残らねばならなかったのでマックスが得意の器用さで木野を言いくるめ鍵を預かった、みんなが部室から出て行ったのを確認して部室前で昨日の子が来るのを待つ
 程なくして彼女は再び俺たちの前に姿を現した、昨日となんら変わらぬ格好で手に買い物袋を持っていたのでどこかで買い物でもしたのだろう、生活臭溢れる手元に少なからず彼女も人間なのだと何だかほっとした

「ここが部室? 結構古くてぼろいのね」
「ぼろいは余計だ!」
「半田うるさい、さ、入って」

 俺のツッコミもマックスに一蹴され二人が部室に入っていくのを見て俺も慌てて中に入った、念のために鍵を閉めておいてと言われ窓に扉など厳重に戸締りをする、彼女曰く怪異が逃げ出したら厄介だからとのこと
 それからマックスを壁を背に座らせ彼女は机の上でなにやら準備を始めた、買い物袋は怪異退治の道具が入っていたみたいだ
 最初に取り出したのは細くて丈夫そうな縄で暴れられたら困るからと言う理由でマックスの手足を縛った、暴れるようなことをするのかと二人そろって顔が青くなる
 袋から真っ白いハンカチと瓶を取り出し瓶の蓋を開けて中の液体をハンカチに染み込ませた、何の液体か気になったけれど俺の視線に気づいた彼女が人差し指を口元に当てて微笑んだのでそれ以上聞けなかった、マックス死ぬなよ
 準備が整ったようで謎の液体のついたハンカチ片手にじりじりとマックスに寄って行く、その姿が妖艶でいてどこか怖ろしい、マックスもそう思ったのか頬を染めながらも体が震えている

「結構苦しいけど我慢してね」

 ゆっくりとマックスの体に座った彼女がいつか見たエロビデオのシチュエーションに似ていて顔が熱くなっていると手袋をしている右手に持ったハンカチでマックスの口を鼻を覆った、ハンカチについている液体の種類によってはマックスは死ぬだろうと内心焦ったがマックスを助けることは出来なかった
 マックスは最初苦しそうに眉をひそめて次第に首を振り始めたが彼女が左手を頬に添えたことによりそれも不可能になる、そしてゆっくりと目蓋を下ろしかけたそのときだった
 マックスの帽子が徐々に盛り上がっていくのだ、帽子の隙間から真っ白な羽がはみ出してあの時の烏がそこにいるのだと理解した、盛り上がるのが終わったのを確認して彼女が帽子を剥ぎ取ればそこにはあの時と同じ真っ白い烏が存在しており闇のような黒い眼で彼女を見詰める

 烏が羽を広げ今にも飛びたたんとした瞬間を狙い右手に嵌めていた手袋を即座に外し素手で烏を掴んだ、片方しか嵌めていない手袋の中身が気になったがいたって普通の綺麗な手だったのでそれも拍子抜けだったが掴んでいる烏が次第に消えていくのがわかった
 ぜいぜいとハンカチから開放されたマックスが肩で息をしているのをバックに彼女が右手に手袋を嵌めて立ち上がるとマックスを縛っていた縄を解いて立ち上がらせた

「たぶんこれで大丈夫」
「ありがとう」
「あ、何か不思議なことがあったらあったらここに連絡して」

 携帯電話だろうか番号が書かれた紙をマックスに手渡すと俺に部室の鍵を開けるように言った、俺が鍵を開ければ彼女は一言また会うかもねと言い残し風のようにどこかへ消えていった
 それからは器用でサッカーが好きだけど飽きっぽいいつものマックスに戻った、俺ら以外は本当にただ体調が悪かっただけだと思っているのが幸いだ


くうすけクロウ


あつやマイマイ

(壹)

 これは私がとある事情で北海道の地に訪れた際の話で、その子供は還れずにいた

 その日の北海道は天気も至極穏やかで交通機関を利用せずとも目的地に行けると踏み、手探りで歩き始めたのだが市街地を抜けたあたりで本格的な雪道へと出てしまいやはり何かしらの交通機関を利用すべきだったと後悔するも遅く、市街地で購入した冬用のブーツを頼りに進むしかなかった
 しばらく歩くと広い道に出たが双方を山に囲まれていたためここが北ヶ峰という場所なのだと理解した、先ほど市街地で昼食を摂った際にこの場所のことを店主に聞かされた、危険な場所であると
 この北ヶ峰という場所は山と山の間を通るようにして唯一の道が存在するため雪崩が頻繁に起こると聞いた、数年前にここで起きた雪崩が原因でこの世を去った家族がいるという記事を新聞か何かで読んだことがある
 他にも雪崩で亡くなった人は数知れず仕舞いには熊も出てくると言うことだったので、私もその中の一人にならないよう早々にこの場を去ろう足早に、と悠然と立つ樹木に差し掛かったときだった、その少年がこちらを見ていた
 マフラーを着け色素の薄い赤い髪を後ろで跳ねさせた幼い少年はそのコペンブルーの瞳で私を見ていた
 背格好からまだ小学生だと伺えるが保護者の姿が見受けられない、迷子か、それともこの少年はすでに
 そこまで考えたところで少年が私の方へ歩いてくる、恐る恐るといった風に戸惑いの色を見せるその瞳は実にいたいけで私に何かを訴えていた

