【未完成少年】(pkmnHGSS→MHA/ルギア主♂)
00 Setting.
人間→ルギア→人間。ポケモン世界でルギアに転生し、その後ルギアの“個性”を持つ男の子として転生した。前世、前々'世共に記憶あり。
ヒーロー科A組の推薦入学者のうちの一人。書類上の個性は“飛竜”。京都府出身。好きなものは海、惰眠、ゲーム。出席番号21。私立槐中学校。
襟足長めの銀髪で青のメッシュ入り、瞳は暗い赤色。
見た目のチャラさに反して表情は乏しく性格も大人しい。あまり積極的な性格ではないがやる気が無いのではなく、ルギア時代に人々に迷惑をかけないよう極力大人しくしていた名残り。
普段の戦いも力をかなり抑えているがバトルが楽しすぎて気分が高揚すると本気を出しちゃうかもしれない。
ポケモンの“ルギア”そのものが“個性”であり、任意でルギアの姿にも成れる(フォルムチェンジ)。腕だけ翼にするなど一部分のみのフォルムチェンジも可能。
ルギアの覚える技(レベル技・わざマシン等)はシリーズ問わず大体使えるが、人間フォルムでは使えない技(例そらをとぶ)もあり、その場合フォルムチェンジすることで使用可能となる。勿論特性(プレッシャー、マルチスケイル)も健在。めざめるパワーは炎。
体の一部でもフォルムチェンジしていれば個性無効系の“個性”の影響を一切受けないず、技の威力も完全人間時より上がる。完全ルギアフォルムだと技の威力は人間時の数十倍に跳ね上がる。
「名字名前。名字は慣れていないから名前で呼んでくれると嬉しい。これからよろしく」
「うん。すごく良い。嬉しいよ」
「……ちょっと顔貸せ。後悔させてやるよ」
「はぁ……」
「ふふっ、ふははは! ごめ、面白くって、止まらない!」
「カネの塔が焼け落ちて拠り所を失った俺はずっと渦巻島の奥深くで大人しく過ごしていた。だけどある日一人の女の子が来て俺を孤独から救ってくれたんだ。彼女には感謝してもしきれない」
一人称は「俺」。親しい相手、親しくしていきたい相手は基本的に下の名前で「○○くん」「○○ちゃん」。なつき度MAXになると呼び捨て。
・pkmn要素割と強め
・最初の人生でポケモンはプレイ済み
・オリキャラが何人か出てくる
・pkmnキャラ数人転生済み
01 First day.
やけに物々しい、如何にもセキュリティの塊であることを主張している門をくぐれば豪然たる佇まいの校舎が彼を迎えた。
国立雄英高等学校。今日から彼、名字名前の通う学校だ。
“個性”と呼ばれる超常能力が当たり前となった現代社会において、“個性”を悪用する者とそれを取り締まる者が存在している。
前者は“敵(ヴィラン)”と呼ばれ、チンピラから凶悪犯罪者まで様々だ。そのヴィランを、個性を用いて取り締まる特別な資格を有する者が“ヒーロー”である。
そんなヒーローになるための資格取得に特化した学科の中でも日本最高峰に当たるがここ国立雄英高等学校ヒーロー科なのだ。現役ヒーローが教鞭を執るこの学校のヒーロー科倍率は毎年三百倍にもなり、その難関を超えし者だけが偉大なヒーローとなる資格を得るのだ。
名前はその超難関とも言われるヒーロー科を祖母の勧めにより志願し、推薦入試であっさりと合格してみせた。
本人に自覚はないが名前の容姿は人の目を惹く。加えて成績も優秀で“個性”も素晴らしく性格も良いのだから女生徒からの人気も高い。
そんな名前が超難関の雄英高校ヒーロー科をあっさり合格してしまったのだから噂が広まらないわけがなく、その知らせは教師は勿論のこと彼の通う中学校中に広まり、今までの“密かな人気”が一気に“学校一の有名人”となってしまい居心地の悪いまま卒業までの数ヶ月を過ごすこととなってしまったのは苦い記憶だ。
余談だが卒業式当日、いつの間にか制服のボタンが全て取られていたという逸話もある。
そんな聞く人によっては不愉快な伝説が短い期間でいくつも樹立されていた頃が遠く感じるのは、校舎に入っても誰も近寄ってこないからだろう。
こんな静かに登校するのは久しぶりだった。若干の心地よさを感じつつ名前は自分のクラスであるA組の教室の前まで来て思わずその扉を見上げてしまった。
「(でかい……)」
どんな“個性”の人間が入学しても大丈夫なよう各教室の扉は特注と思われる大きなサイズとなっており、その見た目に反してが建付けは良く、彼が手をかけると静かな音で開いてくれた。
「(でも本来の姿だったら通れなさそうだな……)」
A組の生徒はまだ誰も登校しておらず教室内はがらんと静まり返っている。初日ということで何となく早く出てきたが、この時間帯でこれならば明日からはもっと遅い時間に登校しても良さそうだ。
早起きしたことを早々に後悔し、大きな欠伸を一つ。
教卓の上に置かれた座席表を確認し自分の席に座った途端に、早起きによる眠気が迫ってきた。机上で突っ伏して寝るのは少々硬すぎるが慣れていないわけではなく、すんなりと入眠体制に入る。
彼の瞼が完全に落ちた数秒後、教室に新たな生徒が入ってきたのだが、完全に寝入ってしまった名前が気づくはずもなかった。
「(おや、僕が一番最初だと思ったのだが……)」
今し方登校してきた飯田天哉は、いつもより早い時間に起き、これから自分が学んでゆく学び舎にいの一番に登校して来たつもりだったのだが、教室に入ってみれば一つだけ埋まっている席があることに気づいた。
その人物は机に突っ伏して寝ており、自分ですら気を抜いたら欠伸が出そうになるのだからそれよりも早く起きたであろう彼が寝てしまっているのを咎めるつもりはなかった。ショートホームルームが始まるまでは何をしていようと生徒の自由だ。
