【西洋ツツジと呼ばないで】(吹雪士郎/inzm/アザレアの花IF続編/パラレル)
もしも悲しい運命がなかったら――
――私は何を信じるの?
西洋ツツジと呼ばないで00
「アザレアの花」の続編のようなIF連載です。
完全オリジナルストーリーで吹雪士郎落ち。
ヒロインは前世の記憶なんてない普通の女の子として生まれ、吉良ヒロトはサッカー留学先で事件に巻き込まれず、誰も親兄弟を失わなかった世界での物語。
モチベーションが保てなかったのであえなく打ち切り。続きを書くならアレスの天秤沿いで書きたいです。
西洋ツツジと呼ばないで01
目覚ましの音と、カーテンの隙間から漏れる朝日が、今日も私を眠りから覚ます。
まだ寝ていたい気持ちを抑えつけベッドからのそりと起き上がる。軽く伸びをしてから深呼吸、いつもと変わらない朝だ。
「お父さんお母さん、おはよう」
「おはよう名前」
「おはよう、先に顔洗ってらっしゃい」
「はーい」
制服に着替えて一階に下りれば食卓テーブルで新聞を読んでいるお父さんと、朝食を作り終えお弁当を詰めているお母さんが私を迎えてくれる。
しかしそこに弟の姿はなく、朝食も減っている様子はないのでいつもの寝坊だろう。
母の言いつけ通り洗面台で顔を洗い、寝癖の付いた髪を櫛で梳かしてからいつものようにシュシュで纏めれば完成。いつもの私の出来上がり。
それからやっと食卓テーブルに並んだ朝食に手を付ける。今朝はレタスとベーコンエッグの乗ったパンと、牛乳。
もそもそとサンドイッチを咀嚼しながら今日の朝練の内容を考える。私は、弟が主将をしているサッカー部のマネージャーをやっているので練習メニューを考えるのも私の仕事なのだ。
サッカーは弟と数回やった程度であまり上手くはなく、入部したての頃はルールなんかもまったく知らなかったけど、今ではすっかりサッカーに詳しくなった。
しかし私ももう三年生となり高校受験を控えた立派な受験生。あと半年くらいしか籍を置いていられないけれど、最後の最後までしっかりと部員のサポートをしたい。
朝ごはんのパンに噛り付きながらテレビでニュースをチェックするのも朝の日課。
テレビでは吉良ヒロトという、弟と同じ名前のサッカー選手が活躍している旨のニュースが流れている。
ただ名前が弟と同じというだけなのになぜか私まで嬉しくなって、そして少しだけ鼻高々な気分だ。
丁度私が朝食を食べ終わった頃にヒロトが慌てて階段を降りてきて朝の挨拶をする。私もそれに返事をしてからカバンを持って玄関へ向かう。
「ヒロト、早くしないと置いてくよー」
「待ってよ姉さん!」
「待たなーい」
くすくすと笑いながら、この間買い換えたローファーを履いて玄関を出る。いってらっしゃいという両親の声に、行ってきますと私も返事をした。
そしていつもの通学路を、なるべくゆっくり歩き始める。
数分もしないうちに慌てた様子で家から飛び出してきたヒロト。漫画みたいにサンドイッチをくわえながら走ってくるヒロトを見て、くすりと笑う。
「ふふっ、ヒロト寝癖そのままで来たの?」
「だって、姉さんが先に行くから……」
ヒロトは寝癖を直そうとしているが、まったく見当違いな場所を触っているので思わず笑ってしまった。
仕方ないので私が寝癖を直してあげるとヒロトは頬を少し染め、ありがとうと微笑む。
それにつられるように私も笑みを浮べ2人で肩を並べて登校する。
眩しいくらいの朝日が町を照らしている良い朝だった。
西洋ツツジと呼ばないで02
包丁がまな板に当たる音と味噌汁の良い匂いが、僕の意識を目覚めさせた。
目覚まし時計を頼らなくても起きられたのは今日の朝練がないからだろう。いつもより遅い起床となったが、瞼を上げればいつもと変わらない朝。
あくびをかみ殺しつつ、パジャマから制服へと着替える。週末にクリーニングに出した学ランは糊が効いているのかパリッとしていて入学式の日を思い出す。
「士郎おはよう」
「おはよう、朝ご飯出来てるわよ」
「父さん母さん、おはよう」
アツヤはまだ寝ているらしく、朝食を食べているのは父さんと母さんの二人だけ。僕もそれに加わって朝食に手を付ける。
今朝はご飯と味噌汁に焼き鮭といった和食の代表みたいな料理で、とても美味しかった。
「アツヤ起きなさーい!」
「ふぁーい」
