やっとなまえに謝ることが出来た。

なまえは浮かない顔をしている。もう涙は止まっていた。笑顔のはずなのに、悲しそうに見えてしまうのは何故だろう。

「………リーマス……あの…」
「何?」
「これ、リーマスのでしょ?」
「それ……」
「あの日拾ったの。魔法で綺麗にしたからまだ食べられるはずよ」
「…ありがとう……」

あの日落とした秘密のチョコレートは、なまえが食べずに持っていてくれたみたいだ。別に食べても良かったのだけど、そういうなまえの優しさが変わっていないことにホッとする。

なまえは何の気持ちもなく優しくしてくれているのに、僕はそれを素直に受け取ることが出来ない。なかなか受け取らない僕を見かねて、なまえは僕の手をとって、チョコレートを手に乗せた。

あまり優しくして欲しくない。
優しくされると、止まらなくなる。


「リーマス、どうかした?」
「……なまえ………僕は…ッ」

「なまえ!!」

ハッとして振り返ると、焦った表情のシリウスがいた。シリウスは僕となまえを交互に見て、眉をひそめていた。

シリウスの気持ちを忘れていた。シリウスがいない今、僕は一体何を言おうとしていたのだろうか。焦ったシリウスを見て、罪悪感が押し寄せてきた。

「なまえ、心配したんだぜ?」
「………ごめん…」
「リーマスが先に見つけてくれててよかったよ」
「それは違うよシリウス」
「はっ?」
「僕はただ散歩をしに来て、たまたまなまえに会っただけだよ」

苦しい言い訳なのは自分でも分かっている。だけど、今此処でこう言わなければ、シリウスは納得しない。どっちにしろ僕が先になまえを見つけてしまった時点で何も言わずに飲み込んでくれるか分からないけれど。


「散歩? リーマスは相変わらずだな」

「本当に散歩なのか」と言いたげなシリウスの言葉に、僕は適当に「まあね」と答える。また、居づらい雰囲気になってきた。二人の邪魔をしているようで、胸が圧迫されたように苦しい。その苦しみと同時に、何故か涙が溢れてきた。流れないように堪えながら、僕は笑った。


「シリウスが来たから僕はもう行くよ」
「え…?」
「散歩も飽きたしね」

「ねえリーマス…」
「シリウスが待ってるよ」
「リーマス…」
「なまえの想いはきっと届くから」
「…違うよ、リーマス…」
「僕は先に行くから」
「リーマス誤解してる」
「じゃあね」
「待って! リーマス!」

「チョコレート、仲良く分けなよ」

返ってきたばかりのチョコレートをなまえに押し付け、逃げるように箒の柄を掴んで勢いよく下に降りた。勢いに任せていたせいか、涙が風で飛ばされていった。駆け込むように寮に戻ると、未だに流れている涙を必死に止めようとした。

別れ際に見たなまえの表情が脳裏に焼き付き、しばらく離れなかった。






所詮、幼馴染は幼馴染のまま





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