それに、窓から入る朝日によってきらきらと輝く銀髪の間から覗く表情はとても気持ち良さそうで、起こすのは憚られたのだ。
02 Physical fitness test.
A組の残りの生徒が登校し互いに挨拶をしたり態度の悪い者を注意したりと周りがこれでもかと騒いでいるにも関わらず名前は起きる様子を僅かにも見せず、静かに寝息を立てている。
それは寝袋に包まって芋虫のようになっていた担任が騒ぎを咎めている時も、その寝袋から体操服を取り出してグラウンドへ行くよう指示した時も変わらず。
少し伸ばされた銀髪の所々に入っている青いメッシュ、髪の合間から見える耳にはシルバーのリングピアス。近寄りがたい雰囲気のある名前。
起こされるまでこのままなのでは、と思われていた名前の肩が強く揺さぶられ沈んでいた意識がゆっくりと浮上していく。
「んー……?」
「おはよ。あんだけ騒いでたのに起きないなんて結構図太いのな」
「……ずぶといはHB振りでゴツメか食べ残し……」
「HB? ゴツメ? 食べ残し? 何言ってんだ……?」
「……寝ぼけてた。ごめん、今の忘れて」
脳がはっきりしてきて、名前は自分の言ったことを思い返して気恥ずかしくなり思わず右手で顔を覆った。
「ははっ、お前おもしれーな。……ジャージに着替えてグラウンド集合だってよ」
「ん、ありがと」
周りを見渡せば教室に残っているのはほんの数人しかおらず、目の前の彼に悪いことをしたなぁと渡された新品のジャージを受け取り、更衣室へ向かう彼に付いていく。
未だ眠たそうに欠伸をしながらもしっかりと後ろを付いてきている名前がまるで親鳥の後をついてくるカモの子供のようだと轟が思っていたのはここだけの話だ。
「俺、名字名前。名字は慣れてないから名前で呼んでくれると嬉しいな。これからよろしく」
「ああ。俺は轟焦凍だ、こっちこそよろしく」
「まず自分の“最大限”を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
最大限、彼が最も苦手とする力量だ。
教師がなんと言おうと今まで通り“それなり”の結果を出せば良い。それでも十二分に通用するのだから。
そう言って相澤が生徒らに見せた爆豪のソフトボール投げの成績は705.2m。
いきなり叩き出したものすごい数値にクラスメイトはわぁっと盛り上がる。
「なんだこれ! すげー面白そう!」
「705mってマジかよ」
「個性思いっきり使えるんだ! さすがヒーロー科!」
面白そう、とは名前は思わなかった。
ちらりと相澤の方に目をやると、彼はため息をついている。
「………面白そう、か。ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
「……?」
「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「生徒の如何は先生の“自由”。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
放課後マックで談笑したかったのなら残念だったなと淡々と言う相澤に名前は友人とファストフード店で談笑していた中学時代を懐かしむ。
「名字」
「……?」
「お前は今回の体力テストで一位を取れ。さもなくば問答無用で除籍にしろと、菊子さんからのお達しだ」
「おばあの差し金か……」
「どうした、自信がないのか?」
「いや、一位取るのは多分簡単です。ただ……」
雄英に融通をきかせる祖母の顔の広さに驚くべきか、体力テストで一位を取らねば後が無いという衝撃的展開に驚くべきか。結局名前はどちらにも驚くことはなかった。
除籍になっても構わないというのが本音だが、やはり高校中退は避けたい。
「“ただ”?」
「……いや、何でもないです。一位取ります」
人数の関係で最後に一人で行わなければならない名前が注目を集めるのは至極当然の結果であった。
じろじろと視線を向けられるのは余り居心地の良いものではなく、かといって注目されることに慣れていないわけではなかった。
スタートラインに立った名前は素早さを倍にする“おいかぜ”を吹かせるとそれまで穏やかだった空間に連続的な風が通ってゆく。
彼の長い襟足を前へと靡かせる力強いその風を利用し、瞬く間にゴールを通過した。
『2秒14』
機械音で告げられた記録は、クラス最速であった飯田の記録を一秒近く上回るもので。当然クラスメイトはその結果に湧く。
「おおっ!」
「飯田より速ぇじゃん!」
「すごーい!」
彼を取り囲むようにクラスメイトが集まり軽く言葉を交わす。
本来の姿ならば視界に捉えることも出来ずにゴール地点を通過しているのだが、やはり完全人間フォルムではこれが限界のようだ。
それでもクラスで一番という結果は、流石は素早さ種族値110といったところか。
ソフトボール投げでは投げる際に“ふきとばし”て飛距離を延ばし、相澤が掲げたディスプレイ端末には“983.6メートル”の数字。麗日の“∞”に次ぐ二位である。
素手では大分威力が落ちてしまうが本来の力を使えば雄英高校の校舎など簡単に吹き飛んでしまうのだから、これが正解だ。
風を操る“個性”だと勘繰っているクラスメイトもいるがそうではない。単に風系、つまり飛行タイプの技しか使っていないからそう見えるだけで、本来は様々なタイプの技を使えるのだ。
しかし彼はそれをひけらかそうとはしない。
当の本人は人間の姿でもそれなりに良い記録を出せものだと感心しつつ残りの種目も熟していく。ルギアという生き物をよく理解している故だ。
握力測定は“かいりき”を使い障子の540キロを軽く超え、超えすぎた結果握力計を壊してしまい記録はクラス唯一の“測定不能”。
立ち幅跳びも“おいかぜ”を利用して軽く一番を取る。
最後の種目、持久走はクラス一斉の10キロメートルマラソンとなる。
短距離走のように持久力を要さないものとは違いこの種目は個性で補助しようにもその配分が難しく、かなり素地が重要となってくる。
といっても流石は雄英ヒーロー科。推薦入学組の三人は勿論、実技入試を突破してきた一般入試組も一般高校生に比べたらかなり速いペースで走っている。
中でも八百万と名前は群を抜いていた。