「お姉さん俺が見えるの?」
「ええ、見えているわ」

 その言葉に少年は表情を緩ませたのも束の間、今度は口を紡ぎ何かを決心したようにごくりと喉を鳴らした、何かを言いたそうに私を見るので私は少年が喋るのを待った
 私のスカートの裾を掴んだその手は小さく震えておりこの広い雪原でどのくらいの間一人でいたのか、どのくらい寂しい思いをしていたのかが伝わった

「なぁ、お願い、助けて……!」
「どうしたの?」
「家に帰りたいだけど帰れないんだ」
「……詳しく教えてくれる?」
「ああ、」

 話を聞くところこの子は迷い牛という怪異に取り付かれているから帰れずにいる、もう少し発見が遅れていればこの少年自体が怪異となっていたかもしれない、発見できたのが今で良かった
 可哀想にこの子は住んでいた家に帰れば自分が生きていないと思い知らされることをどこかで理解している為にその恐怖から怪異を引き寄せてしまったのだろう
 だから本当に行きたい目的地に辿り着けず成仏することすらも出来ないでいる
 この子のためになるのか分からないけれど手っ取り早く怪異を取り除く方法は一つしかない

「仕方がないから君ごと喰う」
「ひぃっ!」

 途端にその少年の表情が山姥でも見ているかのように一変した、私の言い回しに非があったことは認めざるを得ないがこの少年にも少なからずの非はある
 始めから説明するのも面倒なのでとりあえずこの少年が怪異に取り付かれているということとそのままでは帰宅することはおろか永延に彷徨い続けることになると、掻い摘んで説明すれば案の定少年の表情は曇る
 仕舞いには泣き出しかねないこの状況をどう打破すべきか考える、このままいればこの少年が目的地に辿り付くことも私がこの少年の怪異を喰らうこともできない
 頭の中で勝手に利害の一致ということにして少年を目的地まで連れて行くという結論に至った

「少年、私が家まで連れて行ってあげるよ」
「俺の名前は少年じゃないやいっ、吹雪アツヤだよ!」
「そう、アツヤ、行くよ」
「うん!」

 私が差し出した右手に意気揚々とアツヤの小さな手が重なる、この寒さで冷えていたのか握った手から手が冷たくなっていたが徐々に温かさを取り戻していった、アツヤは幽霊であったとしても少なからず温もりは持っていた




(貳)

「アツヤ、自宅の住所は分かる?」
「うん、えっと……」

 まあ住所を聞いたところで北海道に来たのは初めてなので分かるわけもなく、アツヤから聞き出した自宅の住所を地元の人に訪ね歩くことになった
 歩く間もアツヤの手は離さずにいたため見える人にはきっと似ていない親子に見えていたのかもしれない

 どうやらアツヤはサッカーをやっているらしく試合や必殺技の話をしてくれる、子供ができたらきっとこんな感じなのだろう、アツヤはフォワードをやっていて兄はディフェンダーらしい

「この前の試合で、俺が決勝点決めたんだぜ!」
「凄いじゃない」
「でも兄ちゃんはミスしたんだよ」

 嬉しそうに話す姿はただの子供であまりにも微笑ましくて思わず笑みをこぼした、それが嬉しかったのかさらにアツヤは色々な話をしてくれた

 途中雪の中に立っている建物が目に入りアツヤにあれが何かを尋ねれば中学校であると教えられた、あと数年で俺もここに通えるんだと言われたときは胸が痛んだ
 ここならば人がたくさん居るだろうと考えその私有地に足を踏み入れれば授業はすでに終了しており殆どの生徒は下校していた、はてさてどうしたものか
 どこからか声が聞こえるとアツヤが言うので引っ張られるままついて行けば道が途絶えており崖かと思いきや下へ続く階段があった
 下にはよく整備されたグラウンドが広がっていてサッカーをしている少年たちが見える
 雪が払われているとはいえ滑らぬように注意を払って下りていけばユニフォームを纏ったサッカー部員たちが私に注目していた
 誰だ誰だとあっという間に集まられてしまい、大人数に威圧されたのかアツヤが私の後ろに隠れた
 怪しい者じゃないと言っても信用してくれないだろうと思いつつも一応形式的に言ってみる、しかしやはりと言うべきか少年たちの表情は険しい
 後ろで跳ねさせた色素の薄い髪と幼さを残した顔を持つ少年が率先して私の前に現れた、見た目からの情報だけでこの子がアツヤと何らかの関係があるのだとすぐに分かった、そのくらい二人は似ていた

「何か用ですか?」
「知り合いの家を探してる途中なのだけれど、サッカーしているのが見えたから」
「サッカー好きなんですか?」
「ええ、知り合いにサッカーをやっている人がいるから興味があって」
「そうなんですか、よかったら見て行って下さい」