二階に向かって母さんが大きな声で言うと、少し間が空いてから間の抜けた返事が返ってくる。
それから暫くして、アツヤが学ランのボタンを留めながら降りてくる。
寝ぼけているせいかボタンを掛け違えていることにも気付かず、僕が指摘してやるとようやくきちんと着ることが出来た。もう中学生だというのに、世話の焼ける弟だ。
ようやく覚醒したようで、アツヤは時計を見やって慌てて朝食に手をつける。それを母さんがしっかり噛んで食べなさいと注意する。
こういったやりとりは毎朝のことなのに、思わず笑ってしまう。
「ほらアツヤ、早くしないと置いてくよ」
「げぇっ。少しくらい待ってもいいじゃん!」
「アツヤを待ってたら遅刻しちゃうよ」
「ケチ!」
「何でケチになるの?」
にっこりと笑顔を張り付ければアツヤは顔を蒼くして冷や汗を流しながら謝ってきた。はは、本当に世話の焼ける弟だ。
「吹雪くんおはよう!」
「おはよう」
アツヤと別れ自分の教室に入った所でクラスメイトに挨拶をされたのでいつものように笑顔で返す。
それから、早くサッカーがしたいなぁと考えながら少し退屈な授業を受けて、放課後を待った。
そして放課後、隣の学区にある中学校のサッカー部との練習試合が始まる。
得点は一対一のまま後半戦へ。相手のシュートを函田君が止めて、攻めあがもボールを奪われる。
一進一退の攻防が続く中、ボールは相手のストライカーへ渡ってしまった。
「華麗にシュートを決めてやるぜ!」
「させないよ……アイスグランド!」
「吹雪くんナイスブロック!」
「アツヤ!」
「任せろ!」
ディフェンダーの僕が相手からボールを奪いエースストライカーであるアツヤへとパスをする。その勢いのまま、アツヤはエターナルブリザードで点を入れた。
同好会から部活動になったばかりでの、初めての練習試合はアツヤの活躍で勝利を収めた。
「兄ちゃん、さっきはナイスパスだったぜ!」
「アツヤも、ナイスシュートだったよ」
「勝てたのは吹雪くんとアツヤくんのお陰だべ」
「ううん。僕とアツヤだけじゃ勝てなかったよ」
アツヤの活躍と言っても、僕や他のチームメイト、みんながそれぞれの役目をしっかりと果たしたからの勝利だと思っている。
そのことを素直に言えばみんなも素直に照れいて、言った本人である僕も何だか少し照れくさい。
部活動に成ったとはいえメンバーもギリギリの人数で、男女混合のチームなのでフットボールフロンティアなどの公式試合には出場出来ない。
それでもみんなで楽しくサッカーが出来ていて僕は幸せだ。
家族がいて、友達がいて、こんな当たり前な日々が時々堪らなく愛おしくなり、充足感でいっぱいになる。
西洋ツツジと呼ばないで03
今日のホームルームは半年先にある修学旅行について。行き先は北海道に決まったようで、クラスのみんな嬉しそうに班を決めている。
例に漏れず私も修学旅行が楽しみなのだが、それとは別に北海道という言葉に引っ掛かりを感じていた。
こう、胸がざわざわして、何が何でも行かなければという使命感に襲われたのだ。
とりわけ北海道が好きだとか特別思い出がある訳ではないのだけれど、行かなければ一生後悔するような、そんな気がする。
「北海道……」
「ねぇ名前、一緒の班になろ!」
「あ……うん。私も誘おうと思ってたところなの」
「それにしても北海道だなんて私立様々って感じだねー」
親友ともいえる存在である美香が、私の前の席の子が他の子の所へ行っていて不在なのを良いことにその席を陣取る。何事も迷いがないのが彼女の長所であり短所でもある。
彼女の言葉通り、これが公立中学だと隣県くらいだろうから、このときばかりは私立中学で良かったと思う。
美香を筆頭に、残りの班員もすぐに集まった。みんな仲の良い人たちばかりで、それだけでも修学旅行の楽しみが増す。
先生に班員が決まった旨を報告し、私の班は自由時間の計画を立てることにした。
「時計台見て、テレビ塔登って、ファクトリー行って……」
「ねぇねぇ、晩御飯はやっぱりカニかな!?」
「もう、美香ってば食い意地張りすぎ!」
「だって〜、北海道って言ったら海の幸じゃん?」
「そうだけどさぁ。もー、名前も何か言ってやってよ」
「えっ……ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「大丈夫? あれだったら保健室行く?」