飯田も個性のお陰で他のクラスメイトからは頭一つ抜きんでていたが、個性で自転車を創造した八百万と、人間以上の肺活量と地の体力・素早さを持つ名前はクラスメイトの遥か先を走っていた。
ただ走っているだけというのは退屈なもので、名前は隣を並走する八百万に話しかけることにした。
「そういえば俺たちって席前後だよね」
「え!? ええ……」
「俺、名字名前。よろしくね」
「私は、八百万、百、ですわ。こちらこそ、よろしくお願いしま、す……」
自転車に乗っていても息が上がっている八百万の横で、教室内での会話かと錯覚しそうなほど平然と喋っている名前に驚きを隠せなかった。
普通ならば汗を流し息も絶え絶えになる距離とスピードなのに彼はどうだ、呼吸ひとつ乱れていないどころか汗すらかいていないではないか。
「百ちゃんって呼んでいい? 可愛い名前だね。俺のことも下の名前で呼んでくれると嬉しい」
「え、ええ……」
「百ちゃん息上がってるけど、まだあと三分の一くらいあるから少しペース落とした方が良いよ。少しくらいペース落としても順位は変わらないだろうし」
「そうは、いきませんわ……!」
「そう? じゃあ俺はこれからラストスパートかけるから。ゴールで待ってるね」
「え……!?」
八百万が驚いてペダルを踏む足を止めてしまった隙に名前は彼女との距離を離していた。
そのままスピードを上げた名前がゴールする頃には八百万との距離は500メートル以上開いていた。
結局八百万がゴール地点に着いたのは名前がゴールしてから数分後だった。
「百ちゃんお疲れー」
「名前さん……貴方、いったいどんな個性なんですの……?」
ぜいぜいと肩で息をする八百万に対し名前は何でもないと言った風に首を傾げた。
「ん? 持久走に関しては“個性”使ってないけど……」
「え!?」
「あー、でも“個性”の影響なのか肺活量は普通の人の十倍くらいあると思う」
「じゅっ……!(肺活量だけではあのスピードは出せませんわ……!)」
「んじゃ、ぱぱっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。ちなみに除籍はウソな」
相澤先輩が端末を取り出しながらぼそりと呟いた最後の言葉に、何人かが目を丸くする。
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「はー!?」
「あんなのウソに決まってるじゃない。ちょっと考えれば分かりますわ……」
「うーん、そうなのかなー」
頭の整理が出来ていないお茶子や緑谷君たちを見て八百万さんは呆れたように言うが、あの言葉に偽りはなかったと名前は確信している。
人生三回分による経験則とでも言えば良いのか、除籍処分を宣言した時の彼の目に欺こうという意図は無く、最初は本気で最下位を除名する気でいたのだと思う。
何はともあれ、名前の成績は文句なしの一位。高校中退という結末は免れた。
バトルの時とはまた違った“おいかぜ”の有用性について再発見した体力テストであった。
03 Combat drills.
暗い暗い洞窟の最深部、滝の音だけがやけに煩く響いているそこに彼はいた。
『よし、決めた! 今日から君は名前だよ! これからよろしくね!』
『ギャアーッ!』
にっこりと、見る人を安心させる柔らかい笑みを浮かべる少女に、名前は少しだけ心を許せる気がした。
「……夢、だよなぁ」
ちゅんちゅんと名前よりも早起きな雀の鳴き声が窓の外から聞こえてきていつもより早い起床を伝えている。
高校進学に伴い一人暮らし始めた。入学祝いで祖母に買ってもらったキングサイズのそれなりに高級なベッドは質の良い睡眠を保証してくれ、目覚めはいつも良い。
今日のはとても懐かしい夢だった。
あれは、彼が再び人として生まれる以前の記憶だ。
雄英高校では午前を普通科目を熟し、午後からヒーロー科特有の特殊科目が行われるカリキュラムとなっている。
入学二日目の午前ではプレゼント・マイクこと山田の普通すぎる英語の授業を始めとする、教師も自由であることを謳っているにも関わらず至ってまともな授業内容だあった。
そうして、名前たちが入学してから初めての、名前以外が待ちに待ったヒーロー基礎学の時間がやってきた。
「わーたーしーがー!……普通にドアから来た!!」
アメリカンな笑い方で教室のドアから入ってきた銀世代のコスチュームのオールマイトにA組の生徒たちは興奮気味だが、ヒーローに特別憧れを抱いている訳ではない名前のリアクションは極めて薄い。
ヒーロー科の午後に行われるヒーロー基礎学ではヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う旨をオールマイトが説明し、一枚の札を掲げた。
「早速だが今日はコレ! 戦闘訓練!!」
“BATTLE”と書かれた札に奮起する生徒をさらに興奮させるものがオールマイトが持つリモコンにより現れる。教室の壁からせり出てきた棚の中には番号が印字されたケースが収納されており、各々の出席番号と同じ番号のケースを受け取る。
国立というだけあって雄英高校には被服控除として入学前に提出した個性届け及び要望に沿ったコスチュームをサポート会社が用意してくれるシステムがある。
中を開けてみれば各々が思い浮かべていたコスチュームが入っていて、俄然やる気が湧く一同。
名前も自分の出席番号が印字された箱を受け取り更衣室へと向かった。
絵心のある名前は要望用紙にルギアのイラストを描いてこれをイメージしたコスチュームにして欲しいと要望を出した。そのため特にデザインに関する希望は一切していなかった。
ルギアの目元を模した青いアイマスクに同色の着物と胴が水色で袖と背が白色の狩衣、下は括り袴に似せた白いズアーブ・パンツ。流石に下駄類は動き難いと判断したのか足元は青いブーツだ
袂の裾が繋がっていないため動くたびにひらひらと優美に舞う姿は確かに神の名を持つルギアの大きくて強い翼を思わせる。
京都出身だから着物をベースにという安易な考えなのか、ルギアのイメージからデザインを起こした結果が着物なのかは定かではないが、かつてエンジュのカネの塔に祀られた彼には似合いの衣装だった。
