▼前略、頑張っている君へ(モブ職員/FGO)

 ※夢主≠ぐだ子


 名字名前様へ

 突然このような手紙をお許しください。偶然にも独りで涙している貴女の姿を見かけてしまい、居てもたってもいられず筆を執りました。
 聞けば我々の都合でここへ連れてこられたそうで、複数のサーヴァントと契約して人理を救うという重責背負わさてしまっている事、心苦しく思っています。けれど貴女に頼らざるを得ない状況なのは明確です。
 心が疲弊している貴女にこんな事を言う為に手紙を書いているんじゃなかった。すみません。忘れてください。

 私が伝えたいのは、貴女は十二分に頑張っています。人類の為に頑張ってくれてありがとう。ということです。

 私はほんの下っ端の下っ端に過ぎないけれど貴女が身体に傷を、心に傷を負いながら一生懸命に戦ってくれていることを知っています。
 魔術師の家系とは言え一般人として過ごしてきた貴女への当たりが強い職員がいることは勿論分っているつもりです。だからこそ貴女の事を陰ながら応援している奴もいるということを知ってもらいたかったのです。

 どんな言葉を書いても貴女のプレッシャーになるのだと分かっていますが、これだけは伝えておきたいのです。
 いつでも我々を頼って下さい。手伝える事なんてほとんど無いということも分かっています。それでも愚痴を聞いたり温かいココアを入れることくらいは出来ます。頑張っている貴女を労わせて下さい。

 どうか、貴女は独りじゃないということだけは忘れないで下さい。

 カルデアの下っ端職員より
 


 これは私がカルデアに来てから初めてもらった手紙だ。差出人の性別は分からないが綺麗な文字で書かれたそれは私の肩の荷をほんの少しだけ下ろしてくれた。
 読み始めた時は誰にも見つからないようにこっそり泣いていたはずなのに見られてしまっていたという自分の詰めの甘さに羞恥しつつ、最後の方になると感極まって泣いてしまっていた。

 人理修復は“やらなきゃいけないこと”、出来る人材が私しかいないのだから人類史の為“やるのが当たり前”。
 手紙にもあった通り一般人として生活していたとはいえ魔術師の家系の出で、しかも独学で魔術を学んだ身だ。出来て当然だというプレッシャーが重かった。
 他のスタッフの人たちだって頑張ってるのは知っているし彼らのお陰で安全にレイシフト出来るのだと自覚もしている。辛いのは、大変なのは自分だけじゃあないとも解っているつもりだったけれど、私は社会人一歩手前の、ただの大学生に過ぎなかった。
 だからといって別にちやほやして欲しい訳じゃない。英雄扱いだって要らない。ただの一言でいいから“頑張ったね”って、“大丈夫だよ”って言って欲しかっただけなんだ。
 だからこそ頼っていいんだと、弱音を吐いてもいいんだと、例え社交辞令だとしても欲しかった言葉が書かれていて。

 いつかのレイシフト先で衝動買いしたはいいものの使い道がいまいち見つからなかった鍵付きの小物入れに、その手紙を大切にしまって。心が折れそうになった時こっそり読み返しては勇気を貰っているのだ。


 と言うようなことをナーサリーやジャックらに話した翌朝、私の部屋の扉の丁度横の壁にダンボールで出来たポストが設置されていた。やったのは彼女らだろう。
 ダンボールの正面上部に横に長い穴があけられたそれは、絵の具で赤く彩られており穴の下にご丁寧にも拙い字体で“POST”と書かれている。子供の工作、だけど懐かしいその見てくれは焼却されている故郷を思い出させた。

「あ、マスター!」
「おかあさん!」
「マスターおはようございます!」
「ナーサリーにジャックに邪ンタ、おはよう。やっぱり、三人が作ったの? これ」

 ポストを指差せば三人はぱあっと笑顔になる。

「うんそうだよー! 上手いでしょ!」
「赤いアーチャーさんに聞いて作ったんです!」
「マスターの故郷では手紙を入れるのはこういう形のものだって」

 確かにそうなんだけど、これ郵便受けじゃなくて配達依頼用のポストだよ。なんて彼女らの努力を無碍にするようなことは流石に言えず、上手だねと素直に褒めてあげた。

「それでね、マスターへのお手紙を書いてきたからポストに入れに来たのよ!」
「え」
「わたしたちも書いたよ!」
「私も頑張って書いてきたので後で読んでくださいね!」
「……!」

 じゃーん、と色違いの可愛らしい封筒を得意げに見せてくる三人に、私は涙が出そうになった。例の手紙の件で触発されて書いてきたのだとしても私の為に手紙を書いてくれたという事実が嬉しかった。
 せっかく作ったポストには入れず私に直接手渡してくれた三人を力一杯抱きしめれば、彼女らも嬉しそうに抱きしめ返してくれた。

「ありがとう。宝物が増えちゃった」



 その日からポストには噂を聞きつけた他のサーヴァントやカルデアの職員たちからの手紙が投函され始め、ついには私の小物入れには入りきらない量になってしまうという嬉しい悩みを抱えることになるのである。

「……ん、あれ。ねぇ天草、これってもしかしなくても聖遺物ないし国宝級の文化財なんじゃ……?」
「気にしたら負けですよマスター」


 “人類最後のマスター”というプレッシャーに圧し潰されそうな夢主(ぐだーず含む)が少しでも気が楽になれるような手紙を送りたかった。
 日本と英語圏以外の鯖からの手紙は翻訳するの大変そう……。あと清姫からの手紙は量と愛の重さ的に大変そう。笑

 短編として書いていたけれど内容の薄さとメインがモブ職員(の手紙)ということでネタ帳に収録。




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