【野球少年と文学少女】(本山/oofr)

夢主設定

三年四組文芸部部長
腰あたりまである薄茶髪
170p右利き


軽いプロット

本やんがヒロインに翻弄されるはなし
物語の始まりは一年次、本山は学級新聞で異才を放っていた女生徒に興味を惹かれ、紆余曲折を経て出会う、ヒロインに惚れる
初めて野球観戦に誘ったり、本やんが山ちゃんや島崎いやらしんごとかに茶化されたり、色々です
ヒロインのイメージは某戦場ヶ原さん
最終的に原作に入って、一回戦敗退までを書きたかった


野球少年と文学少女01

 桐青高校には月に二回発行される学校新聞がある、内容は学校行事や部活の大会のことなど様々だ
 普段学校と関わりのない親御さん宛てにだろう、だがほとんどはゴミ箱行きになる運命を辿ってしまう
 俺もその内の一人だが、必ずと言っていいほど読むものがある、それは四枚綴りの学校新聞の一番最後の一枚
 そこには文芸部のコーナーと称される、文芸部員が毎回代わり代わりに書いている文章が掲載されているのだ
 ほとんどがペンネームを使っていて誰が書いているのか分からないが、その中で一人だけ本名を晒して文章を載せている奴がいた

 名字名前、彼女だけが異才を放っていた

 彼女の文章が掲載されるまでは恋愛や青春などいかにも学生が書く文章って感じで、毎回さらっと流し読みをしていた
 しかし七回目の学校新聞だった、その話は学校内でも小さく話題になった
 タイトルは至って普通だったのでいつものように読み流そうと思ったら内容が酷かった、良いい意味でも悪い意味でも
 内容は麻雀の話なのだが原稿用紙二枚程度の字数にびっしりと、一回の戦いの一巡しか描かれていなかった、だがその文章だけでその場の緊張感や手に汗握る感覚などが読み手に伝わってきた
 専門用語を織り交ぜつつも高校一年の俺でも解るように書かれていた、いつの間にか俺は何度も読み返していた
 それのどこに話題性があって酷いのかというと、簡単に説明するとテーマがギャンブルだったのだ、しかも賭けるものは金と命という高校生が題材にするのに珍しく、話題になった
 普段は目を通さずゴミ箱へと直行させる生徒もその文章を読みこんでいた
 俺は作者名を知りたくて、いつもは見ないタイトルの下に目を走らせた、どうせペンネームだろうと思ったが俺の意に反してそこにははっきりと名前が書かれていた

「名字名前……」

 それが名字名前を知ったきっかけであり、俺が彼女に興味を持ったきっかけでもある


野球少年と文学少女02

 彼女の話題は野球部内でも話のネタになっていた、放課後俺が部室に行くと同じ一年の島崎慎吾が山ノ井圭輔が話しかけてきた

「なあ本やん、この前の学校新聞見た?」
「は?」
「文芸部のとこだよー」
「そうそう、なんつーかなんな短いので鳥肌立ったの初めてだわ」
「ああ、俺も読んだよ、名字名前だっけ、凄かったよね」

 素っ気なく返事をしたが実は凄く興味津々だったりする、彼女は何者なんだろうか、名前からしてたぶん女だろうから
 彼女に興味津々なのを二人に悟られないように彼女について何か聞き出せないかと必死だった

「あの文章力はきっと三年生だよな」
「あ、俺もそう思う」

 っていうか文芸部ってどんな感じなんだろうね、とユニフォームに着替えた山ちゃんが言った、実際のとこ俺も気になってはいた
 部員数とか学年とか、やっぱり女の子ばっかりなのかな、と俺もユニフォームに着替えつつ考えた
 そんな中慎吾がにやにやしながら再び口を開いた、なんかきもい

「実は名字さ、俺のクラスメートなんだよね」

「ま、まじでっ!?」

 俺は驚きのあまり大声を出してしまった、山ちゃんに本やんうっさい、と背中を叩かれた
 でも気になっていた彼女の情報をこんな形で手に入れるとは思ってもいなかったので心の中でガッツポーズしといた
 それから山ちゃんが、どんな子なのー? と慎吾に聞いたので俺は耳を慎吾の話に集中させた

「んとね、髪長くて綺麗な子、どっちかってーとクールな感じだよ」

 名字さんを思い出しているのだろう慎吾の顔は締まりがなくいやらしさ全開だった
 慎吾の話を聞く限りでは俺の好みとは違ったが、俺は彼女の小説に興味があっただけなのでさほど気にならなかった
 会ってみたいなー、と山ちゃんが言ったとこで前ちんと和己に早く来いとどやされてこの話は強制終了した