実際に着てみると見た目の印象程動きを制限されず、寧ろ動きやすいように仕上がっている。これに関しては流石と言わざるを得ない。
「凄いね、天哉くんのコスチューム。スパロボ参戦しそう」
「ん、すぱろぼ……?」
「うん、気にしないで」
飯田はあまりゲームをしないようだ。
・ルギア君は尾白葉隠チーム
「(二人には悪いけど……)」
確かに名前の実力ならば足を固定されていたとしても轟に勝つことは容易だっただろう。でもそれをしなかったのは大人しくありたいという潜在的な願いから。
04 Game buddies.
「へぇ、弔君って敵だったんだー」
「あんまり驚いてないけどオレが敵って分かってた感じか?」
「うーん、何となくだけど。君対戦ゲーする時大抵悪役キャラ使ってたし」
「はっ。そんなことでバレるのか普通」
「いやそれだけじゃないけど……まぁ説明しにくいから説明はしないけど」
「煮え切らねー……」
数百年生きていたが故に身についた鑑識眼は彼の言動の些細な部分から一般人ではないことを見抜いていった。何れ相反する道から対立するであろうことまで判っていた。
それでもゲーマーとしての彼はただ純粋にゲームを楽しむ子供だったから、ゲームという媒体を介している間だけは友達でいられたのだ。
「名字、あいつのこと知ってんのか」
「ゲームショップで知り合って、以降オンゲ友達でした」
でした。過去形で語られた彼との関係に相澤は、そうか、と呟いて再び死柄木を見やる。
「天哉くんなら出来るよ」
“おいかぜ”を発動させたその勢いで飯田の背を押す。
「いってらっしゃい」
その時の飯田は普段よりも随分と速く走れたのだがその要因が名前であることを、彼は知る由もないだろう。
「この場は俺が引き受けるから、梅雨ちゃんは二人を連れて広場まで跳んでほしい」
「ええ。私は構わないけど……名字ちゃんは一人で大丈夫なの?」
「平気だよ。それと名字は慣れてないから下の名前で呼んでくれると嬉しいな」
「ケロ……分かったわ」
「それじゃあ、俺が海に入って五秒経ったら跳んでね。危ないから」
「え……?」
ヒーロースーツを着たまま美しいフォームで水に飛び込む。
水難ゾーンの水中にいた敵たちを巨大な“うずしお”に閉じ込めて、“でんじは”で麻痺状態にさせてしまえば終了だ。仮にも敵連合としてここに居るのだからこれくらいで死ぬことはないだろう。
05 Sleep drunkenness.
※一部グロ描写注意
一瞬、その場にいた全員が等しく、時が止まったような錯覚に陥った。
蛙吹の頭に触れるはずだった手はいつの間にか現れた名前の肩を掴んでいて。当然一部がばらばらと“崩れ”落ち、肉と骨の一部が曝け出されてから一拍を置いて、止まっていた時が動き出したみたいに血液が溢れ出した。
寸での所。相澤が“個性”を消したのとほぼ同時に、名前が蛙吹を水中に引き込み自身が代わりに水面に上半身を浮上させたのだ。
“個性”が消せたのも一瞬で直ぐに脳無によって彼の視界は地面へと落とされてしまい、気を良くした死柄木はそのまま名前の肩へと触れる。
普通ならば苦痛に顔を歪め叫びながらのた打ち回るくらいしても足りないくらいの重傷だ。事実見ているだけの緑谷達ですらその痛みを想像し顔を顰めている。
しかし当の本人は痛がる様子もなく、寧ろ何の言葉も発しない。かと言って声を殺して痛みに耐えている訳でもなく、ただずっと下を向いたまま動かない。
その様子が余りにも不気味で、死柄木ですら思わず手を退けそうになる。
「名前、君……?」
ようやく言葉を絞り出したのは緑谷だった。
その蚊の鳴くような声に応えるよう名前が緑谷を一瞥すると、にぃと口元に弧を描き徐ろに死柄木を見据えた。
「っ!」
刹那その場が得体の知れない威圧感に包まれ死柄木だけではなく味方であるはずの緑谷や蛙吹たちも額に汗を滲ませた。ぞわぞわと背筋を這い寄る何とも言い難い恐怖。
USJの中でも空と水が広がっている開放的なエリアのはずなのに、気を抜いたら簡単に押し潰されてしまいそうな程重たい空気。プレッシャーとも言うそれに、己の意思のない脳無ですら動くことが出来ず、押さえつけられている相澤は身動きが取れないまま原因である名前を見やった。
