分かっていた。
臆病な僕は、なまえの自由を奪っている。
自分に縛り付け、何処にも行かないようにといつも見ていた。でも、それは今日で終わりにしなければならない。終わりにさせなきゃいけない。
なまえの為にも。
僕自身の為にも。
だからもう、なまえは泣かないで。
微妙に寒気がして目が覚めた。
微かに人の気配がしたのに、談話室には誰もいない。もしかしたらゴーストかもしれない。彼等は自由気ままにホグワーツ内をよく彷徨っている。たまに正面からぶつかるところを見るけれど、正直見ていても気持ちの良いものではない。
寝ていた間に夜になったようだ。風邪は少し良くなったのか、頭が痛いだけで特に問題はなかった。今日はもうなまえに会えないだろう。仕方がないので渋々部屋へと戻った。部屋にいたのはピーターとジェームズだけで、シリウスは何処にもいなかった。まだなまえと何処かにいるのだろうか。
「リーマス! 一体君は何処で何をしてたんだい?!」
「…何って、ずっと談話室にいたけど……」
「大変、だよ! なまえが!」
ピーターの口からなまえの名前が出てくるなんて思いもよらなかった。動揺を隠すように、ぎゅっと拳を握る。
「なまえがどうかした?」
「いなくなっちゃったんだ!!」
「…いなくなった?」
「今シリウスとリリーが探してくれているけど、まだ見つかってないんだ」
「…忍びの地図は?」
「………何処にも見当たらない…」
世界が一瞬にして暗闇に包まれたみたいに、目の前が何も見えなくなった気がした。なまえがいなくなったって「一体どうして」なんて聞く必要もなく、原因は間違いなく僕だ。
気が動転してなまえの手を振り払って、おまけに酷い言葉をなまえに向けて言い放った。僕なんかにもう会いたくないのか、それともただ単にいつもの散歩なのか分からない。
何かあった時、いつも行く場所と言えばあそこしかない。忍びの地図に名前が出ないのは、たぶんなまえの魔法のせいだろう。まだ完璧とは言えない地図だからこそ綻びはある。
「リーマス、何処行くの?」
部屋を出ようとして、ピーターに呼び止められる。僕はなまえを探しに行くんじゃない。ただ夜の散歩がしたいだけだ。探すなんて絶対に言わない。
小さい頃からそうだ。なまえがいないことに気付いて探して見つけた時、いつも哀しい顔をする。そんな顔を見たくなくて、いつしか黙って帰って来るのを待っていた。何も言わずにいなくなるのは、見つけて欲しくないからなんだと段々分かってきたからだ。
今回も探して欲しくないのだろう。
けれど、行かなきゃならない気がした。今日は探して欲しいんじゃないかと思った。こういう時は誰にも気付かれないように出て行くはずなのに、みんなに気付かれてしまっている。
今回の散歩はいつもと違う。
だからこそ、探さなくちゃ。
「夜の散歩だよ」
「なまえを探しに行くんでしょ?」
「探しには行かないよ」
「リーマス?!」
「なまえのことは心配しない方がいいよ。朝になれば戻るはずだから。シリウスとエバンズにも伝えておいて」
背後から聞こえる疑問に返事すらしないで、寒々しい廊下に出た。心配でたまらない感情を外に出るまで我慢して、誰もいないことを確認してから一気に走る。走っている振動で頭がガンガン痛くなってきた。
そんな痛みを振り払い、散歩と偽り僕は偶然を装って君を見つけるんだ。走っているから散歩じゃないと言うのは聞かないことにして。
その裏に隠された感情は
想っちゃいけないのに君への想いが募っていく
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