【pdl×anst】(赤羽・真波/pdl×anst/新開妹主/anst沿い)

夢主設定

新開名前
 5月2日生まれ、160p、52.3kg。得意科目は地理、苦手科目は特になし。趣味特技は山登りと岩盤浴。
将来の目標:プロロードレーサー
過去に優勝したレース数:二桁
付いた二つ名:山の妖精(ヒルフェアリー)
学業成績:一学期中間テスト学年1位
暗殺成績:クラス最下位(本人が暗殺に消極的なため)

 弱ペダと暗殺が混ざっている世界に転生した女の子。双方の知識なし。
 二つ上の兄と一つ下の弟がいる(そのため真波と同い年)。ロード乗りのクライマー。愛車はサーヴェロ。
 良い坂を見つけると走らずにはいられないクライム中毒であり、それ故の遅刻常習者。旧校舎までの山道を気に入っているためE組になったのを寧ろ喜んでいる。
 基本的に身体能力が高く、あらゆるスポーツににおいて活躍するタイプ。クラスから付けられたあだ名は「チャリ中毒」。席は赤羽の左隣で奥田の後ろ。


01

「新開、お前は成績に関しては文句なしの素晴らしい生徒だ」
「はぁ……」
「だが如何せん遅刻が多いぞ。いくら成績優秀とはいえ許容の範囲を超えている」
「……」
「これ以上遅刻が増えればE組行きだってあり得るんだぞ?」

 その言葉の真偽はともかく、脅し文句のつもりだったのだろう。
 成績主義であるこの学校にはカーストが存在していた。上を作るのではなく最底辺を作り、そこに属している者はこの学校では最悪な扱いを受けるというもの。その最底辺がE組、通称エンドのE組。
 名前の成績は良いから担任も多目に見てくれていたようだがそれもそろそろ限界らしい。
 だからこそ彼女を職員室に呼び出して先ほどの脅し文句を言ったのだ。
 普通の生徒であればE組なんて行きたくないはず。授業を受ける場所は山の上にあるボロボロの旧校舎で、本校舎に通っている生徒からはゴミくずのような目で見られ、二学期の終わりまで本校舎に戻らなければ高等部への進学資格をも失う。
 他にもE組にとって不利なことは沢山あり、誰しもがE組に墜ちるのは嫌だと言う。

「先生、E組って本校舎前の道をまっすぐ行った山の上にある建物ですか?」
「そうだ。毎日わざわざあんな山の上まで登下校したくないだろう? 分かったら明日から遅刻しないように気を付けなさい」
「はーい。気を付けまーす」

 そう返事はしたものの、彼女の中ではもう既に答えが出ていた。
 毎日わざわざあんな山の上まで登下校したい程にはロードバイク並びに山を愛している。否、依存していると言うのが正しいのだろう。



「新開、昨日俺が言ったこと覚えているか?」
「はい。今日も遅刻をしたらE組行きなんですよね」
「分かってて遅刻したのか……だとすれば俺にはもう手に負えん。明日からお前はE組だ。今日はもう帰っていい」
「はーい」

 それは彼女の何とも思っていない顔をこれ以上見たくないためか担任は溜め息混じりに、もう行けと手を払う。
 彼女の去り際に呟かれた、せっかくこの俺が目をかけてやっていたのに失望だ、という言葉を聞き逃さなかった。
 別段、彼に目を掛けられていた自覚もなければ恩を感じたこともない。勝手に期待をして勝手に幻想を抱いて勝手に失望しただけだ。
 彼女にとっては鬱陶しいだけに過ぎなかったそれらから解放されたという清々しさが勝っている。
 E組についての説明は明日行った時にということなので、今日はもう帰宅することにした。
 教科書類は毎日持ち帰っているため彼女のロッカーには何も入っていない。上靴さえ持ち帰れば良いだろう。
 帰りすがらに山に登ろうと意気揚々に歩き、下駄箱から靴を出した時だった。彼女の名を呼ぶ声に、振り返れば同じクラスの浅野学秀がそこにいた。

「今し方先生から聞いたよ、E組に行くんだってね」
「うん。遅刻常習者には当然の結果だね」
「でも新開さんの成績なら多少遅刻が多くても大丈夫なんじゃないかな。それにE組に行ったら高等部に進学出来なくなるし……なんだったら俺から先生に言えば」
「ごめんね」