野球少年と文学少女03

 部室で名字さんについて話した日から一週間が経った、俺は未だにあの文章を忘れられずにいた

「本やん次の体育は外でソフトだってさ」
「男女混合?」
「いんや、グラウンド一緒に使うみたいだけど」

 前の教科の板書が少し遅れた俺は急いでジャージに着替えながら山ちゃんの話を聞く、山ちゃんは俺の前の席に後ろ向きで座ってる
 ちなみに女子は更衣室で着替えている、男子も更衣室はあるのだがみんなめんどくさがって教室で着替えてるってわけ
 俺のほかにも着替えてる奴はいて、みんな山ちゃんの言葉が聞こえたらしくソフトボールに対する意見をぶつぶつ呟いているのが聞こえた
 着替え終わった俺は山ちゃんに促されグラウンドまで急ぐ、途中で山ちゃんの口からとんでもない言葉を聞かされてしまった

「あ、そーだ」
「何? 山ちゃん」
「今日の体育慎吾のクラスと合同だってさ」
「えっ……」
「名字さんに会えるじゃん!」

 この前の部室で名字さんの情報に対して過剰な反応をしてしまったので山ちゃんと慎吾にとなくバレてしまったのだ、俺が名字さんに興味津々だということが
 まあいずれバレるのだからいつばれてもいいんだけど……、でも勘違いしないでほしい、俺は名字さんに惚れているわけじゃない
 名字さんの文章に興味があるのであって決してそういうわけではない、大体顔も性格もわからない相手に惚れるなんて……

「あ、本やん」
「山ちゃんどうし……うおっ!」
「きゃっ」

 どんっ、考え事をしていたせいか人とぶつかってしまった、声からして女子だろう、怪我とかしてないだろうか

「すみません、考え事して、て……」

 俺は言葉を失った、ぶつかった相手に謝罪をしようと目を開けて、相手を見たら言葉が止まってしまったのだ

「私こそごめんなさい、注意不足だったわ」

 色素の薄い茶髪をポニーテールにして、学校指定の長いャージを身に纏う女の子
 整った顔立ちで、可愛いというより綺麗だった


野球少年と文学少女04

 彼女は俺と同じように地面に尻餅をついたっぽい、でも次の瞬間には立ち上がっていて、謝罪の言葉をもう一度言って、急いでいるから、と俺たちの前から去った
 俺はというと未だに地面に座っている状態で口を開けて彼女のいた地面を見つめていた
 それから山ちゃんに話しかけられてやっと腰を上げた、彼女な何者だったのだろう
 ベッタベタだが、たぶん、一目惚れ、かもしれない、いや、たぶんそう
 学校の玄関とグラウンドはちょっと離れていて、俺たちは急いだ、と言ってももうほとんどグラウンドは見えている、みんな整列してるし!
 今は名字さんよりも彼女の方が気になった、彼女は何者だったのだろう
 急いで校舎に入っていったので前の時間に体育だったクラスの子だろうか
 和己や前ちんのクラスの子かもしれないから今度聞いてみよう

「本やん大丈夫だった?」
「え、なにが?」
「さっきぶつかったじゃん」
「ああ、大丈夫、どこも怪我してないし」
「それもあるけど……」

 話しながら整列しているクラスメートたちの最後尾に並んだ、並び方は決まっていたけど今は並ぶことを最優先した、他の奴らも好きな奴どうしで並んでるし
 山ちゃんが若干にやにやしだした、なんなんだよ気持ち悪いなあ
 すると次の瞬間、山ちゃんはとんでもないことを口にした
 先生は今日のソフトボールについて説明をしていた

「あの子に惚れちゃった?」

「……はあああぁっ!?」
「うるさいぞ本山!」
「す、すんません!」

 山ちゃんのせいで先生に怒られてしまった、周りの生徒と山ちゃんがくすくす笑うので顔が熱くなった、くそう……
 山ちゃんを睨むと、図星かあ、とまたにやにやされた、なんか恥ずかしい
 先生の説明が終わって準備体操をするためにみんなが体操隊形に広がる、俺もみんなに合わせようと数歩退いた時だった

「先生、持ってきました」

 さっきぶつかった彼女がグラウンドに入ってきたのだ
 先生に出席簿を渡していたことから、ただ単に先生に頼まれて出席簿を取りに校舎に入っていっただけらしい
 彼女を見つめていたら転びそうになってしまった、危ない危ない
 ちらりと山ちゃんを横目で見ると相変わらず俺を見ながらにやにやしていた


