調和する世界
*多重転生ヒロイン
*one piece→FGO
*舞台はFGO
*ぐだ子(リツカ)から姉さんと呼ばれています
私はかつて神の贄として死んだ、ただの巫女。
代々神に仕え祈りを捧ぐただの女であったが、ある日贄として選ばれ、たしか海に沈められて死んだ。
だが海の神はこう言った、素質があると。
それは神の気まぐれだったのかもしれないけれど、再度体を与えられた私は、『調和する者(balancer)』の役目を与えられ世界に落とされた。
その役目は酷いものであった。
とある世界では星の名のもとに戦う人間達を育て、支え、運命を共にし、とある世界では天下統一を目指す人間達を育て、支え、見届けた。
様々な世界を見た。様々な人を見た。様々な苦難を乗り越えた。
そして…様々な死に方をした。
神はこういった。
【何千年も前に地に伏した悪神が甦ろうとしている。
その鼓動が、蔓延る悪の力となり、本来あるべき『物語』におけるバランスを壊しつつある。
『物語を紡ぐ者(title)』をみつけよ、そして力となれ。
これは茨の道であろう。これは救いの道であろう。
救いとは、茨の鞭で打たれることである。
だがその茨を受けて尚、進むことのできる者が、救われることを許されるのだ。
決断せよ、我が寵愛の子よ】
私はこういった。
「それが私の運命ならば、よろこんで受け入れましょう」と。
**************
それは、1つの予感であったのかもしれない。
いくつもの生と死を繰り返し、
いくつもの生き方を学び自分の力とし、いくつもの死を以てその世界を導いた。
そしてもう何度目かすらわからなくなった世界で、私は相変わらず戦場に立ち続けていた…ある日の夜。
じくりと心の臓が何かに締め付けられるような、ゆっくりと、でも確実に近づく足音のような、気味の悪い予感に蝕まれた。
しん、と静まり返ったいつもと変わらない夜の筈なのに、私の鼓動は、まるで秋を告げる虫たちのように、静まることを知らない。
「………」
真白いシーツに横たわる体を動かして、少し大きく息を吐く。
何かが、何かを告げている。
この予感には覚えがあった。
そして、その予感には嫌な思いがあった。
そう、自分が関わった人間に、死が近づくときに。
『…姉貴、本当に出ていくのか?』
『なあに寂しいの?』
『な…っ、ばっかそんなはずねぇだろ!!
姉貴なんていなくたって問題ねぇし…』
『あーはいはい、強いもんねぇ…エースは』
『………なあ、姉ちゃん』
『なあに』
『一緒に、寝て良いか…?』
『愛してくれて、…ありがとう…っ!!!!!』
「……っ、!!!!!」
夢と現をいく意識の中で、みたものは…。
いくつか前の世界で愛した弟の記憶であった。
幼い3人の兄弟の姉となり過ごした日々と…そして、その3人の兄弟の長男が、胸を赤くして、死ぬ、その瞬間。
跳ね上がった体と、脈打つ心臓、そして流れ出る汗。
これは【本物】であろうことが何となく予想がついてしまったのだ。
ああ!…なんということであろう!
私は力を得た。守るために。
私は知識を得た。支えるために。
だからこそ、力づくでもどんなに傾いた【天秤】でも覆せる自負はある。
だが、今みたのは…みてしまったのは…【私が終わった世界】の話である。
即ち、これは…正当な流れであり、運命。変えられない…もの。
「…なんて、こと、…」
死ぬ、死ぬというのか。あの太陽の子が。
生まれながら人という生き物に鞭を打たれ、尚前を向いて進み続けてきた、あの子が。
これが、本当に正しいのか。
これが、次を繋ぐための【正義】だというのか。
受け継がれる意志?受け継がれるもの?
