あれから、シリウスとは何となくギクシャクしている。なまえともあまり話せなくなって、朝食の係りは専らシリウスの担当になりつつある。それがたまらなく悔しくて、僕はみんなとは別々に食事を取るようになった。
前のように戻りたいのに、いつの間にかに戻れなくて、気が付けば僕の周りには誰もいなくなっていた。
今のこの状態が昔の自分と重なって見え、痛くないと思いたいのに心がずっと叫び声を上げている。生まれたばかりの赤ん坊のように、あの日からずっと泣き止まない。
そのまま時は流れ、気付けばもうすぐで冬期休暇だ。
周りの噂を耳にすると、なまえはシリウスと付き合っているらしい。僕は「付き合っている」と本人達から聞いていない。伝えるのを忘れているのか、敢えて伝えなかったのか真相は分からない。ただ、二人が付き合っていると言うことは変わらないのだから。
二人に対してもう変な気なんか使わなくていい。なまえはシリウスのものだと、そう自分に言い聞かせる。僕はただの幼馴染み、否、それ以下なんだ。
「リーマス」
名前を呼ばれるなんて久し振りだ。
一瞬誰だか分からなくて、それを知る為に振り向こうとした。なのに突然身体が動かなくなって、記憶の中にいた誰かの声と重なった。
どうして今更、いや、どうして僕に声をかけるんだと思いながらも、動こうとしない身体に鞭を打った。
本当は、振り向きたくなかった。
振り向いてしまえば、あの日のことを嫌でも思い出す。どうしてもなまえに言えなかった言葉と、抱き締めることさえ出来なかった僕の腕。
このまま逃げたかった。でも、きっと逃がしてくれないだろう。こうして僕に声をかけてきたと言うことは、何か聞きたいことがあるのかもしれないとも思った。
杞憂なら杞憂でいい。
だけど、直接本人から聞きたいと言うのもあった。ずっと逃げてきたばかりの僕に少しだけ勇気が出たのはきっと、なまえがいたからなのかもしれない。
逃げることは簡単だけど、それだけでは何も始まらない。そう教えてくれたのは紛れもなくなまえであり、振り返った先にいたシリウスでもあった。
「リーマス」
もう一度、シリウスは僕の名前を呼んだ。今度はちゃんと、僕の瞳を見て。
「聞きたいことがあるんだ」
震えてしまう声を悟られないように、自分でも吐き気がするくらいにっこりと笑って見せた。
偽りに麻痺しはじめる
幸せなのに困った顔をするんだね
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