自分から聞かなかったことが悪いと言えばその通り、そういうのは予め確認しておくべきだ。
言い訳を一応しておこう。スクール時代の友人を含めて周囲の人たちはアピールが激しかった。私の手持ちのほとんどの出生が野生だから、生まれた日時なんて知らない。だから私の手持ちになった日で祝っていた。
「聞いてないんですけど、誕生日だったとか」
「そんなに拗ねないでくださいよー」
「拗ねてるんじゃなくて怒ってるの。何も用意できてないじゃん」
「え、でも今日のご飯はやたら気合入ってるじゃないですか」
「ぎりぎりで間に合わせたの! それしか準備できなかったんだってば!」
温かな料理が並んだテーブルをばしばし叩いて訴える。そんな私に対して「手を痛めますよ」なんて笑いながらやんわりと止めてくる。手を痛めるのは避けたいところだけれども、今はそんな場合ではなかった。
「私の誕生日知っているくせに」
「そりゃあ、皆さんが騒いでいましたしね」
「ミグくんの誕生日も同じように騒がしくしてよ!」
「フブキさんってそういう無茶ぶり多いですよね」
そう。あろうことか私は恋人であるミグくんの誕生日を知らなかったのだ。知らないまま当日を迎えた。何度も言う。聞かなかった私にも非はあるけれど、教えてくれなかったミグくんもミグくんだ。酷い。
「プレゼントはフブキさんでいいですよ」
「今真面目なお話をしているの」
「真面目に答えたんですけどねぇ」
プレゼントを買いに行く時間もなくて本人に聞いてみればこれだ。それはもう輝いた笑顔で言われた。腹が立ったので可愛らしい顔を叩いた。完全に八つ当たりの自覚はある。それもへらへら笑って気に留めないからもう、もう!
「美味しいご馳走をいただけるだけで十分なんですけどね」
「私が満足しないの。お祝いしたいの〜!」
手を合わせて料理を頬張り始めるミグくんを見ながらじぶんも食べ始める。うん、我ながら美味しくできあがっている。おろし玉ねぎを混ぜて作ったたれを絡めたお肉もほどよく柔らかいし、噛めば肉汁も溢れるからなおよし。
「じゃあ明日買い物行きましょう」
「ミグくん、それは前から決めたことだからね。新しくできたポケモン用の雑貨屋さんに行くって」
「ついでに可愛らしいリボンでも買いましょう」
「え、何。ミグくんつけるの? 可愛くしてあげようか」
「最近大人しくなったと思ったら諦めてないんですか」
「めげない、折れない、諦めない」
部屋の電気に反射して輝く少し跳ねた髪とか、雲一つない夕焼けみたいな目とか。顔立ちも爽やか系で可愛い寄りだから絶対女装したら私好みの女の子になると思うんだよね。パンツスタイルにするのもいいだろうけれど、あえてそこを身体のラインが隠れるふんわりとしたロングワンピースに着てもらいたい。
「という野望を捨てていません」
「今すぐ捨ててください」
「リボンをカチューシャ風にするのもいいなって」
「リボンは俺が使うんじゃなくてフブキさんにですからね」
「……プレゼントは私、しないからね」
「俺が縛るので安心してください」
「縛るって言った! 薄々そんな気配はしていたけれど、正直に言いやがった、このスケベ!」
すぐにそういう話にもっていくんだから! テーブルから身を乗り出して頬を抓れば手首を掴まれる。抓るのをやめて頬を撫でてみれば、嬉しそうに目を細めてすり寄られる。……こういうところに弱いんだよなあ。
「はあ。……来年は絶対に祝うからね」
「じゃあ今年はフブキさんがプレゼントに!」
「なってもいいけど縛られないからね!」
食い気味に返せば、「分かってますって」と少し残念そうな顔をされる。でも却下なものは却下。縛られると動けないし、抱き着けないし、顔見辛いし。安心できない。
「縛られるよりミグくんに抱きしめられたいし」
「なんでご飯食べてるときにそういうことぶっこむんですか」
「? いろいろ酷い内容をぶっこむのはミグくんの方じゃない」
「そういう質の悪いところありますよね」
よく分かんないけど、お誕生日おめでとう。
分かってないところもいいとことだと思いますよ。ありがとうございます。
「今年の目標はミグくんの敬語を取っ払うことで」
「新年の抱負みたい言わないでください」
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