 その一言は普段の彼女からは想像もつかない、とても冷たい声だった。

「そもそも興味ないんだよね。この学校にも、ここの高等部にも」

 彼女の志望校は、彼女の兄が進路を決めた時に決まっていた。ロードバイクの名門、箱根学園だ。
 箱根学園に入学するためにはそれなりに高い偏差値が必要であり、クライムに適した山が近くにある進学校というだけで選んだ学校に過ぎない。
 あくまで彼女の目標は神奈川の箱根学園ただ一つなのだ。


02

「明日のレースに備えたいんで私そろそろ帰ります」

「だって、明日のレースは男女混合アンダー17だから、隼人くんと悠人と三人で走れるんだもん」



「勘違いしないで。私は殺せないから諦めてるんじゃない……殺す気がないから何もしないだけ」


「私は地球の未来にも百億円にも貴方の命にも興味なんてないんです。だから貴方を殺しません」


「私の家族に何かするというのならば、私は貴方を殺します」


「私は兄が好きです。それと同じくらいに弟も好きです。二人とも、愛おしくてたまらない」

 変な誤解を生まないためにも、兄弟愛の範疇であることを付け足しておく。
 現に目の前の生物はピンクにしていた顔色を元に戻している。何を想像したんだこの野郎。


「あの二人が生き生きと走っている姿を見るのが何よりも好きなんです」

 それは一種の義務感でもある。この世にたった二人しかいない兄と弟なのだから彼らを愛することが当たり前である。それと同様に父母を愛し、慈しむことが自然であるように努めた。
 前世の自分に成し得なかったことをするのが罪滅ぼしになるのだと信じて。

「本当に、二人の未来を守らなければならない時が来たら……私は私を道連れにしてでも貴方を殺します」

「先生のせいで二人がロードを続けられなくなるとしたら、私は貴方を躊躇なく殺すでしょう。それが私の愛です」

 それが彼女の贖罪である。


二度目の時間

 新開名前は一度死んでいた。他殺だった。
 彼女を殺めたのは実の父親で、その父親もまた死亡している。けれども心中なんて可愛らしいものでもない。


 まだ若かった母は彼女を身ごもり、行きたかった大学にも行かず結婚した。それでも良かったのだ、愛する夫と順風満帆に暮らしていたのだから。
 娘が生まれ、すくすくと育ち、中学に入った頃、父親がリストラされたことにより暮らしは百八十度変わってしまった。
 父は働かずに飲んだくれ、暇さえあれば母に暴力を振るう毎日。母は一家を養うため朝から晩まで仕事をする。
 それでも母親は前のように優しい彼に戻ってくれると信じ離婚は考えなかった。
 娘である彼女もそう信じて生きてきた。良い高校に入って、良い企業に就職し、母を楽にさせようと必死だった。そのために毎日勉学に励み就職に強い高校に入学し、上場企業の内定も貰った。
 内定報告を両親は喜んでくれるだろうと顔を綻ばせ帰路についた彼女を、絶望が襲った。

 家に入ると青白い顔で倒れている母と、酒瓶を手に佇む父の姿。
 全てに裏切られた気分だった。

 聡明な彼女は瞬時に情況を把握しキッチンへと向かう。目的はただ一つ。それに気付いた父親もさせまいと彼女を追いかけ瓶を振り上げる。
 使い慣れた包丁を手に取り、父親だった人間の腹部に力の限り突き刺した。数秒後、彼女の頭に強烈な一撃が与えられ、そのままま意識を失った。



 輪廻転生なぞ信じていなかったが故に二度目の人生の訪れは予想外であり、また、あまりの早さに呆れてすらいた。
 彼女が人生の幕を閉じたその日から、再び命を宿すまでの所要時間は三分と満たなかった。命日と誕生日が同日なのだ。
 つい数分前まで当たり前として使っていた名前を捨て、新開名前という新たな名を授かった。
 父母に祖父母、二つ上の兄、全てに祝福されながらこの世に生まれ変わった。一年後にはそこに弟も加わり、三兄姉弟は明るく健やかに育てられる。
 予期せぬ転生にちぐはぐな心身にも関わらず彼女の順応は早く、それが当たり前であるように立ち振る舞い、人生を享受しているように見せた。
 彼女は、実の父親を殺めた罪を償うように今の人生を精一杯生きている。この人生は贖罪だ。