 いつの間にやら身の潔白が晴れていたみたいで見学の許可が下りた、もう少しで部活が終わるのでそれからで良かったら道案内をしてくれるようだ
 私はお言葉に甘えることにしてアツヤとベンチに座る、アツヤはサッカーに興味津々といった様子で目を輝かせている
 かくいう私は携帯電話を取り出して調べ物をしていた、数年前この地の北ヶ峰で起きた事件のことを詳しく知りたくて検索をかければすぐに情報は手に入った
 少年サッカーの試合の帰り道、車に乗っていた一家四人が雪崩に巻き込まれ両親と幼い弟が死亡、偶然車から放り出されたこれまた幼い兄が重態であったが一命を取りとめ今は元気に生きているそうだ
 きっとキャプテンマークをつけているあの少年がそうなのだろう、家族の分まで元気に育っているのは良いことだ、きっと高いところにいる両親も安心していることでしょう
 今度はアツヤを二人の元へ届けなくてはいけない、それは単なる義務感であったり偽善のようなものかもしれないがあの場に居合わせたのが私であったというのは単なる偶然には思えない、きっとこうなることは決まっていたのだ、所謂必然というもの
 シュートを打ったのが兄だとは分からずめいっぱいはしゃぐアツヤの頭をそっと撫でた

「な、何だよ姉ちゃん」
「可愛かったからつい」
「かっ、可愛くねーし!」

 彼もこれくらい可愛げがあれば良いのにな、と知り合いの少年を思い出した




(參)

「お待たせしました」
「お疲れ様、ごめんね、道案内させちゃって」
「いえ、僕でよければ」

 アツヤは自分が私以外の人間には見えていないことを分かっているのか私の手を握ったまま静かだった
 どうやらこのグラウンドからは公道に出ることが出来ないらしく降りてきた階段を上ることになった、その間に彼の話を聞くことにした
 一ヶ月ほど前にサッカーで世界征服を計った宇宙人たちとの戦いに勝利したらしい、私はそういったものに興味がなかったので素直に知らなかったことを伝えれば驚かれた

「あんなに大騒ぎになったのに知らなかったんですか?」
「その時は海外にいた気がするのよね」
「気がするって……、不思議な人ですね」
「それ、なぜかよく言われるわ」
「あははっ、あ、それでその知り合いの家ってどこですか?」
「ああ、ええと、」

 私が目的地を伝えれば彼の表情が険しくなった、それもそうだ、私たちの目的地は彼が前に住んでいた家なのだから、もしくは今も住んでいる家か
 ほんの数秒の間をおいて彼が口を開く、そこなら知ってますから案内できますと、やはり彼の表情筋は忙しそうだ

 彼にとっては二人だが私とアツヤにとっては三人の間に沈黙が続く、彼自身聞こうか聞かないでおくべきか考えているように思える
 私は隠しているつもりはないがアツヤは聞かれたくないだろうと微妙な板ばさみになりつつひたすらに足を動かす
 様々な家が連なる住宅街に入ってから除雪をしている人がちらほらと見えて、彼はほとんどの人に声をかけられていた

「おや吹雪くん、年上の彼女とはやるねー」
「しかもべっぴんさん!」
「もー、違いますよ」

 この手の話はもう耳にたこが出来るほどに聞いた、愛想笑いを返す彼も慣れたように返事をしていく
 そこで初めて彼の苗字を知り彼がアツヤの兄であることはこれで推測から確信へと変わった、兄に似ていて同じ苗字ということでアツヤはすでに何かに気づいているかもしれない、生憎身長の低いアツヤの表情は伺えなかった

 しばらく歩いて一軒の民家の前にたどり着いた、一般家庭の家にはふさわしい外装だったがここまで案内してくれた彼は今はこの家に住んでいないらしい、その証拠に売り家という紙が貼られている
 人気のない家にアツヤも何かを悟ったのか繋がれた手が震え始める、そして私の視線が空き家の紙にあることに気づいた吹雪くんがあわてて口を開いた

「ここに住んでいた家族は……」
「知ってるわ、ここまで案内ありがとう」
「なら何で……!」
「ここに帰りたかったのは私じゃないの」
「……?」

 私の言葉に違和感を覚えたのか吹雪くんが眉を寄せる、そう、帰りたかったのは私じゃない
 ゆっくりと頭を撫でてやればアツヤが顔を上げる、やっと見れたアツヤの表情は今にも泣きそうだった、現実は時に厳しいけれどこれもすべてアツヤのため

「ほら着いたよ、アツヤ」
「っ!?」

 すでにこの世にいない弟の名前を呼ばれた吹雪くんが目を丸くする、今日初めて会った見ず知らずの女が死んだ自分の弟の名前を呼べば誰だって驚くしかない

「今、アツヤって……?」
「ええ、アツヤはここにいる」

 君には見えていないみたいだけれど、そう付け足してアツヤの居る場所に視線を送れば吹雪くんもそこを見詰める

「おれ、お、れ……うう、あ、」

 大きな目から涙を一筋こぼしたのを皮切りにアツヤはわんわんと泣き始めた、私はただ黙ってその小さな身体を抱きしめた




(肆)