「部活頑張るのはいいけどぶっ倒れて修学旅行行けなくなるなんてのはやめてよね」
「うん、大丈夫。ありがとう」
北海道に対するもやもやは消えないけれど、このまま考えこんでいても答えが見つかるわけでもなく。今は目の前にある白紙の予定表を埋めることに集中した。
「そうか、名前の修学旅行は北海道か」
「玲奈はお土産何が良い?」
「俺はカニで!」
「晴矢には聞いてませーん」
放課後の部室で、日誌に本日の記録を書きながら玲奈たちと談話。話題は私の修学旅行について。
部活終わりのこの時間はこうして着替え終わった部員たちと他愛のない会話をするのが恒例となっているのだ。
茶々を入れる晴矢をヒロトに任せ、玲奈を見る。晴矢の後ろで風介が何か悩んでいるみたいだけど、あの様子だと大した悩みじゃなさそうなので放置。
「玲奈は何かほしい物ある?」
「特には。名前が選んでくれた物なら、何でも嬉しい」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ……ふふっ。玲奈には飛びきり良いの買ってくるね」
「ああ、楽しみにしてる」
遠慮ではなく心からそう思ってくれているのだと分かっているから私は自然と笑顔になる。玲奈は、照れたように微笑み返してくれた。
丁度日誌も書き終わったので、誤字脱字がないか確認して日誌を閉じる。すると今まで悩んでいた風介が口を開いた。
「名前、わたしはとうきびモナカがいい!」
「今までそんなことで悩んでたのかよ!? くだらねぇ!」
「下らないとは何だ。わたしにとっては死活問題だ」
「……ねぇ風介、とうきびモナカって何?」
「知らないのかヒロト、とうきびモナカは北海道限定のラクトアイスなんだ」
「へぇー」
「……名前、さっさと帰ろう」
「ふふっ、そうしよっか」
こんな下らないやり取りも私にとっては掛け替えのない日常であり、幸福であった。
西洋ツツジと呼ばないで04
いつの間にか、アツヤは名ストライカーとして僕は名ディフェンダーとして、二人とも道新の片隅に乗るくらいは有名になっていた。
両親は仲が良いし祖父母も元気だ。友達もたくさんいるし、勉強はちょっと苦手だけどアツヤやサッカー部のみんなとサッカーをしているのも楽しい。
充実している毎日を送っているのに、時々、妙に空しくて何かが足りないような気がするの何でだろう。
月並みな表現をすると、胸に穴が開いているような、そんな感覚だ。
「まただ……」
「……兄ちゃん? どうかしたのか?」
「ううん。なんでもないよ」
その症状が出て来たのはここ数ヶ月くらいのことで、ふとした瞬間に寂しさが襲ってくるのだ。
それはご飯を食べている時だったり、勉強をしている時だったり、はたまたサッカーをしている時だったり。
総じて僕が充足感を得ている時にばかり、それは心の隅に穴を空けてゆくのだ。
その穴はどんどんと広がってゆき、そのうち僕の心をすべて消してしまうだろう。
西洋ツツジと呼ばないで05
※ここからは思いつくまま書き溜めたやつです
姉さんがマネージャーになってくれたのはうれしいけど姉さん目当てで入部しようとする輩が増えたのは腹が立つ。
その晩、私はおかしな夢を見た。
どこか道場のような場所で、雷門と書かれたユニフォームを着た私が小さな男の子を抱いている夢だ。
『許せないよ、でもあそこで私が捨てられていなかったら今の私はいないし、木暮くんとも出会ってなかったと思うから』
男の子の目からは大粒の涙がこぼれ、嗚咽が漏れはじめたところで目が覚めた。
音声が妙にはっきりしていて、色彩も鮮やか。まるでどこかで見聞きしたような既視感さえある不思議な夢だった。
しかし、こんな道場行った覚えもなければ雷門というサッカーチームも、あの男の子のことも知らない。夢の中の私は誰を許せないのだろうか、木暮くんとは一体誰のことなのか。
結局は夢の話だと割り切って、深くは考えないようにしていた。
・修学旅行
こう言っては失礼だが、サッカー部へのお土産は質よりも量があればいいのでなるべく沢山入っていて値段の安いものを選ぶ。
北海銘菓の詰め合わせを手に取り内容量と部員数を照らし合わせ、二つ購入することに決める。
老夫婦が信号のない横断歩道を渡ろうとしていたので、お節介かもしれないけれど手を貸さずにはいられなかった。