 以上の理由から彼女には人を殺す資格がないのだ。

 父親を殺した彼女にとって、これ以上誰かを殺すという行為は手に余る。例え相手が人間であろうとなかろうと、許容を超える人数なのだ。
 いくら徳を積んだとてそれは変わらない。これ以上誰かを殺めばならない時が来たとき、それは彼女の終わりを意味する。


04

「先生、城作りましょう、小田原城」
「新開、堂々とサボるな」
「だって、ロードに不要な筋肉付けたくないんですもん」


「筋肉って重いから山登る時のロスになっちゃうの」


「私はナイフを握るくらいならハンドルを握ります」


「めんどくさ……こんなことなら山登りに行けば良かった」


「殺せんせーは地球を消すつもりのくせに私たちの才能を伸ばそうとする。それって矛盾してません?」

「地球を爆破したいのなら直ぐにでもすればいいのに、貴方はそうしなかった。それどころかわざわざ月を爆破して見せ、自ら正体を明かした。しかも地球爆破まで一年間という猶予を付けてE組の担任になり、生徒たちに暗殺の権利を与えて自らを殺させにかかるなんて、よっぽどのマゾですよ」

「でもね、先生。……私には、そこまでしてでも先生がE組の担任に成らなければならない理由があるのだと思えてならないんです。貴方に月を爆破させるに値する退っ引きならない大切な理由が」

「例えば……大切な人との約束、とか」
「!」

「それとも、先生は来年になったら誰かに殺されるつもりだったりして?」


「クラスで協力し合って暗殺する場合は参加します。でも私個人として先生を殺すつもりはありませんので」


 ロードバイクに乗っている時だけは、特に山を上っている間は他の事を考えなくて良い。その一時だけ、彼女は心安んずることが出来るのだ。


05

「例えば道路の舗装が剥がれていたり、例えば何気なく転がっている小石や砂利、例えば枝から落ちてくる葉っぱ……これらが次の瞬間にはどんなロスに繋がるかは分からない。一秒……いや、コンマの世界でロードレースの勝敗は決まる。だからこそ私は天候や路面状況などを瞬時に把握して最適なルートを導き出しているんです。よりロスがなく、より早くゴール出来るように」


「元々外部受けるつもりだったし、別に困ることなんて無いなぁ……寧ろ山上り放題の遅刻し放題?」
「うにゃ!? 遅刻はいけません!」
「善処しまーす」
「名前って外部受けるんだ。どこ?」
「神奈川の箱根学園ってとこだよ。はや……お兄ちゃんが通ってるんだ」


「私、外部受験なので、この学校とは進度が違うんです」

「箱根学園は」



・山の上で倒れている真波に飲み物をあげるはなし

「はい、どうぞ。中身ポカリだけど」
「!」

「ぷはっ。ありがとう、助かったよ……」
「一人で山に登るときは少し重いけど多めに持ってきた方がいいよ。自販機がある山は少ないからね」
「うん。今度からはそうするよ!」