 目的地にたどり着いたことによりアツヤの身体から怪異は出て行き私はアツヤを抱きとめながらも右手の手袋を外して迷わずに蝸牛を掴んだ

 自分がこの世に居ない存在であると認めたくなかった事実を認めてしまったこと、それと同時に兄に似た人が死に別れた本物の兄だったことを知ったアツヤはさらに泣いた、その涙が涸れるまで泣き続けた

 端から見えれば空気を抱きしめあやしている女は相当に怪しいものだろう、けれど吹雪くんは見ず知らずの私を信用してくれたようにアツヤがここに居ることも信じてくれた
 そして吹雪くんもアツヤと同じ色の瞳から涙を流して、結果的に私は二人の子供を抱きしめあやすこととなったのだ、知らない人が見たら親子に見えてしまいそうなところが恐ろしい

 ようやっと泣き止んだのは吹雪くんの方だった、取り乱してしまってすみませんと恥ずかしそうに謝ってきたが別に恥じることではないと思う、見えていなくても死に別れた兄弟の再会を馬鹿にする奴は居ない
 大丈夫だという意味も込めて彼の頭を撫でてやれば照れくさそうに笑ってくれた、そしてようやくアツヤも泣き止んだ、というより泣きつかれて寝てしまった
 私の服を握ったまま眠ってしまったアツヤを抱き上げれば吹雪くんは見えていないのにアツヤが泣きつかれて寝たことを言い当てた

「うん、よくわかったね」
「昔もよく泣いて、その度に泣きつかれて寝てたんだ」

 変わってないなぁと懐かしむよう笑みを浮かべる吹雪くん、アツヤを左手だけで支え空いた手で吹雪くんの腕を掴む
 そしてそのまま寝ているアツヤの頭へと彼の手を誘導させてやればその指先がピンクの髪に触れた
 私は見えているから触れられるものだと思っていたが試してみて正解だった、彼は目を見開いてその感触を確かめてからゆっくりとその頭を撫でた

「アツヤ……!」

「ん、うー」 
「あら、アツヤおはよう」
「姉ちゃん? それに兄ちゃんも、おはよー」
「アツヤおはよう」

 吹雪くんが撫でていることをアツヤも感じ取れたのか少し身じろいでから目を開けた、吹雪くんにアツヤは見えていないはずなのに彼はアツヤを見ているようで、その目は完全にお兄ちゃんだった

 本来ならば怪異も居なくなり未練もなくなったので自縛霊のアツヤは両親と同じ場所へ行くことが出来るのだが一向にその兆しが現れない
 とりあえず私のやるべきことは全て終わった、後はアツヤ次第だということらしい
 アツヤにその気になれば両親と同じところに行くことも出来ることを伝えれば少し考えてから一言

「うーん、わかんねえや」

 なんとも呑気な返事にあっけに取られているとまたアツヤがもうちょっと遊んでからにすると笑う、その答えに笑みを漏らせば吹雪くんに首をかしげた
 アツヤの言ったことを一字一句伝えればアツヤらしいやと三人で笑った

「アツヤ、自縛霊から浮遊霊に二階級特進おめでとう、今までとは違って自由に行動できるから好きなことしていいのよ」
「じゃあ俺、姉ちゃんと一緒に居たい!」
「……私と一緒に居ても面白いことなんて何もないよ」
「えー」

 私と居てもろくなことはない、こんな人間と関わることはお勧めしないと遠まわしに伝えればアツヤは口を尖らせていたがこれがアツヤのためなの
 吹雪くんに何か不思議なことがあったら連絡してくれと電話番号を書いた紙を渡して私は北海道での本来の目的を果たすために二人と別れてた

 十年後、違う形ではあるが再び彼らと会うことになるのを、このときの私はまだ知らなかった


あつやマイマイ


はるなラクーン

(壹)

 その異変に気づいたときはすでにその怪異に半分以上飲み込まれていたようだ、大切な妹一人も守れない無力な人間だと思い知らされた

「はいお兄ちゃん、ドリンク」
「ああ、ありがとう」

 いつもの元気がここ最近の春奈には見られなくどうもおかしいということに気づいた
 いつものようにマネージャー業にこなしているがどこかおぼつかない、些細なミスが目立つようになってきたので当初は疲れがたまっているのかと思っていたがそれも違うようだ
 最初こそ終始うとうとと眠たそうにしているので、春奈と同じクラスの壁山にも話を聞いてみたら授業中もたまに居眠りをしているようなのだ、しかしただ夜更かしでもして寝不足なだけだろうと思っていた