「(名字か……!)」
それまで優勢だった死柄木だからこそ、自分の“個性”で壊して出血しても全く動じない存在に本能的に恐れを抱いていた。
今まで対峙してきたどんな存在よりも“得体の知れない”存在。彼が取り乱すには十二分だった。
「お、お前何なんだよ!?」
「……」
「血ぃドバドバ出てんだぞ……痛くねぇのかよ!」
「……痛い? ああ、痛いよ。でもそれ以上に楽しいからさ」
ようやく顔を上げた名前の顔は愉しそうに歪んでいて、死柄木は今度こそ退けてしまった手を掴まれ動揺を強くした。
「バトルしようぜ?」
こいつはおかしい。今まで会ったどんなやばい奴とも当て嵌まらない。
アドレナリンで痛覚が鈍っているせいか然程痛みを感じない。
「脳無!!」
死柄木が叫ぶと脳無はそれに反応し相澤を放って名前の方へと向かっていく。
理性を失っていても本能は覚えている。
もすぐに“じんつうりき”で吹き飛ばされる。その見えざる力が敵たちの恐怖心を余計に煽っていた。
「っ、脳無が吹き飛ばされるなんて……お前どんな“個性”なんだよ……!」
「死柄木! ここは一旦引きま……!」
「知らないのか? 真剣バトルからは逃げられない」
「お前チートかよ……!」
「チーターじゃなくて“伝説”だよ」
「余所見するなよ」
「じゃああいつ殺したら次はお前な」
「……!」
それまでのプレッシャーは無くなっていて、場の緊張感が一気に消えた。
電池が切れた玩具のように動かない。失血による意識喪失だった。
「は……やっと死んだか?」
死柄木の言葉に反応するように一瞬指先がピクリと動く。しかしそれ以上は何もしてこない。
「うあああああ!? 痛えぇ!!」
「名前君! 良かった気がついたんだね!」
肩から出血している状態が果たして“良かった”と言えるのはか難しいところだが、とりあえず意識が戻っただけでも良しとしなければならない。
当の本人はそれどころではなく、アドレナリンが切れたせいでそれまで分からなかった激痛に襲われている。
「じ、“じこさいせい”……!」
目尻に涙を溜めながらそう呟くと、見る見るうちに破損していた肩は治癒されていく。
しばらくすれば元から負傷していなかったのではと錯覚するほど綺麗に治ってしまっており、ぽっかりと穴の空いたヒーロースーツだけが負傷していた事実を主張していた。
「君は自己治癒の“個性”も持っているのか!?」
「何個“個性”持ってるの?」
「あはは。俺の“個性”は一つだよ」
自己治癒である“じこさいせい”もただの技の一つであるから複合“個性”ではない。
何より畏怖の目を向けられなかったのが嬉しかった。ちゃんとクラスメイトとして、友人として心配してくれている。
「ふむ、“複合個性”というやつか」
「救急車は結構です。自分のことは自分が一番よく分かってるんで」
完治しました、といつもと変わらない優しい笑みを浮かべる名前。
06 Athletic festival.
ふぅと息を吐いて腕を捲くる名前の顔は普段とは違いやる気が伺える。
「あれ、名前。今日は本気モードなん?」
上鳴の何気ない言葉に名前は溜め息を一つ。
「菊子おばあが見に来てるから無様な姿は見せられないんだ……」
名前にとって祖母の菊子はただの肉親ではなく、礼儀作法や自衛のための稽古をつけられていた言わば“師匠”も同然なのである。
その菊子が見に来るというのだから流石の名前もある程度本気を出さざるを得ないのだ。
「きくこおばあ……」
「俺の祖母ちゃん。凄い厳しい人でサボってるの見られたら絶対お説教される」
「なるほど……。ま、それでなくてもプロヒーローが見てるから気合い入れなきゃだしな!」
名前にとってプロヒーローのお眼鏡に適うことなどはどうでも良く、ただ中途半端な成績を残して菊子の説教を受けるのが嫌なだけである。
「それに総合三位以内に入ったら来月発売のゲームハード買ってもらえる!」
「そっちが目的か!!」
名前の眼にはもう新しいゲームハードしか映っていない。
スタートの合図と共に出走者を減らすため轟が足元を凍らせたがそれよりも速く名前はその場から駆け出していた。
『轟が足元を凍らせたぁー!……って名字速いぜ! 速すぎてもう遥か彼方だー!!』
「体力テストでも知ってたけどありゃ速すぎるっつーの!」
「今日の名前君本気ね……!」
「もう追いつけないよー!」
クラスメイトの言葉すら聞こえないくらいに遥か先を行く名前。
だが諦める者はただの一人として存在しないのが超難関を誇る雄英高校の生徒だ。
第一関門として用意された巨大な仮想敵、ロボ・インフェルノもAIに反応する隙さえ与えずその足元の隙間を掻い潜り何事も無かったように走り続ける。
『速い! マジで速すぎるじゃねーか!? 一体どうなってんだよあいつぁよぉーっ!?』
颯爽と走り抜ける様は、流石は素早さ種族値110。更に“おいかぜ”を使って素早さが倍になっている彼に追いつける者はいない。
「ま、流石に実力差が有りすぎてフェアじゃあないから妨害はしないけどね」
「くっ……」
元来の彼であれば順位にこだわりは無く正直な話棄権しても構わないのだが今回は訳が違う。新作ゲームハードが懸かっているのだ。
名前の中では既に新作ハードに使う予定だった小遣いをどのソフトの購入代にするかの算段もついている。つまり負けられない戦いなのだ。
皮算用はしない主義だ。
・騎馬戦
「名前! さぁ一緒に組みますよ!」
「いいよ、明」
「出久くーん、お茶子ちゃーん、一緒に組まない?」
「えっ、僕!?」