「何かこう、生きてる! って感じがするんだよね」
「分かる! 登り切った後の達成感とか生きてて良かったって感じるもの!」



「そうだ、良かったら連絡先交換しない?」
「もちろん!」

「真波山岳君……すごい、クライマーに成るために名付けられたみたい。良い名前だね」
「名前さんも良い名前。名前さんにぴったりだ」
「ありがとう」


06

「赤羽君が、自分を殺そうとしたから」
「自分を殺す……?」
「……自殺は自分自身を殺す行為だよ。立派な殺人だよ」


「あの時の私と同じ」

「殺人者は私だけで十分」




「ロードバイクって高いんだよね?」
「うん。一回盗まれたこともあるよ」
「えー!? 大丈夫だったの!?」
「うん」

 まだ私が二年生だった時、セキュリティのしっかりした学校だからと油断して鍵を一つしか掛けておらず、それが原因で愛車が盗まれたことがあった。
 外部犯かとも疑われたが防犯カメラには制服を着た男の子が私のサーヴェロを持って行く姿がはっきりと映っていたのだ。
 犯人は三年生の男子生徒で、小遣いほしさの犯行だったそう。金に変わる前に犯人が特定できて良かった。
 ロードバイクが高価であると知りながら学校のセキュリティを過信し警戒を怠った私にも落ち度はあった。しかし、結局は盗んだ方が悪いのだ。
 成績主義な学校と言えど罪を犯した者をそのままにしておく訳がなく、彼のE組行きが決定するのは早かった。
 その事件以来見つかりにくい場所にGPSを付けるとこにし、鍵の数も増やした。このクラスに来てからは外部の人間を気にして教員室に置かせてもらっているから大丈夫だろう。

「教員室に置かせて貰ってるし、ちゃんと鍵3つにGPSも付けてるから大丈夫」

「それにこのクラスにそんな人いないでしょ?」


「あれ、名前ちゃんは……」
「いつも通り山登りだよ」
「成績優秀な素行不良が羨ましいよ……」


「名前ちゃん、胸大きいよね……羨ましい」
「そう? 私はあげたいくらいだよ。重いし、ロードには邪魔だもん」
「へぇ、重いんだ……私もその重さを体験したいもんだよ……」
「えっと……何か、ごめん」



「この東堂って人は?」
「東堂さんは私の憧れの人なの」

「その人が好きなの?」
「いんや。東堂さんの登りは好きだけど、本人はね……ちょっと……」



・隼人が兎をあれした

「命って儚いね」

「力のある者がちょっとその力を使えば弱い者は簡単に死んじゃうんだから……」

「代われるものなら私が」

「きっと殺せんせーも」

「私は隼人君に何をしてあげられるんだろう?」


・鷹岡

「名前は食べないの?」
「うん、次のレースに向けて節制中だから、甘いものは特に控えてる」


「“できない”んじゃなく“やる”んだよ」

「じゃあ私は“やらない”ってことで、帰ります」

「貴方は私の父じゃない。私の父は一人だけです」


「そこでこうしよう! こいつで決めるんだ!」

 そういって取り出したのは対先生用のゴム製ナイフ。烏間の選んだ生徒と鷹岡が戦い、一度でも彼にナイフを当てられたら烏間の勝利。
 素手とはいえ彼は空挺部隊に所属していた烏間の同期だ。素人に毛が生えた程度の実力しか持ち合わせていない彼らの勝ち目は少ない。

「お前が選んだ生徒ともう一人、俺の選んだ生徒とも戦う。二人とも勝てたらお前の教育が優れていると認め、訓練を全部任せて出てってやる」


「俺が選ぶ生徒は……お前だ!」

 彼の人指し指は名前に向いている。逆らった上に平手を避けたのが相当腹に来たのだろう。
 誰もが驚いた。暗殺成績が最下位の彼女が勝てるわけがないと方を下ろす。

「新開って暗殺成績最下位じゃん」
「対先生用のナイフだってあんまり使いこないせいのに!」


「使うナイフはこれじゃない」

 そう言って彼が鞄から取り出したのは本物のナイフ。鈍色に光るエッジは切れ味を物語っており、これを使えば人間なんぞ簡単に殺すことが出来るだろう。
 烏間も生徒たちも驚きと

 しかしこの戦いは鷹岡にとっては“処刑”であり他の生徒への“見せしめ”だ。


「この場合、私が彼を殺したら正当防衛になるのかな……」

 迷いのない、真っ直ぐな瞳は狂気すら感じる。

「殺せんせー、一つお願いがあります」


「万が一私のナイフが彼に当たりそうになったら助けてあげてください」



「貴方は私がこのクラスで暗殺能力が最下位だから、例えナイフを持っていようと余裕で倒せる。さっき避けたのはまぐれだと思いこんでいる。その“驕り”が貴方の敗因です」


「貴方の筋肉の動きと瞳の向きを見ていれば余裕で避けられます」


「そこ、滑りますよ」

 気をつけて、その言葉が鷹岡の耳に入り脳に伝達された時には既に彼の視界は傾いていた。
 鷹岡が背中を地面に打ち付けた時には、既に両手は彼女の足の下にあり、彼の腹上には彼女が座っていた。
 足を大きく広げている格好は少々はしたなくもあるが一暗殺者としては誉められるべき格好でもある。