私が手を挙げて老夫婦と共に横断歩道を渡る。
「あらありがとう、優しいのね」
「そんなそんな。困ってる人を助けるのは当たり前です」
否、それだけではない。この人たちを助けなければ私は後悔すると感じたからこそ私は動いたのだ。
でも何故そう感じたのかは分からない。私の祖父母に似ている訳でもないようだ。最近の私は何だかおかしい。
「貴女、私たちの孫に似ているわ」
「優しくて、正義感の溢れる子なんだ」
「そうなんですか。何だか嬉しいです」
ふわりと、どこか懐かしいような匂いを思い出した。
「兄ちゃんどうしたんだ? おい!?」
アツヤの言葉もろくに耳に入らず僕は踵を返していて、次の瞬間には初対面以下の、ただ偶然すれ違っただけの女の子の腕を掴んでいた。
「? えっと……何か?」
「……! あ、いや、知り合いに似てて……ごめんなさい、人違いでした」
曖昧な笑みを浮かべてその場を取り繕うも、生憎僕には彼女に似た知り合いなどいない。
赤い髪を両サイドで跳ねさせた彼女はとても綺麗な碧色の瞳をぱちくりさせて微笑んだ。
「そうなの? ふふ、その子に会ってみたい」
どきり。柔らかく微笑む彼女に僕の胸が高鳴る。
それと同時にざわざわとした不安が胃の底から這いあがってきた。
胸のざわつきは収まらない。このまま手を離してしまったら、一生後悔する気がした。
「……ねえ、」
「? まだ何か用?」
「どこ行く予定なの?」
「ファクトリーだけど、それがどうかした?」
「……ファクトリーか。あそこ案外分かりにくいんだよね」
「あー、3つに別れてるし駅からだと迷うかもな」
・ここで彼女と離れてはいけない気がした士郎が何とかして彼女を目的地まで案内することに。
「でも何だか不思議な気分、貴方たちと初めて会った気がしないの」
・名前も何だかんだで吹雪兄弟との不思議な縁を感じるがその正体は知らないまま二人と分れる。
西洋ツツジと呼ばないで06
・プロット
世界設定としてはパラレルワールド。故に元となるアザレアの世界線もちゃんと存在している。
それぞれ吹雪兄弟が中二、名前が中三になるまでは幸せな家庭で育つが、ある日ちょっとずつ違和感を感じるようになる。
その違和感は不思議な夢(アザレア世界線で起こった出来事)であったり、知らないはずの単語やセリフが口を突いて出てしまったり。
そんな中名前の修学旅行先が北海道に決定する。
お互い何も知らないし気づかないまま名前の修学旅行で初めて出会い、本能的に“この人と離れたら絶対に後悔する”と感じた士郎がナンパ紛いに彼女の案内役を買って出る。
(その時名前が偶然助けた老夫婦はアザレア世界線で名前を引き取った人たち。孫云々のセリフが伏線)
修学旅行が終わってから名前と士郎の違和感はどんどん大きくなり、ついには夢にお互いが出てくるようになる。
修学旅行編の数週間後、白恋中サッカー部が雷門中サッカー部と練習試合をすることとなり吹雪兄弟が上京。
その時ちょうど名前がエイリア学園サッカー部の3トップと玲奈と敵情視察に来ていて、吹雪兄弟と再会。連絡先を交換し、吹雪兄弟は北海道へ帰る。
遠距離でのやり取りが始まり、どんどんお互いに惹かれていく二人。
ある日、名前がいつも以上にリアルすぎる夢を見て気づく。これは別の世界線の自分なのだと。
時刻を同じくして士郎も気付く。もう一つの世界では僕は一人ぼっちだったのだと。
でもその世界線では名前がずっと傍にいてくれたことも知り、微かに芽生えた恋心が確かなものとなる。
そんで何やかんやあって二人は結ばれる。
(告白するために士郎が一人で上京し、仲睦まじくカフェにいる涼野と名前と見かけ、この世界の自分は彼女にとって必要のない存在だと勘違いする。真実は涼野に恋愛相談してただけ。というすれ違いも欲しい)
最終話では、士郎は名前と同じ高校を目指して勉強中、とかだったら良いな。
(もしくはアザレア世界線に気付いたのがアツヤとヒロトだけ。という展開も面白いとか思ったり。)
モチベーションが保てなかったのであえなく打ち切り。
続きを書くならアザレア世界線前提でアツヤと吉良ヒロトが生存確定のアレス沿いで書きたいです。
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