「ウチもええの?」
「勿論。2人は組むつもりなんでしょ? オレ達も入れて」
「俺が場力担当、出久君は頭脳兼騎手でお茶子ちゃんは足回りのサポート。そんで明はベイビーたちで全体のサポートをよろしく」
「ええっ! ぼ、僕が上でいいの!?」
「うん。寧ろ俺が足回りやった方がスピード出るし攻防もここだとやりやすいし……それに俺が上になったら強すぎて勝負にならないだろうから」
ここいらでちょっとしたハンデ、と爽やかに微笑む姿は絵になっており、強者が纏う一種のオーラのようなものがその時の緑谷には見えていた。
彼の静かなる勢いに押されるがまま緑谷が騎馬の上に乗る。
彼は、死柄木とは別の意味でゲーム感覚で楽しんでいる人間なのだと。
「という訳で明、俺の肩に着けれる荷台的なベイビーはある?」
「もっちろん! 何でも取り揃えてます!」
ジャジャーンとSEを口にして発目が取り出したのは注文通り両肩への負担を極限まで減らした背負子のベイビーだった。
それを名前が背負いその上に緑谷が乗り、万が一彼が落ちても良いよう麗日と発目が背負子に手を添えて支える。名前のスピードに付いてこられるよう女子二人の足には補助用のベイビーが装備された。
緑谷チームの出来上がりである。
「よし、これで俺の両手は自由だ」
「駄目じゃあないか出久君。ハチマキが落ちちゃってたよ」
「あ、ご、こめん……」
違う。落としたのではなく、ハチマキは確実に轟焦凍の手中にあったはずなのだ。それを名前が“何か”をして轟から奪い返したのだが、如何せんその“何か”の検討がつかない。
彼の“個性”自体幅が効くため現状でこれ以上の考察はドツボだ。
コピーした瞬間にその“個性”がどういうものでどうやって扱うのかが瞬時に理解できるタイプのコピー“個性”なのか。
「君の“個性”借りるよ」
「別に良いけど、使いこなせないと思うよ」
「?……ってアレ、水が出ない!?」
「だから言ったでしょ。レベル上げしないと水も氷も出せないって」
「そんなはずは……っ!?」
次の瞬間、物間の右腕は異形の物に変貌し、一瞬にして会場にいた全員の目線を奪っていた。
その目は好奇に溢れその“個性”をもっと見たいとすら願った。
ただ一人、名前を除いては。
「っ、今すぐ戻せ!!」
白く大きな龍の翼を掴んだ彼は、先程コピーされたと分かった時とは大きく違い珍しく取り乱した様子で目を見開き眉を釣り上げ怒りを顕にしている。
USJの時とはまた違った、普段の彼からは想像もつかない感情的な姿に、クラスメイトは目を見張った。
「は、何言って……」
「いいから!!」
「!」
「後悔してからじゃあ遅い!!」
物間自身、コピーした相手から怒りを買うことはこれが初めてではなくこのまま彼の言葉を無視して個性を使うことも出来たが、彼から発せられた言葉と焦燥しきったその表情にかなり戸惑っていた。
そもそも物間の意思で腕を異形の姿に変えたわけではなく、ただ何か“個性”を出せと必死になっている間にそうなってしまったわけで。彼自身どうして良いのか分からないと言うのが正直なところである。
しかしあれだけ啖呵を切ってしまった手前そんなことも言えず、再び名前を見やればその瞳には怒りという単純な感情はなく、焦りと不安と後悔が混ざり合って渦を巻いていて。
目が合った瞬間には戻さねばならないという強迫観念が生まれており、気が付けば物間の右手は元に戻っていた。
「戻った……?」
それと同時に、彼にも同じモノに成れるのだということを全てに知らせる行為となっていた。
A組の一部の生徒はUSJでの彼の異質ぶりを見ているので
コピーされてもレベルが足りていないから大丈夫だと高を括っていたのが仇となった。まさかフォルムチェンジも安安と出来ようとは。それが彼の意思で出来たことではないとしてもポテンシャルは矢張り雄英ヒーロー科の生徒として申し分ない。名前としては今後彼と同じような“個性”の人間が現れるとも限らないので注意しなければならない。
「さっきは怒鳴ってごめん。でも俺の“個性”は使い方を間違えたら簡単に加害者になっちゃうから……」
「……あの時は君の勢いに負けて収めてしまったけど、そう言われると凄く気になる気になるなぁ君の“個性”」
「まあそのうち分かるよ」
「俺は名字名前。名字は慣れてないから名前で呼んてくれると嬉しい」
「……物間寧人」
「寧人君。これからよろしく」
どこまでもマイペースな名前に毒気を抜かれた気分になってしまった物間であった。
07 Tournament.
「わあ、チアガールがいっぱいいる。みんな可愛いね」
「峰田さんと上鳴さんに騙されてしまいましたの……」
「? 可愛いんだし良くない? オレみんなのお陰でやる気出たよ」
「!」
「これだから天然タラシは!!」
・vs青山
「先手必勝☆」
へそから発射されたビームを最小限の動きで避け、そのまま反撃に出る。
「優雅くんごめんね」
名前が両腕を大きく振るとそれまで穏やかだった風は、突風となり青山を襲った。
“ふきとばし”により青山は成す術なく場外へと吹き飛ばされてしまい、名前の勝利が確定した。
まさに数秒の出来事である。
『轟に続き名字も瞬殺しちまったぜー!? どうなってんだA組の推薦組はよぉ!?』
「これもPS5の為なんだ……!」
・八百万にアドバイス
「うーん。百ちゃんの“個性”は創造している時にどうしても隙が出来ちゃうからシングルバトルで、しかもああいう見晴らしの良いフィールドだとどうしても不利になっちゃうね」