「駄目じゃないですか。ちゃーんと足場の状態を確認しておかないと」

 笑顔のまま淡々と話す彼女のナイフが鷹岡の喉元に添えられたのだった。


「これってデスマッチでしたっけ?」



・プールの時間

「……山に上りたい」
「こんなに暑いってのによくそんなこと言えるわね。ちょっと異常よ?」
「何を!? 山は標高が高ければ高いほど山頂付近が涼しいんだよ! それに高ければ高いほど上るのが楽しいし!」

「先生! ちょっと走ってきて良いですか!?」
「うにゅあ!? 駄目に決まってます!」
「チッ」
「あっ、今舌打ちしましたね!? ちゃんと聞こえてますからね!?」


「筋肉質だから少し恥ずかしい」



・沖縄

「沖縄の離島か……ロードは持っていけなさそうだね」
「おいこら自転車脳」
「てへっ」


 二泊三日もロードに乗れないなんて、正直辛い。自転車脳と罵られても構わない、事実なのだから。
 それに夏休みには隼人君も帰ってくるし、悠人とヒルクライムレースに出る約束もしている。楽しいことが盛り沢山の中学最後の夏休み。

 正直クラスのみんなとの旅行は楽しみではあるが、節制中だから食事はあんまり楽しめなさそうである。


07

・名前と山岳、高一

 本日のレースで走る山道のスタートラインにて。真波と黒田の横でサーヴェロと共に立っているのは新開の妹である名前。
 彼女は女子であることから、インターハイに出場できない立場であり今回のレースに参加する意味は全くない。
 しかし彼女自ら、二人の邪魔をしないからとレースへの参加権を得たのだ。

「名前ちゃん、俺負けないからね!」
「私も、負けないよ」

 意気揚々とヘルメットを被る真波に、名前も愛車のタイヤを触り状態を確認している。
 俺は無視かよ、と黒田が内心で一人ごちているともうすぐスタートであることが知らされる。

「勿論、黒田さんにも負ける気ありませんから」

 三者三様のスタート体制に入ったところで名前の声が聞こえた。黒田がその言葉を脳で分解すると同時、位置について、と平部員が口を開いた。
 


 彼女の走りを見ていたレギュラーメンバーに、兄である新開は言う。

「女だからって舐めてっと驚くぞ」



「名前は速い」

「何だあの走りは! 全くブレがないどころか息一つ乱れていないではないか!」
「ギア切り替えるタイミングもばっちしダ」


「スタート直前にタイヤと地面を触っていただろ? あれでタイヤと路面の温度・状態を把握して、それに合わせた最適な走りをしてるんだ」
「そんなこと出来るんですか!?」
「出来るからやってるんだよ。しかも最早癖のレベルでだ」


 加えて、天候やダート情報
 
 例えば道路の舗装が剥がれていたり、例えば何気なく転がっている小石や砂利、例えば木の枝に留まっている小鳥、例えば枝から落ちてくる葉っぱ。
 これらが次の瞬間にはどんなロスに繋がるかは分からない。一秒、いや、コンマの世界でロードレースの勝敗は決まる。
 だからこそ彼女はタイヤの状態、天候、道路の素材、路面状況などを瞬時に把握して最適なルートを導き出している。ギアを切り替えるタイミングすら計算し尽くされているというのだ。
 よりロスがなく、より早くゴール出来るように。

「それを自然とやってるんだよ、あいつはさ」
「道路の素材なんて考えたことネェ……」
「小三の時図書館で一通り勉強してた」
「マジかヨ」
「我が妹ながら天才だわ」


「しかし、あまり楽しそうではないな」
「そりゃそうだろ。楽しそうに山登んのはお前や真波くらいだロ」
「しかしな、前に何度か名前と走った時はいつも楽しげだったのだ。実に楽しそうに上っていたのだ」
「名前は悔しいんだ。女に生まれたってだけで俺と同じレースに出られないのが」
「“俺と”って……シスコン」


「男の子より速いのに大会には出られないんだよ……ただ女ってだけで」


赤羽か真波落ちにしたかったけど途中で飽きたため打ち切り。



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