「春奈、最近眠そうにしているが寝不足なのか?」
「うーん、ちゃんと寝てるんだけど寝たりないっていうか……」

 春奈も最初はただの寝不足と考え早めに寝るようにしていたのだがそれでは治らないどころか日に日に睡眠時間が増えていく一方、疲労や何かが溜まっているのだろうと考え一度大きな病院に行って診てもらうのを勧めた
 数日後に病院で受けた検査の結果からは何一つ原因が見当たらなかったみたいだ
 病院でも原因が分からなかったということでそれ以外に心当たりは無いか春奈に問いただしてみれば一つだけ思い出したようで、ばつが悪そうに話し始めた

「……あのね、この前帰り道で間違って狸の置物を壊しちゃったの」

 軒先にあったわけは無くたまたま通りかかったバス停に置いてあった手のひらサイズの狸の置物だったそうだ
 名前も書いておらず誰の持ち物かも分からなかったのでとりあえず手を合わせて拝んでおいたそうだが、何やら不気味だったのでよく覚えていたらしい
 俺も原因はそれだと感じたのだが元々霊などの非科学的なものを信じる性質ではないのでにわかに信じがたい、しかし今はそんなこと言っている場合ではない
 どうしたものかと部活が始まる前早めに部室に来て悩んでいるとマックスが入ってきた、掃除当番ではなかったので早く来たのだと笑っているマックスを見て思った
 彼もまた、ある一定の期間ではあったが体調を崩していたので何か参考になるかも知れないと、尋ねてみた

「マックス、以前体調が悪いと言っていた時期があったが原因は何だったんだ?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」

 向かいに座ったマックスに質問をしたらいつものにこにことした表情が一瞬にて歪んだ
 何か悪いことでも言ったのだろうか、しかし今は春奈を治すことが最優先事項だ
 春奈が原因不明の睡魔に襲われていることを話した、いくら寝ても寝たりないということを言えばマックスに病院に行けばと言う
 なので俺はすでに病院で診てもらっていてそこでも原因は見つかっていない旨も伝える

 俺の話をただ静かに聞いていたマックスが口を開く、何か原因と成り得ることはなかったと、そこで俺は数週間前に春奈が誤って狸の置物を壊してしまったということ、全てを話した
 全てを聞いたマックスが数回頷いてもしかしたら治せるかもしれないと呟いた、
 俺はマックスに掴みかかった、名の知れた医者でも治せなかったものを治せると聞いて喜ばない者はいない
 しかしマックスがそんなこと出来るなんてさすが器用だなと感心していると治すのは僕じゃないと言われてしまう

「そういうのに詳しい人が知り合いにいるんだ」
「なるほどな……、となるとその人はイタコの類なのか?」
「んー、多分違うと思うよ」

 僕がお世話になったときはそんな感じじゃなかったし、と口元に笑みを浮かべたマックスに俺はただただ安心するしかなかった
 その後円堂たちがわらわらと部室に入ってきてこの話はここで終了となったのだがマックスは携帯を片手にどこかへ消えていった、先ほどの知り合いとやらに連絡を取ってくれているのだろう




(貳)

 原因不明の睡魔を治せる可能性を持っている人がマックスの知り合いにいると春奈に伝えれば喜んでくれた、もうこの時点で一日十時間も目蓋を上げていられない状態になっていた
 この間連絡をしてくれたらしいマックスの話に寄れば今は北海道にいるのでこちらに来るまであと二、三日掛かるとのことだった、それまで春奈に頑張ってもらうしかないとも聞かされた
 マックスから話を聞いた春奈は何とか頑張りますと笑みを見せたがその笑顔にはいつもの元気が見当たらなかった、本当に大丈夫だろうかと思っていたがその不安が嫌な形で表れた

 連絡を取った二日後には春奈は学校を休まざるを得ない状態となっていた、母親がいくら体を揺らしても眼を覚まさないらしい
 春奈の両親はどうしても仕事を休めないとのことだったので事情を知っている俺が学校を休んで看病することとなった
 俺は授業を一日や二日休んだところで成績を落とすような人間ではないので春奈の両親も安心して俺に看病を任せてくれた
 春奈の眠っているベッドの傍らで携帯電話を取り出した、昼休みの時間帯を見計らいマックスに連絡を取った、知り合いはまだ到着しないのかとマックスを責めても仕方の無いことなのだがこの焦りを何かにぶつけたかった
 俺の心情を悟ってくれたのかもう一度彼女に連絡してみるよと、優しい声色で言ってくれたのが唯一の救いだ


「春奈……」

 ベッドで眠っている春奈はまるで死んでいるかのように寝返り一つせず静かだった、頬に触れてみても名前を呼んでも何の反応もないのが俺の不安を煽る、その数分後に携帯が鳴り見やればマックスからだった
 電話の内容は今日中に東京に着き放課後には稲妻町に到着する予定とのことで、到着次第マックスがここまで連れてきてくれると言っており少し安心できた
 音無家の住所をマックスに伝えれば彼女からの伝言で起きたら何時間寝ていたかを聞いておいてくれと頼まれ通話は終わった、学校の予鈴が聞こえたのでこれから午後の授業なのだろう
 春奈に視線を移す、この部屋に来たときと何ら状況は変わっていない、ただ瞼を下ろし一定の呼吸を繰り返すだけ