野球少年と文学少女05

 先生に出席簿を渡した彼女は急いでいたのか若干息が上がってる
 俺のクラスメートじゃないからきっと慎吾のクラスの子なんだな

「おお、すまんな、ご苦労さん」
「構いません」
「じゃあ列の後ろにてきとーに入れ」
「わかりました」

 先生と短く会話をした彼女は俺の方に向かってきた、いや正確には列の最後尾にだが、自分が緊張してることに気付いた
 小走りでこちらに来る彼女に俺の目は釘付けだった、彼女の綺麗な髪が揺れるたびその毛先を目で追いかけてしまう
 それに少々大きめのTシャツを着ていたにも関わらず胸が揺れているのがわかって、俺の顔に熱が集中するのがわかる、思春期ですいません

「本やんってば変態!」
「うああああああっ」

 俺の視線の先に気づいたのか山ちゃんが俺の耳元で言った、俺は断じて変態じゃない
 必死に弁解をしていたら山ちゃんに後ろを指さされる、振り返ると彼女がいた、列の最後尾の俺の横に彼女はいた

「あら、あなたはさっきの……」
「あの、さっきはごめんな」
「私こそ、余所見をしていたから」

 緊張しているせいか上手く会話を続けられない、彼女が話し終えたところで準備体操が始まった
 良いタイミングなのか悪いタイミングなのかは分からないがとりあえず彼女は体操に集中していたし、俺も体操に集中することにした

 ちらり、体操の途中横目で彼女を見やる、日焼けを知らないような白い肌が惜しげもなく露出されており、思わず生唾を飲んだ
 変態ではない、健全な男子校生なのだ

 体操が終わると先生の指示でソフトボールの試合に入っていった、クラス混合なので俺は慎吾と同じチームになり、彼女のことを聞き出すチャンスを掴んだのだ
 しかしそんな思いとは裏腹に俺たちのチームは試合をすることになってしまった、ちなみに俺は五番のファースト
 女子の方を見ると彼女も試合だったみたいで、ファーストをやっていた、やばい、ちょっと運命感じた


野球少年と文学少女06

「本やん誰見てんのー?」

 俺のチームはあっさりと試合が終わってしまい暇になったので、まだ続いている女子の試合か見れる木の下でぼーっと彼女を眺めていると慎吾が近寄ってきて声をかけてきた
 慎吾にあの子のことを聞くチャンスじゃないか、そう思って口を開く
 あ、ちなみに今は彼女のチームの攻撃で彼女の打席、彼女は七番バッター

「なあ慎吾、あの子……」
「打った!」
「えっ」

 カキーン、気持ちいい音が聞こえグラウンドに目を向けると彼女が打ったであろうボールが宙を舞っている
 そしてそのまま外野の頭上を通り抜け、落ちた、つまりそれは

「慎吾、ホームラン!」
「わかったから、本やん落ち着け」

 だってあんな華奢な体からホームランがでるとは思いもよらなかったので、俺は興奮していた
 もちろん好きな子がそれをやったというのもある、きっと彼女は運動部なんだろうなと勝手に決めつける

「ほんと、本やんは好きだねぇ」
「え、何が……?」
「だから、名字のこと」
「ん?」

 俺を見ていた慎吾がため息とともに漏らした
 今の流れでどうして名字さんが出てくるんだろう、というか名字さんのことをすっかり忘れていたことを思い出す
 正確には、忘れてはいないがさっき恋をした彼女のことに夢中になっていただけで、恋は盲目ってやつだ
 彼女の試合は終わっていて、彼女のチームが勝ったみたいだ、これも彼女の活躍があったからだな

「しょうがない、本やんのために一肌脱ぎますか」
「は、え……?」

 気付いた時には慎吾が名字さんの名字を叫んでいた、俺が慌てふためいていると一人の女子がこちらに近づいてくる

 その子はなんと、さっきホームランを打った彼女だった


野球少年と文学少女07

 えっと、体育が始まる前にぶつかって俺が一目惚れした彼女が慎吾に呼ばれて、慎吾は彼女を名字と呼んでいて、彼女はさっきホームランを打っていて、名字さんは文芸部で、俺は名字さんのファンであって……
 つまりそれって、俺が惚れた彼女は名字さんだったということになるわけで……
 考えれば考えるほどややこしくなってきた、俺はこんがらがる頭を抑えて唸っていると彼女が目の前まで来ていた

