目には目を



※原作時間軸だけど一応誕生日ネタです


「パンダ先輩、狗巻先輩、これは流石にダメです」

 珍しく怒っていた佐狐は自身の目の前に正座をさせているパンダ先輩と狗巻先輩に向かって仁王立ちで頬を膨らませていた。
 何故こんな状況かというと既に知っているかもしれないが、パンダ先輩と狗巻先輩が揃って釘崎と真希さんの制服を勝手に盗って着ていたからだ。既に釘崎の制裁は受けていたものの、被害には遭っていないが側から見ていて不愉快だった、として佐狐が釘崎の後に叱りつけているのであった。

「…わ、悪かったって…もうしません」
「ツナマヨ…」

 普段怒らない人間が怒ると怖いし、精神的に結構なダメージを喰らうのは本当らしい。あれだけノリノリだったパンダ先輩と狗巻先輩は頭をこれでもかと下げて、かなり落ち込んでいる様子に見える。

「そもそも、どっちがこんな幼稚なこと言い出したんですか?」

 やはり怒りが滲み出ている佐狐の言葉に、パンダ先輩が「…五条先生」と呟いた。狗巻先輩も「しゃけ」と続ける。聞いていた佐狐も俺も釘崎も真希さんも、思わず口をポカンと開けてしまう始末だった。

 するとそこにドタバタと煩い足音が近付いてくる。その足音は教室の手前で治ったと思いきや、勢いよく扉が開かれた。

「ジャーン!釘崎野薔薇でぇ〜〜――」
「五条先生、こちらに正座してください」
「あ、はい…」

 渾身のギャグのつもりで入ってきたであろう五条先生だったが、あまりにも冷徹に指示を出した佐狐に瞬時に空気を察知し、特段言い訳を述べるわけもなくパンダ先輩の隣に潔く正座をする。
 今この場でおそらく一番怒りを露わにしているのは佐狐のようだ。被害に遭っている釘崎と真希さんも怒ってはいるものの、佐狐の圧に少し圧倒されていた。

「それ野薔薇ちゃんのスカートですね?」
「棘、聞かれてるよ」
「五条先生に言っています。あと人と話をする時は目を見てください」
「すみません」
「その胡散臭い目隠しは今は取ってください。余計に怒りが増します」
「ごめんなさい」

 淡々と述べる佐狐はパンダ先輩たちを叱るときよりも遥かに怖かった。そして佐狐は怒ると静かにキレるタイプなんだな、と改めて思った。
 五条先生は佐狐に言われた通り、そそくさと目隠しを取っていた。そして最後の手段として、かなりぶりっ子をした上目遣いを佐狐にしてみせている。

「顔が良いからって何しても許されるわけじゃありませんよ」
「すみません」
「…泉、完封してんな」
「被害に遭ってないのに一番怒ってくれるなんて、本当に良い子ねぇ」
「…そもそも真希さんも野薔薇ちゃんも甘いです!もっと叱りつけないと、こういうタイプの人間は何度だって繰り返しますよ?」
「「ごめんなさい」」

 何故か怒りの矛先が真希さんと釘崎に向きつつあるところで、佐狐はため息をついてもう一度五条先生たちの方を振り返る。

「なんでこんなことしたんですか?」

 佐狐は相手を一方的に叱りつけるわけではなく、きちんと五条先生たちの意見を汲み取ろうと歩み寄っていた。俺はその姿勢に感心した。

「…楽しそうだなって、思いました…」
「そうですか…」

 あまりにも呆れた回答に俺も釘崎も真希さんもため息を漏らす。しかし佐狐は間髪入れずに応答して、こう言った。

「五条先生、無限を解いてください」
「え?」
「野薔薇ちゃん、金槌貸してくれない?」
「え?ちょっと、それは流石に」
「貸して」
「………。」

 まるで釘崎まで悪いことをしてしまったかのように萎縮していた。真顔で釘崎に催促をする佐狐は正直怖かったから、釘崎も従うざるを得なかった。釘崎から金槌を受け取ると、佐狐はゆらりゆらりと五条先生の目の前に歩み寄る。パンダ先輩が「泉、流石にまずいって。それこそ犯罪だって」と言うが「犯罪だって自覚あったんですね?」と墓穴を掘ってしまっていた。

「泉、本当にごめんて。泉そういうことする子じゃないでしょ?」
「五条先生は最強なんで、このくらいどうってことありませんよね?」
「待ってせめて会話はしよ?」

 五条先生の話を全く聞き入れな佐狐は釘崎の金槌を振り被る。隣で次は我が身と引き攣るパンダ先輩と狗巻先輩も硬直していた。五条先生が必死で俺たちの方にSOSの視線を送ってくるが、揃って見て見ぬふりをしていた。正直今俺たちがとやかく言うと、その怒りがこちらへ向いてきそうだったからだ。
 五条先生は俯いているが、あれは恐らく演技だろうというのが見て取れる。本気で佐狐が金槌を振るうわけがないと高を括っているのだ。

 だから、本当に佐狐が金槌を振り下ろしたとき、思わず俺たちまでも息を呑んでしまった。

「五条先生、もう二度とこんなことはしないでください」
「………。」
「真希さんも野薔薇ちゃんも強いですけど、まだ未成年の子どもです。そして五条先生は子どもたちを導く教師なんですよ?その辺りを弁えてください」
「…………はい」
「もっと大きな声で!」
「はい!」

 金槌は流石に五条先生本人には当たらなかったが、すれすれの所の地面にのめり込んでいた。まるで子どもを叱りつける口調の佐狐と言いなりになっている五条先生に思わず笑ってしまう。佐狐はそのまま「ちゃんと二人に謝ってください」と五条先生を始めパンダ先輩と狗巻先輩にも念押しする。すると三人とも正座のまま頭を下げて謝っていたので、すかさず釘崎と真希さんがスマホを構えていた。
 まだあまり怒りが治ってないように見える佐狐は「こういうの本当に生理的に無理ですから、二度目はありませんよ」と釘を刺していた。そして更に俺の方を向いて佐狐が口を開いた。

「伏黒くんも自分以外大体悪ノリする人たちなんだから、ちゃんと目を光らせてないとダメでしょ」

 キリッとこちらを見つめる佐狐の言葉に少々驚いてしまう。俺は今とんでもないとばっちりを受けているんじゃないだろうか。

「今度から気を付ける」
「うん、お願いね」
「おう…」
「ドンマイ伏黒」
「恵、怒られてやんのー」
「五条先生やっぱ金槌喰らった方が良かったんじゃないですか」
「行く?やっちゃう?」
「泉、真顔で言うのやめろ」

 その後五条先生はパンツ一丁で本日の主役という襷を掛けさせられ、その写真が佐狐のフォルダに収められていた。恐らくこの場にいた全員が佐狐を怒らせてはいけない、と学んだはずだ。


 Happy Birthday to SATORU!!!
(全然祝ってもらえませんでした)

   

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