 数時間の間寝顔をただ見つめていると春奈の瞼がぴくりと動いた、ゆっくりと瞼が上がりその瞳が俺を見つける

「おにい、ちゃん……?」
「春奈……!」
「あれ、今って、学校は……?」
「いいんだ、それより夕方にはマックスの知り合いの人が来てくれるからそれまで休んでていいぞ」

 俺の言葉に安心したようで笑顔を見せてくれた、やはり以前よりも元気が無い、けれどそれも今日で終わるだろう
 春奈が落ち着いたのを見計らって昨夜何時に寝たかを尋ねた、日に日に睡眠時間が増えているので昨夜は九時には床に就いたらしい
 ならばざっとみて十八時間は寝ているだろう、このことをマックスにメールしてから台所を借りて春奈のために食事を作ることにした
 寝起きでおすんなり入る栄養のある食事ということでベターではあるがお粥にしてみた、冷蔵庫にある食材を使ってアレンジしたので多少は華やかになったが
 飲み物と共に春奈に差し出せばレストランのリゾットみたいだと褒められた、心をこめて作った料理を最愛の妹に褒められるのは喜ばしいことだ、うん

「……お兄ちゃん」
「?」
「私、このまま治らなかった一生眠ったままになっちゃうのかな……」

 春奈の瞳に涙がたまる、確かに原因が分からない上に頼みの綱はマックスもよく知らないらしい人物なので、不安になるのも仕方がないだろう
 しかし今はマックスの信じるその人を信じて待つしかない、それでもダメなら俺が何とかする、命に代えても

「春奈……、大丈夫だ、マックスの知り合いが駄目でも俺が必ず何とかする」
「……うん、お兄ちゃんありがとう」




(參)

 ぴんぽーん、インターホンが鳴りマックスとその知り合いが来たのだと確信した、元気になった春奈と共に玄関へ行く

「や、鬼道、連れてきたよ」

 玄関に立っているマックスは飄々たる態度で俺たちを見ていて、その眼からは感情が読み取れない、つまりはいつも通りとらえどころの無いマックスということだ
 マックスの隣にいたのは俺たちよりも遥かに幼い少女だった、豪炎寺の妹よりも幼いのではないかと思われる少女が俺たちの目の前に立っていた
 こんな幼い少女が原因不明の病を治せるなんてにわかに信じがたい、春奈もそう考えたのか不安が顔に表れている

「えっと、君が……?」
「少年、人を見た目で判断してはいけないわ」

 俺の態度を咎めるその瞳は俺たちよりもしっかりとしたものを見据えており、言葉の通り見た目だけで人を判断していた自分の先入観を改めさせられた

 とにかくマックスと少女を部屋に案内すれば女の子らしい可愛い部屋ねと春奈に笑みを向ける、それ微笑みに春奈が安心したように笑みを返した
 俺たちが床に座ったのを見て正面に少女が、三人の横に仲裁に入るような形でマックスが座った、少女は俺と春奈を交互に見やり眼を瞑ると一つ頷く
 それをじっと見ていた春奈が俺に目線を移したのを合図に俺は口を開き、始めに聞いておきたかった事を質問した

「あの、貴女は霊能の専門家か何かなんでしょうか……?」
「私は少しばかり怪異の知識があるだけで専門家ではないわ」
「怪異?」

 怪異、どこかで聞いたことがある、物の怪や妖怪の類と言った幽霊でも生き物ではない存在、しかしそれは古い迷信であったりただの都市伝説といった所謂噂話に過ぎず実際には存在していない物だとも聞いた
 そんな信憑性の無いものが今の流れで彼女の口から出てくるのかが不思議で仕方が無かった、まるで春奈がその怪異とやらに取り付かれているとでも言いたいのか
 しかし病院でも原因が分からなかったし原因と思われるのが狸の置物だ、物の怪や霊的なものと考えるのが妥当なのだろうか

「私の見たところ眠り狸に化かされて三週間程度って感じだね」
「眠り狸、ですか……?」
「うん、そう」

 眠り狸、彼女曰くその怪異が取り付く原因となったのはやはり春奈が倒して壊してしまったという狸の置物だそうだ、狸を模した陶器の置物を住処にするといわれている怪異であり壊した者に取り付きその睡眠時間を食べるのだという
 徐々に食べる量が増していきそれに比例して取り付かれた者の睡眠時間も長くなるという厄介な怪異で一度の睡眠時間が二十三時間に達してしまうとそれ以降永遠に眼を覚まさなくなり、文字通り生きた屍と化すのだそうだ
 だから今日の睡眠時間を気にしていたのかと納得したと同時に、今日で十八時間ならあと一週間も経たないうちにその子は永遠に生きた死体になっていたわよ、と言われその言葉を聞いた瞬間に春奈が小さな悲鳴を上げ俺の身が凍った
 本当にあの時マックスに相談してよかったと胸を撫で下ろす、しかしながらまだ怪異が春奈の中に存在している現状で、安心するのは早いだろう