「何か用? 島崎くん」
「名字は今日も綺麗だねー」
「そんなことを言うためにわざわざ呼び出したの? 実にくだらないわ」

 彼女は慎吾に対して反抗的というか、慎吾を軽くあしらっている、まあ元々慎吾が軟派なのもあるけど
 そうじゃなくて、妙に上から目線といいかどうどうといているというか、そう、クールな感じだ
 まあ部活の時には慎吾からクールな子って聞いていたからそれほど驚きはしなかったが
 彼女を見つめながら色々考えていると俺の視線に気付いたのか、彼女が俺を見た

「あらあなたはさっきの、よく会うわね」
「あ、そう、ですね」
「同い年なんだから敬語はいらないわよ、面白い人」

 彼女に見つめられ、彼女に話しかけられて、とっさに敬語になってしまったらくすりと笑われた
 笑顔ではなく口角を上げただけの笑い方、見下された感のあるその顔に俺はむしろ見とれていた

「え、なに、いつの間に仲良くなったわけ?」
「あ、慎吾は知らなかったな」
「私が出席簿を取りに行ったときたまたまぶつかったの」
「あー、なるほど」

 一人置いてきぼりだった慎吾に説明をすると納得した様子
 じゃあ別に呼び出さなくてもよかったんじゃん、と慎吾が一人ごちる
 まあ慎吾に呼び出してもらうまで彼女が名字さんだって分からないままだったわけで、そこは慎吾に感謝せざるを得ない

「そういえば自己紹介がまだだったわね、名字名前よ、よろしく」
「お、俺は本山裕史、こちらこそよろしくお願いします!」

 勢い余って大きな声を出してしまった、周りにいた生徒数人には聞こえたらしくくすくすと笑われた、恥ずかしい
 横目で慎吾を見やれば誰よりも笑っていた、むかつく
 名字さんも笑っていた、先ほどのような口元だけではなく顔全体で、微笑んでいた、それが綺麗で、益々惚れた


野球少年と文学少女08

 三人で木の下に座りしばらく雑談していると同じクラスの男子に慎吾が呼ばれて行った、当然俺は名字さんと二人きりになってしまったわけで
 はっきり言って気まずい、慎吾が話題を振っていてくれたというのもあるので非常に気まずい
 ちなみに雑談というのはほんとに雑談でこの後の授業の事とか天気のこととか、世間話って感じだった

 ちらりと名字さんを横目で見ると興味なさげにソフトボールの試合を見ていた
 このままでは俺はつまらない男になってしまう、そう思って何でも良いから話題を出す

「そういえばさ」
「……何?」

 話題をふれば彼女は目線を試合から俺へと移した、彼女に見つめられる
 まつげ長い、肌白い、すらっとした鼻筋、ふっくらとした唇、澄んだ瞳、綺麗な髪の毛、全てが俺を魅了する

「名字さんさっきホームラン打ったね」
「バットを振ったらたまたま当たっただけよ」
「いやそれだけじゃホームランなんて出来ないよ、運動神経良いんだねきっと」
「そうなのかしら……?」

 本人は自覚していないようだが運動神経は良い方だろう、文化部だとは思えないくらい、って言ったら偏見かもだけど凄かった
 うんそうだよきっと、そう言えばありがとうとまた笑った
 とりあえず会話を続けないといけない、そう思って俺は彼女のことを話題にした

「名字さんって何部?」
「文芸部よ」
「そう言えばこの前学校新聞に載ってたね」
「ええ、あれが高校のデビュー作よ、麻雀を題材にしたの」

 存じております、何回も読み返しました、とはさすがに言ったら引かれるだろうと思い、読んだよ、と軽い感じに言う
 すると彼女は感想などは聞かずに、そう、と短く言った
 会話が終わると再び沈黙が流れる、ソフトボールの試合が五月蝿いくらい耳に響く
 また何か話題を振ろうと口を開いたら今度は彼女が話題を振ってくれた

「本山くんは何部なの?」
「あ、俺は野球部」
「……楽しい?」
「練習は疲れるけど楽しいよ」
「そう……」

 また会話が終わった、と思ったら試合も終わっていた
 名字さんが腰を上げたので反射的に俺も立ち上がった、でも一向に動く気配がない名字さんを見やると何かを見つめていた