「……」
「今回は仕方ないよ。次に同じような状況になった時に対応出来れば今回の負けは意味のある負けになるさ」
・vs常闇
「悪いね」
「っ……俺の負けだ」
「っ、と、常闇くん降参! 名字くんの勝利!」
「影踏くんは強いよ。でも俺が“強すぎた”んだ」
あと相性も悪かったかも、と常闇に手を差し伸べ起き上がらせる。
・vs爆豪
「おいてめぇ“個性”使えや!!」
「っ……」
「名前!!」
「!」
「ああ!? 何だ……?」
一際大きな声が彼の名を叫ぶ。歓声とも野次とも違うその声は、彼を咎めているようにも聞こえた。
「……ごめん。やめる」
「は……」
「香山先生、棄権します」
「はあ!?」
「てめぇ何勝手に止めようとしてんだ! 最後まで戦えや!!」
「ごめん……でも、オレ……ほんとごめん」
片手で顔を抑えているが僅かな隙間から見えた彼の表情からは焦りが見える。冷や汗が滲んでおり焦躁しきっている。
「あの子が止めてくれなかったら今頃俺は後悔してただろうから……」
「名前! やっぱり名前だっ!」
「……会いたかったよ、コトネ」
「さっきはありがとう。コトネが止めてくれてなかったら俺はきっとあの子を壊してた」
「名前が苦しそうだったから、元トレーナーとして出来ることをしてあげたいなって思ったら名前ーって叫んでたの!」
「うん。ありがとう」
「私の“個性”は頭を撫でた動物を一時的に懐かせるんだー」
「俺はもうコトネに十分なついてるよ」
“おんがえし”だったら最大値が適用されるくらいには。
・表彰
決勝戦の轟には炎の“個性”を使わずあっさり負けられてしまい、準決勝の名前に至っては勝手に棄権されのだ。とどのつまりこんな優勝は彼の望んだ形ではない。
「オールマイトになら話してもいいのかなって最近思えてきたんだけどね」
「ん? 何でも聞くよ」
「……うーん……でもやっぱり止めとくよ」
「えっ、気になるなぁ〜!」
「今はまだその時じゃあない」
「いずれ。その時が来たら、聞いてやってください」
「ああ! 待ってるぜ」
08 Intern.
元々ヒーローに興味が無かったからか羅列されている事務所の名前に何一つピンときていない名前。
「よろしくお願いします」
(ルギア君のインターン先はリューキュウ事務所かな)
「名前っ……!」
「大丈夫、俺は死なないからさ」
「天哉君。一時の感情に流されたら駄目だよ。君には大きな目標があるんだろう? その目標に恥じぬよう生きるのが君の課せられた使命といってもいい。目標までの道のりにここであいつを殺すことなんて入っていないはず。目を覚ませ!」
「過剰防衛にならない程度に痛めつけて捕獲。捕獲難易度はCってとこかな」
09 Term examination.
・期末試験
「名字。お前はある人から指名が来てる。一対一だ」
「おばあ、ヒーローだったの?」
「大昔に少しだけね」
「名前、あんたは知らないだろうけどあたしは一度あんたに助けられたことがあるんだよ」
「あたしはルギアというポケモンを知っている」
“ポケモン”。その単語だけで彼は全てを察した。
「物心ついときからあんたは控えめな性格で“個性”を見せようとしなかった。見せても“しおみず”や“じこさいせい”くらいだ。それで確信したよ」
「あんた、ルギアとして生きていた記憶があるだろう?」
名前、容姿、性格。全てがゲームの中の彼女そのままで、初めて見た時からの疑念がようやく確信へと変わった。
「カントー・ジョウトリーグ四天王が一人、ゴースト使いのキクコ。それが前世でのあたしさ」
やはり、そうだったか。
その昔、突として嵐が起こった。暴風雨は全てを吹き飛ばし、海は荒れ、大地は雨に溺れた。
止むことを知らない嵐のせいで食糧が取れない日が幾日も続き、嘆いた人々は神に祈った。
ついに人々の願いを聞き入れた神は満月の夜にその姿を現し、幾日も止むことのなかった嵐をおさめ、荒れ狂う海を静めた。
月のように輝く銀と、海のように深い青を持つその姿を人々は海の神と崇め讃え、惜しみない感謝を寄せた。
しかし、何十年と経つに連れ、いつしか海の神への感謝を忘れてしまった人々は、ついに海の神の怒りに触れてしまった。
人々の前に再び姿を現した海の神は、その銀色の逞しい翼を軽く羽ばたかせ辺りの民家を吹き飛ばしてしまったのだ。
人間の愚かさと自身の強大な力に嘆いた海の神は再び深い海の底へと姿を消した。
海の神の力を持ってすれば四十日もの間止まらぬ嵐を起こすことすら容易いのだ。
海の神の怒りを恐れた人々は鳳凰のスズの塔と対になる九重の塔を造り、カネの塔と名付け海の神を祀った。
それから海の神は数年に一度カネの塔に姿を現していたが、落雷により塔が焼け落ちると海の神もひっそりと姿を現さなくなった。
それから再び姿を現すまでの百年余の時間を静かな海の底で過ごしていたと云われている。
ジョウト地方に住む者ならば知らない人はいない、キクコが生まれる遥か昔から伝わる海の神に関する伝承である。
他にもルギアに関する神話や噂は色々とあり、そのいずれもがルギアとして生まれ変わった彼が成したことである。良い話も、悪い話も、全てルギアに成り代わった彼が起こした事象だ。