「よし、さっさと怪異を退治しちゃいましょうか」
「あの、よろしくお願いしますっ……!」
「俺からも、よろしくお願いします」
「じゃあ春奈ちゃんはベッドに横になって……、君たちは部屋から出てってね」

 男子お断り、そう俺とマックスに向けられた指を部屋の扉に向けた、春奈がベッドに横になるのを尻目に男二人は静かに部屋を出た

「……」
「大丈夫だよ鬼道、あの人に任せておけば」

 マックスの言葉が俺をひどく安心させた、もう春奈は大丈夫だという確信が生まれた




(肆)

 マックスと二人部屋の外で座っていると中から物音が聞こえてきた、中に人がいるのだから当然といえば当然だが、やはりテレビや雑誌に載っているような儀式のようなものをやっているのだろうか
 気になって仕方が無いので気を紛らわせるためにマックスと話をすることにした、聞いて良いのか分からなかったが気になっていたことを聞くことに

「マックスはあの人とどのようにして知り合ったんだ?」

 以前体調が悪かった時期があったがあれは怪異が取り付いていたのだろうか、軽率な質問だとは思ったがマックスは少し考えてから、いいよと口角を上げた

「僕も怪異に取り付かれてたんだ」

 シンプルでいて分かりやすい答えだった、マックスの話によれば円堂のようにサッカーにばかり執着を見せていたときにはすでに怪異に取り付かれていたそうだ
 その怪異の恐ろしいところはサッカー以外の興味が徐々に断たれていき最終的には人間が生きるために必要とされることすらしなくなるという、春奈と同じく生命に関わるものだそうでその怪異を退治してくれたのも彼女だったとのこと
 そのときは両手足を縛られた状態での怪異退治だったそうで、春奈も同じことをさせられているのではないかと変な汗が流れるのがわかった
 手荷物を持っていなかったので大丈夫だろうとマックスは言うが正直なところ不安でたまらない
 この壁一枚向こう側では何か如何わしいことでも行われているのではないか、女子同士でそういった行為はけしからんぞ
 脳内で部屋の中を想像していたら唐突に扉が開きマックス共々頭を打った、勢い良く開けられたので正直物凄く痛かった
 マックスに至ってはコミックのキャラクターの如く涙目でぶつけた箇所を押さえている、しかし俺はそれどころではない

「春奈、春奈は……!」
「彼女ならベッドで寝てるわ」

 中に入りベッドで眠る春奈に駆け寄った、この家に来たときと同じ状態で眠りについているので怪異がまだ取り付いているのではないかと反射的に俺を見ている少女を睨みつけてしまった
 彼女は俺の鋭い視線に臆することなく大丈夫よとこの部屋に来たときと同じ笑みを浮かべたところで春奈が眼を覚ました

「……お兄ちゃん」
「春奈!」
「ね、大丈夫って言ったでしょ、怪異を取り除いたから副作用的にちょっと寝てただけ」
「だってさ、よかったね鬼道」

 笑みを浮かべたマックスが壁に肘を付け俺を見る、先ほどのコミカルな画が嘘のようだ
 一方春奈は怪異が取り除かれたという実感があるのか見る見るうちに目尻に涙を溜め俺に抱きつき喜んでいる、本当に良かったと春奈と共に喜びを分かち合った
 俺から離れた春奈が彼女の手を取り頭を下げる、それに続いて俺も深々と頭を下げて感謝の言葉を口にする、彼女には感謝してもしきれない

「ありがとうございます!」
「本当にありがとうございました」
「私はただ私のために怪異を取り除いただけ、じゃあね」
「じゃ僕も帰ろーっと」

 春奈はもう少し居てもらいたかったようだが彼女はもう用が済んだことと、私とはあまり関わらない方が良いと言い、早々に立ち去るそうだ、それに便乗する形でマックスも玄関へ向かう
 帰り際春奈になにやらメモを渡していたがどうやら彼女の連絡先みたいだ、何か不思議なことがあったら連絡してくれとのことで、俺たちは玄関で二人が出て行くまで頭を下げていた


「本当に良かったな」
「お兄ちゃん、ずっとそばにいてくれてありがとう」

 あの時の言葉嬉しかったよと俺に向けられた笑顔は以前と同じ元気いっぱいの笑顔だった


はるなラクーン


かずやフィッシュ

 インターネットのオカルト系サイトに願い魚に関する記事が載っていた、一見ただの鮮魚にしか見えないそれを願いを強く思いながら丸呑みにすればその願いが叶うという代物だ
 その話だけを聞けば誰もが喉から手が出る程に欲しがるだろうがこの記事には恐ろしい続きが存在したのだ、願いが叶った人間はその願いに対する対価を奪われるという
 願い魚に奪われる対価は人によって違い、その人間にとって願いと同等の価値がある物を奪っていく、ある人は脚力を得るために目玉を失い、またある人は大切な人を救うため己を犠牲にした
 その記事を書いた人は願い魚を見たことがないそうで信憑性は定かではないが火のないところに煙は立たぬと言うくらいだ、冷蔵庫に入っているであろう先ほど買ったパックを思い出す、確かに他の鮮魚とは違った姿形の青魚で願い魚と書かれていた、あれが本当に願い魚かどうか分からないが信じてみる価値はありそうだ