それがどんなに物語の要になろうとも、許せる筈がなかった。
だって、あの子は…私の、大切な…。
「どうかしたか、名前?」
「………」
「……ひどい、面構えだが」
「…ゆめ…、…しぬの、私の大事な子が」
「…それは同情に値するが、人間は必ず死ぬものだ。
今更そう悲観するものでもあるまい」
「馬鹿言わないで!!あの子に死ぬ理由など…ない!」
「理由?人が死ぬのに理由などないさ。心臓が止まれば、死ぬ。…それだけだ」
ひたりと、酷く冷たい手が私の額に当てられる。
心臓まで冷気が流れ込んでくるような、その温度に、ひとつだけまた大きく息を吸う。
警報の如く鳴り響く鼓動は相変わらずだが、少しだけ、頭が冷えて正常な思考が回るようになってきたのを感じた。
「夢は、夢だよ。マスター」
「……いいえ。私は夢をみない。
いつも…現実だけが、流れ込むの」
「ならば抗えばいいさ。
アンタには力がある。そして武器もある」
金の、瞳が私を見据える。
いつも表情など欠片もみせないのに、ぎらりと光る炎がみえて。
自分を機械だと謳うこの男が、怒りという感情を露わにしているのがわかり、沸騰しかけていた感情が凪いでいくのを感じた。
「少しは落ち着いたかね」
「……ええ」
「なら、思考を回せ。
問題はさっさと排除すべきだろう」
全くこの英霊は損な性格をしている。
言葉は無関係を装うのに、その本能は人を救うように動く。
堕ちた正義というこの男が、だ。
これではまるで、あの赤いのと変わらなくなる…いや…
あの赤い方であったらここで紅茶でも出てくるところか。
なんて、緩んだ頭で考えていることがばれたのか、浅黒いその手が私の頬に触れたかと思うと…。
「いだだだっ、いたいって!!!」
「余計なことを考える余裕ができたようで結構なことだ。
どれ、聞いてやろうか名前?
そのお粗末な頭で、何を考えていたのかね」
ぎゅうううと、たださえ英霊という人外の力で摘ままれた頬は、それはもげてしまうと思うぐらい痛い。ほんとうにいたい。
頭を振って抵抗しても、それはしばらく続けられた…鬼である。
「いたたた…。でも…筋力でぃ「ほう?」…なんでもないです…」
背筋が凍るような薄い笑みを向けられては、私に勝つ手段などなかったのだ…情けないことに。
**************
気が付けば朝日が昇り、夜の帳に染められていた世界に光が差し込んでいた。
あれから事情聴取の如く、1つ1つを細かく聞かれ、ほぼすべてを話してしまったために一睡もせずに夜が明けてしまった。
だが、おかげですっきりしたと思う。正常に動き始めた思考回路で、ある程度の推測ができたのだから。
ポイントはそう、何故今になって向こうの世界の夢をみたかである。終わってしまった世界との繋がりは、私の死を以って切れるはずで、そうすると記憶には残るだけであるので、過去の夢はみるけれど、【新しい】夢はみない。みれないのだ。
「……とりあえず、おなかすいた」
「腹は減ってはなんとやら、か。
アンタらしいな」
背伸びをすると、ぱきぱきという響いてきて、鍛錬不足かねという嫌味が飛んできたが、否定できず無視をした。
シャワーを浴びて着替えると、なんとなく気分が晴れる。
勿論奥底に抱え込んでしまった嫌な予感というものは、相変わらず重いままではあるが。
ひらりと揺れる黒に金を縁取った腰布が先を行く。
食堂に向かう道のりも、なんとなく違うものに見えてしまうのは、
私の心象心理というやつなのか。
「おはよう、名前。
今日は早いな。どうしたんだ?
熱でもあるのか?」
「よっ、名前。
随分早ェじゃねえか。どうした?
頭でも打ったか?」
「おはよー!名前姉さん。
今日は早いね。なにかあるの?」
食堂について、私の顔を見る度に飛んでくる言葉に、思わず口角が引き攣る。
確かに私の日頃の生活はあまり良いとはいえない。
というか昔から朝は苦手であり、早起きという言葉を聞くと鳥肌が立つぐらいである。
だが、こう口々に言われると改善したくなるような気もしなくはないが、やはり気のせいであった。
なんともいえない気分のままに朝食を食べて、食後の珈琲を啜る。
血糖値が上がったためか、唐突にやってきた眠気にぼんやりとしていた時。
カルデアの通信用としてもらった、通信機がぶるぶると音を立てた。その瞬間、杯に満ちた水が零れ落ちるように込み上げてきた【何か】に、時が止まる。
なんとなくこれは、予感であろうことはわかっていた。
「…?、名前姉さん?」
私の様子を察したのか、顔を覗き込んできたリツカの動きにつられて流れ落ちた、その蜜柑色の髪が、…【彼女】の髪と重なった途端に、脳裏に過ったのは、海。
果てしない大海原を行く船に、舵を切り先を示す航海士、静かにその時を待つ緑の髪をした剣士に…。
「…マスター」
「え…。ああ、ごめんなさい」
溢れ出した過去の記憶に意識をやり過ぎてしまっていたのだろう。
聞き慣れた低い声に呼び戻された私を、心配げにリツカが見つめていた。
相変わらず鳴り響く通信機を握ると、席を立つ。
「ごめん、リツカ。またあとで」
ぽんぽんとその頭をなでると、またどこか遠くで海鳴りが聞こえた声がしたのだ。
**************
「…はい」
『…っ!、…つ、通じた…?名前?、名前なの…?