野球少年と文学少女09

 名字さんの視線の先をたどればそこにいたのは試合が終わった山ちゃんだった、何で山ちゃん……?
 どうやらこちらに向かってくる山ちゃんを見ているっぽい、山ちゃんもその視線に気付いたのか、俺たちに手を振りながら小走りになった

「やっほー本やん! と、えっと……」
「名字名前よ」
「名字?……ああ、文芸部の! 俺は本やんの友達の山ノ井圭輔、よろしくねー」
「こちらこそよろしく」

 笑みはなかったが山ちゃんに好印象を与えたようで、山ちゃんが俺も惚れちゃったかも、と冗談っぽく言って茶化すので睨んでおいた
 それから山ちゃんが名字さんの携帯番号とアドレスを要求しだして、俺も焦って便乗した
 今日初めて会った奴に、しかも男二人に少々無茶がある要求をされた彼女はすんなり承諾してくれた

「でもいいの? そんな簡単に連絡先教えても、俺が言うのもなんだけど……」
「私が良いと言ったら良いのよ、あなたたち悪い人じゃないようだし」
「うーん、そういうもんかな」
「そういうものよ」

「あ、二人とも、並ぶみたいだよー」

 山ちゃんの言葉で授業終了が近いことを知った、話に夢中になりすぎてすっかり忘れていた
 クラスごとに並んで、先生に礼をしたら生徒たちはまばらに校舎内へと入っていく
 俺と山ちゃんは着替えを済ませたら廊下で名字さんと会う約束をしていたので教室まで急いだ
 ちなみに名字さんは女の子の友達と談笑していたので着替えが終わるのは俺たちが先のようだ

 着替えをさっさと済ませて山ちゃんと二人、廊下で携帯電話を握りしめて待っているとしばらくしてから名字さんが教室から出てきた
 体育の後で暑かったからかブラウスの第二ボタンまで開いていて、妙に色っぽかった
 スカートは膝上くらいの長さで、黒色で膝上までの長い靴下、所謂ニーハイソックスってやつを穿いている
 そこまで好みの着こなしではなかったが彼女を凝視してしまっていて、山ちゃんに変態と小声で言われた
 それから連絡先を交換した、名字さんは特に何を言うわけではなく、交換を済ますとチャイムが鳴ったので俺たちは足早に教室へと消えた

 学校新聞で興味を持って、今日初めて会った人に恋をして、その日のうちに仲良くなって、その日のうちに連絡先も手に入れた
 俺の恋は怖いくらいに順調みたいです


野球少年と文学少女10

「好きです、付き合って下さい」

 ありきたりな告白だったけど私も彼に少なからず好意を寄せていたことは事実なので彼に肯定を意味する返事をした
 平たくいえば、不束者ですがよろしくお願いします、そう応えたのだ
 その時から私は彼を本山くんから裕史と呼ぶようになり、彼もまた私のことを名前で呼ぶようになった



「裕史、」
「ん、どした?」

 俺が自分のベッドを背にして来週提出の課題をしている時、名前が俺のベッドで雑誌を読みながら俺に話しかけた
 今日は土曜日で野球部の練習は午前中だけだったので午後からはずっと二人で俺の部屋にいた

「次回の学校新聞の文芸部のコーナー、私が書くことになったわ」
「お、楽しみにしてるわ」
「それで私と裕史の馴れ初めを書こうと思ってるの」
「えっ!?」
「だけれど止めることにするわ」

 いきなりなにを言い出すのかと思えば、俺たちの馴れ初めってなんだよ、恥ずかしいことこの上ないだろ、と思ったが彼女はすぐにその考えを止めてしまった
 恥ずかしい反面ちょっと期待していた、彼女の目から見た俺たちの物語はどんな風に見えているのか、素直に気になったからだ
 でもきっと野球部の奴らに冷やかされるのがオチだ、特に山ちゃんと慎吾には……

「だから裕史について書くことにしたわ」
「そう、俺についてね……ってまじでえええぇ!?」
「ええ、そうよ」

 何を驚いているの、と相変わらず涼やかな顔で俺を見る、正直馴れ初めの方が良いかもしれない
 でも彼女から見た俺はどんな人間なのだろうか、かなり興味がある
 っていやいやいや、やっぱり恥ずかしいし、全校生徒とその親御さんに俺を知られてしまうってことじゃないか
 それは恥ずかしい、まじ恥ずかしい、やめてくれ

「恥ずかしいんだけど」
「決定事項よ、覆さないわ」
「ドエス!」
「裕史がドエムになれば問題は無いわよ」


一番盛り上がるところで力尽きました



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