 今思えばこの時にはすでに願いが叶うという魅力的な言葉に俺は取り付かれていたんだ


 とりあえず思いついた部分だけ


ひょうがクラブ

 ゴッドエデンでの調査が終わり久々に帰った北海道は骨の髄まで凍ってしまうのではないかというくらい寒かった。家に帰ってコタツで温もりたい一心に足早に北ヶ峰を後にする。
 あの日以来幽霊であるアツヤに触れることが出来れば今では声が聞こえる上にはっきりではないが目視することも可能となった。元々霊感が備わっているわけでなかったからアツヤ以外のものは見えないし触れることも出来ない。
 さらに言うならば、アツヤでさえ目視できるのも日によって限られていて調子の悪いときでは声すら聞くことが出来なかった。そんなんだからゴッドエデンにアツヤが付いてきたいと言い出したときは困りに困った。もし途中でアツヤを見失いでもしたら色々大変なことになると説得したのは今ではいい思い出となるのだろう。
 そのアツヤが待っている家に帰る前に、一度白恋中サッカー部に寄っていこう。解任させられてからまともにサッカー部へ行っていないことを思い出したからだ。



「何でもっと早く知らせなかったんだ!」
「先輩とは対立していたし。それに、先輩はあの後すぐに調査だとか言ってどこか行ったじゃないですか」
「うっ」

 的を射すぎて反論することができなかった。確かにあの時は白恋中を解放できたこととフィフスセクターの調査で頭がいっぱいだったので雪村と落ち着いて話す時間がなかった。
 雪村を放置して怪異の侵食を許したのは僕の責任でもあるのでそれを果たすべく思案する。
 といっても思案する時間なぞ一秒にも満たなく、結論は出ていた。



「おもし蟹ね」
「おもし、がに……?」

 毛ガニやタラバガニ、ズワイガニならば食べたことがあったがおもし蟹は聞いたことも無かった。彼女の話によればおもし蟹は行き遭った人間の願いを聞き入れ、思いと共に重さを受け入れる怪異らしい。
 体重を奪われると精神的な苦痛を感じなくなるが共に感情をも奪い、仕舞いにはその存在さえも奪ってしまう厄介な怪異なので気付いたのがこの段階で良かったと。最悪雪村の存在そのものが消えていたかもしれないと考えると背筋が凍った。

「明確に異変が起きたのはいつからかわかる?」

 僕が北海道に戻った時にはもう重さというものが殆ど無くなっていたのでそれよりも以前ということになる。彼女が信頼の置ける人物であることを理解した雪村は素直に全てを話した。
 
 僕がフィフスセクターに監督を解任させられ白恋に近づくことすら出来なくなって数日、雪村が僕に裏切られたと思ったその時に身体が軽く感じたのだという。しかしほんの一瞬だったため気にもとめず練習をしていたようだ。
 それから徐々に体重が減っていったことに気付いたが特に体つきや筋肉に異常は無かったので靴下やリストバンドなどにウエイトを仕込んで失った分の重さを誤魔化していたのだと答えた。
 元々感情をあまり表に出さない子だったから感情を奪われたことすらも周りの子たち同様気付かなかったみたいだ、何かを考えようとしなくなったことすら考えなかったようだ。
 すべてを静かに聞いていた彼女はその時蟹に行き遭ったのだと言う。僕に裏切られたという辛い思いをおもし蟹が引き受けたのだと説明してくれた。


 とりあえず書きたい部分だけ


名前フライ

 生憎彼女は教員の研究発表会なるものがありそれに向けて忙しいために顔を出せずにいた、しかしながら彼女は持ち前の情報収集能力を駆使し名前に取り付いている怪異のことについて調べ上げることに成功していた
 名前に取り付いている怪異の正体は四月蠅という

「しがつ、ばえ……?」


・四月蠅退治後

「そういえば名前……」

「言ってなかったかしら。名前よ」

 そう言って笑った名前さんの顔は無邪気な、年相応の女の子の顔だった

 絵に描いたような大団円を見せた、ご都合主義もいいところだと言う者もいるかもしれない、だがそんな終わり方もたまには悪くはないと思わないか


 最終的にこういう終わり方にする予定だった
 基本オムニバス形式で物語は進み、夢主は自分のために色んな人の怪異を解決していって、結果的に彼女に助けられた(例の如く夢主は“君が勝手に助かっただけ”精神の持ち主)子たちが集まって何とかして夢主に憑いている怪異を退治するお話にしたかった
 ちなみにあつやマイマイでの“知り合いの少年”は多分照美のことだったはず(忘れた笑)




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