行燈によって照らされた薄暗い部屋に吐き出された煙が広がる。その煙をぼんやりと眺めて、真昼は「やっぱこの匂い落ち着くなあ」と呟き、市乃の膝を枕に寝返りをうつ。野郎が野郎に膝枕とは花もなければ面白みもない。という文句は今更ぼやく気にならない。ただ、人の膝を勝手に占領してはごろごろとくつろぎ、腰に抱き着いてみたり手を伸ばして髪に触れたりと自由にする姿は猫のようだと思う程度に好き勝手をさせていた。
「腹減ったかも」
「突然転がり込んできたくせに飯まで用意してもらえるとは図太い神経だねイ」
「まっさか、そこまでの贅沢を要求するつもりはねーよ。こうやって服まで貸してもらってるし?」
再び寝返りをうち、市乃の顔を見る。「それにしてもこの着物、肌触りいいな」と、袖口をぱたつかせて気に入った旨を伝え、更に「これが今時流行の彼シャツとかそういうやつか」と冗談を付け加える。
「それは恋人の間で成立するもンだろ」
「あ、そーなの。じゃあこれはそう言わないな、残念」
大して残念とは思っていないのによく言う。呆れながら市乃は寝返りをうって肌蹴た真昼の着物を整え、露出した胸元や太ももを隠す。その動作ににんまりと目を細めて「なあに、むらっとした?」と茶化す真昼には額を軽く叩いておく。
「ったくもう。抱くときは余裕なさそうに顔しかめて求めてくるくせに」
「…………」
「あたっ」
さらにもう1発叩く。しかし真昼は「照れ隠しに暴力はよくないぞ」と茶化すのみで口を閉ざす様子は見られない。仕方がないので黙れと言うように唇に指を押し付けてみると、それを指の腹を撫でるように舌先で舐めてから、当然のように咥えた。
「っ、本当に淫乱としか言いようがないなァ」
「その淫乱に落ちたお前はどーなんの?」
指の腹から付け根へ、更には指の間へと舌を這わる。徐々に垂れてくる唾液を舌で掬う。唾液が口の端から零れて顎を伝ってくると、吸い付いて喉を鳴らす。その光景をじっと見降ろし、指の先から感じる快楽に身体を強張らせる市乃を煽るように笑い、最後に甘噛みをして口を離す。
「おにーさん」
「……なんでい」
「頑張って平静装っているところ悪いけれど、ここの反応は隠せてないぞ」
態勢をうつ伏せに変え、腰に腕を回す。そして先程の行為で反応し、勃ち始めた局部を布越しに唇で擦る。着物と下着の厚みがあるため、その刺激はもどかしいものとなり市乃は眉間に皺を寄せた。
「……お兄さんはさあ、何も聞かないよなあ」
「聞いたところで答えるつもりもねェだろ?」
「はは、それもそーだ」
聞いてこないからこそ今回、ここに転がり込んだわけなんだけど。という言葉は呑み込み、心の中に留める。代わりに「ただの兄妹喧嘩なんだけどな。妹の機嫌がすこぶる悪いからほとぼりが冷めるまで避難しようって感じ」と、今頃ふくれっ面でやけ食いをしているであろう夜子を思い出す。
「兄妹喧嘩、ねェ」
「一緒に暮らしているといろいろあるってものさ」
「ふうん」
やっぱりこれ以上掘り下げてくることはしないよな。と、小さく笑いながら足をぱたつかせた。その仕草で着物が捲れ、白い太ももが露わになる。灰を落とす前にと手にしていた煙管を煙管盆に片付けながら、空いている手で内ももを撫でる。
「んっ、ヤるきになった?」
「これだけ煽られればなァ」
「さっきまで見ないようにして我慢していたくせに」
「うるせイ」
顔を上げてにんまりと笑う真昼の顎を掴み、噛みつくように唇を合わせる。真昼が薄く唇を開いて舌を差し出すと、その要求に答えるように舌を絡めとる。数分にも満たない口づけを終えた頃には真昼の目には熱が帯び、市乃の目は獲物を目の前にしたヘルガーの如くぎらついていた。
「その目、好きだな」
「そーかい」
いとも容易く押し倒され、触れられる度に吐息を零す。先程よりも大きくなっている乃市のものに目を向けてから、これは帰るのは朝方になるかなと小さく笑い「今日はナカに欲しい気分かな」と、呟いた。
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