特に民家を吹き飛ばした時はひどく後悔したのを彼は生まれ変わった今でもはっきりと覚えている。軽く羽ばたいだだけで民家を吹き飛ばし多くの命を奪ったあの瞬間。
その時生まれ変わって初めて、これが“ゲーム”ではなく“現実”なのだと思い知らされた。自分のような存在は人間の近くにいてはならないのだと悟ったのだ。
「……旅を始めた頃たまたま立ち寄った島で“どくびし”を踏んじまってね、用事で本島に出向いてた医者を呼び戻そうとした途端、唐突な嵐で船が出せなくなったんだ」
その事実でキクコの精神は一気に弱りきり、己の死すらも悟り受容しかけたという。
「その時さ。ルギアが現れたのは」
当時ルギアそのものだった彼は海の底で静かに暮しながらもせめてもの贖罪にと地上が嵐に襲われる度にそれを鎮めていた。
「そんな心根の優しい名前だからこそ、あたしはヒーローになることを勧めたんだよ」
「無理だよ。俺はヒーローなんて柄じゃないし……」
「あんたの何倍も生きてるあたしが言うんだ。つべこべ言わずに信じな!」
「おばあ……」
「だからこんな所で躓いてもらっちゃあ困るんだ! さあ、期末試験を始めるよ!!」
ルールは他の生徒たちと変わらない。試験会場であるこの演習場のどこかにある脱出ゲートから外に出るかキクコに手枷を着けるかのどちらかがクリア条件だ。
「(おばあの個性は“ゴースト”……!)」
ゴーストっぽいことが出来るという彼女の“個性”の前ではノーマルや格闘タイプに属する通常攻撃が無に帰すのは目に見えている。
となるとルギアとして、“ポケモンの技”を使うしかない。
「(くっ、“ふきとばし”で何とか……!)」
両手を後ろから前へと振るうと体育祭で青山を吹き飛ばした突風がキクコを襲う。
「……フン」
が、すぐにキクコの背後から“あやしいかぜ”が吹き荒び名前の“ふきとばし”を相殺してしまう。
「その程度の“ふきとばし”じゃああたしを退かせることは出来ないよ!」
「(ゴーストタイプは“シャドーボール”があるにはあるけど……あれはタイプ不一致だとしても威力がありすぎる。どうすれば……)」
「悠長に作戦練る時間はないよ!」
「あんたは何を恐れている?」
「……」
「……」
「……怖いんだ」
「この凶悪な力で大切な人を傷つけてしまうのが……またあの時みたいに沢山の人を殺してしまうんじゃないかって、怖くて堪らないんだ……」
「……やっぱり、名前は優しい子だね」
10 The Origin.
名前には名字名前となる前の、所謂“前世の記憶”があった。
さらに言えば“前世”の“前世”、前々世の記憶もしっかりと残っており、しかしこの世に生まれ落ちた彼の第一声はあっけらかんとしていた。
ああ、またか。
赤ん坊故に上手く発音はできず、おぎゃあという在り来たりな産声となったが、彼の中ににあるのは“二度生まれ変わった”という感覚だった。
そんなあっさりとした感想が出てきたのも、前世で生きすぎてしまったが故だろう。
しかし今回は“人間”として生まれたのだから喜ばないはずがなく、平凡な人生を享受できるものとすっかり信じ込んでいたから今世がどんな“世界”であるかを深く考えていなかったのである。
最初の人生はゲームが好きな普通の男だった。
仕事は疲れることの方が多いがやり甲斐もあり、働いて得た金銭で大好きなゲームも出来、自分好みの綺麗な恋人もいて、まさに順風満帆な人生だった。
11 Camp school.
「名字はピクシーボブが付きっ切りで特訓している」
「それが君の本当の“個性”なの……!?」
「(このフォルムだと加減が出来ないのでピクシーボブはどこか安全な場所にいて下さい)」
敵が隙を見せた一瞬が勝負だった。
「(今だ!!)」
“トリック”。相手と持っている道具を交換する技だがこちらが何も持っていなくても成功する。つまり今名前の手の中にはしっかりとした感触があり、技が成功したことを示していた。
「!」
「お前が探してんのはこれかよ?」
「そういえば君も必要なんだったな」
「……ここは……?」
「おはよう。ここはヴィラン連合の仮アジトさ」
「勝己くんは……」
「彼なら隣の部屋で勧誘を受けてるよ」
「勧誘? 彼はそんなに弱い人間じゃないから無理だよ」
「強制的に従わせる“個性”とか持ってたら良かったんだけど……生憎今はストックがない。少々手荒だけどアレでいこう」
「アレはまだ実験段階でしょう」
「……?」
「ちょっと自我を失っちゃうお薬さ」
『ギャァァース!!』
「龍!?」
「……名前?」
銀色に輝く羽根が一枚、彼らの足元に舞い落ちた。
爆豪と共に敵連合に捕まった夢主がおクスリで強制的にルギアになって暴れまわっちゃうけど誰もその竜が夢主だと気付かず敵の一人と決めつけ対処しようとする中、轟だけが夢主であることに気付いて諫める。
よって夢主の名前を呼んだのは轟君です。
八百万ルート→合宿で爆豪と共に攫われ、薬か何かで精神混濁状態にさせられ本来の姿に戻ってしまい助けに来たヒーローたちが敵認定している中、八百万だけが名前であることを見抜き愛情で正気に戻す。
轟ルート→合宿で爆豪と共に攫われ、薬か何かで精神混濁状態にさせられ本来の姿に戻ってしまい助けに来たヒーローたちが敵認定している中、轟だけが名前であることを見抜き愛情で正気に戻す。
12 Student house.
男子寮最後は最上階の一番奥、名前の部屋だ。
部屋の奥、ベランダへ続く窓に隣接するように置かれたるはキングサイズベッド。
マットレスは体圧を分散させ、まるで無重力かのような最高品質の寝心地を保証してくれる。敷き布団は職人の手作業により丁寧に綿が詰めらた物で、羽毛布団はグースを使用。枕は名前の身体に合わせたオーダーメイド品でカバーも肌触りの良い。どれも至極の逸品揃いである。
何れも国立高校進学祝いにと祖母のキクコが買ってくれた物だ。
元々趣味がゲームと睡眠くらいしかなく、今まで誕生日に欲しい物を尋ねても特に挙げなかった名前だからこそ、それまでの分も合わせたプレゼントとなったのだ。
ベッドと壁の間にかろうじて存在している隙間にはぴったり収まるサイズの細長い机が置かれベッドに座って作業が出来るようになっている。
机上は勉強スペースと趣味スペースに分かれており、手前には教科書類や参考書がブックスタンドにより綺麗に並べてあり、奥にはノート型パソコンや液晶テレビだけではなく様々なゲーム機器までもが取り揃えられている。
その他冷蔵庫やタンス、サイドテーブルの類は必然的に手前の空いたスペースに並べられている。最早ベッド上で生活するための部屋と言っても過言ではない。
今まで見てきた部屋と比較すると八百万のそれに近いが天蓋が無い分部屋が広く感ぜられる。
「ベッドデカすぎ!」
「人間の一生の三分の一は睡眠に費やされるから質を高めるのは当然だよ」
流石は百年単位で睡眠を繰り返していただけはあると言ったところか、睡眠に対する欲だけは人一倍深く、こだわりも強い。
「あと二人くらいは余裕で寝れるから最高の眠りが欲しい子は何時でもおいで」
「……お前そういうこと真顔で言うなよな」
「冗談と分っていても誘いに乗っちまいそうで怖いぜ」
「? オレはいつだって本気だけど。男でも女でも、オレは構わないよ」
「なんてね」
「どっちなんだよもー!」
・必殺技作る
「必殺技……って程じゃないけど、攻撃技ならいくつか」
「尻尾系の技だけでも三つ。他にも飛行、エスパー、氷、電気、地面、鋼、ノーマル……」
・仮免試験、救助
「生きろ!」
「苦しむのなら生きることに苦しめ! お前はまだ生き足りてない!!」
「君たち、喧嘩するなら試験が終わってからにしろよ。これが本当の敵との殺し合いだったら君たちはもう死んでるよ」
▼以下入れる場所を決めかねている文章
・轟の“個性”について
「これが俺の“個性"だ。“半冷半燃"っつって右半身が氷で左半身が炎なんだ」
「フレイザード……」
「? ふれい……?」
「いや、何でもない。気にしないで」
・夢主の親について
「オレ? 両親はいないよ。母さんは俺を産んですぐに死んだし父さんも俺が生まれる前に死んだんだ」
「……悪ぃ」
「いいよ別に、気にしてないよ。家族なら菊子おばあがいるから」
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