ほんとうに…?』
通信機の通話ボタンを押すと耳に入ってきたのは、オレンジの似合う少女…いやもう女性と表現した方が良いのか。
彼女とは羊をモチーフとした船に乗っていたときからの付き合いである。
確か向こうには、電伝虫という通信方法があったので、それから電話を掛けて来た…ということだろうけれど、どうやって繋がったのだろう。
というかあのかたつむりはどうやって繋がっているのだろうか…。
『…ねえ! 名前?…ちょっと!聞いてるの!!』
「き、聞いてるって…」
『アンタがそういうときは絶対聞いてない時なのよ!
もう、ほんと…変わってないわね』
「……ナミ」
『って、言っている場合じゃないの。聞いて、大事な話よ…』
どうやら懐かしい声を、懐かしんでいる間もないようだ。
彼女はこういった。
エースが処刑されると。罪状はその血にあると。
海賊王の血を引くこと自体が罪であり、その存在自体が許されるものではない、と。
これは大戦争となるだろう。
海にその名を轟かす四皇のうちの1人白ひげと、力を以て海賊を取り締まる海軍との全面戦争が起きる。
ルフィもそれを知って救出に向かっているらしいこと。
「…ああ、…なんて、いう…エース…」
『だから、名前、お願い…っ!力を貸して…!
嫌な予感がするの、ルフィなら大丈夫って思いたいけど、
でも…もし、…もしもルフィまで…っ』
涙の落ちる音が、聞こえた。
気の強い彼女が零す言葉は、悲痛で、酷く私の心を抉った。
電伝虫とこの通信機が繋がったことはとんでもない奇跡である。
だが、これ以上の奇跡は起こりうるのだろうか?
たとえば…私が、あの世界にまた戻ることが…できるのだろうか?
「ねえ、…ナミ。実は私はもう、死んd「特異点だ、マスター」……え?」
廊下の片隅で通話をしていた私の後ろから声が聞こえたかと思うと、ばさりと紙の束が渡される。
そこに書いてあったのは、どこかで見たのと同じ地図。
「これは…、赤い土の大陸(レッドライン)と…偉大なる航路(グランドライン)
東の海、西の海、南の海、北の海…。まさか、ここは…。その特異点は」
ああ、どうやらこれは計算された奇跡のようだ。
私を此処まで送り込んだあの海の神の声が、聞こえたような気がして、ふと自然にこみ上げたそれを、ぐと飲み込んだ。
「…ごめん、ナミ。待ってて。すぐ行くから。
私が…助けるから、必ず」
早口でそう告げると、すぐに通信機を切る。
そしてこの地図を渡してきた英霊をみると、言いたいことはわかっていると言わんばかりに鼻で笑われた。
「さて…編成を組まないとね」
「ふん、面倒だな。俺がいれば充分だろうに」
「あのね、相性というものもあるんだから…毎回言っているけど!」
こうなったら、赤い英霊と青い英霊、金色の王様でも一緒に組んでやろうかと思うけれど、この資料を態々届けてくれたのだ。しかも端々に皺が走っていることを考えると、慌てて持ってきてくれたのだろう…この英霊が。
まあ、今回ばかりは許してあげようか。
懐かしい海の音色が、私を急かす。私の行く先は、血で血を洗う戦場。
でも私には武器がある。
だから、きっと正義は私の手に。
待っていて、エース。
*終わり*
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