「こうして話すのは久し振りだな」
「そうだね」
「今までどうしてた?」
「どうもしてないよ。ただ普通に過ごしていただけ」
「そうか……」
「順調なんだよね? なまえと」
「………ああ…」
「なら、良かった」

シリウスの言葉を聞いて、僕は少しホッとして微笑んだ。自分でも驚くくらい、今は普通に笑っている。なまえが幸せならそれでいい。それをわざわざぶち壊すことなんてない。

歯切れの悪いシリウスの返事に違和感を抱いたけど、本当に幸せそうに笑っているのだから疑うのは良くない。

「シリウス、なまえは…いつも通りに過ごしてる?」
「…ああ。リーマスの代わりに俺がやってるから、なまえはいつも通りだ」

変わってしまったのは、僕がいないだけ。なまえがいつも通りなら、何も心配することはない。

シリウスもいることだしね。


「……なあ、リーマス…」
「何だい?」
「俺がなまえを好きになったから、だからリーマスは俺が嫌いなのか?」
「どうしたのさシリウス。いつもの君らしくないね」
「答えてくれリーマス…!」

怒鳴るシリウスを見ても、怒っているのか悲しいのか分からない。言葉は怒っているのに、伝えようとしている表情は今にも泣きそうだった。

「嫌いになんてなってないよ。シリウスは心配性だね」
「だったら……なんで……ッ!!」
「シリウス。なまえを泣かせたら僕が黙っちゃいないから、よく覚えていてね…」
「そんなこと分かってる」
「じゃあ、なまえをよろしくね」
「リーマス!!」

話はもう終わった。
シリウスにあっても、僕にはない。これ以上話していたら、僕がシリウスに何をするか分からない。


なまえに、会いたい………。

僕が極力避けていたから、なまえとは会っていない。ホグワーツに入ってから、こんなことは初めてだった。

会いたくて会いたくてたまらない。一目見て、笑顔が見れればそれでいい。

ホグワーツで生活をしているのに、これだけ会わないなんてある意味奇跡だ。運が良いのか悪いのかなまえの姿は見えなくて、聞こえてくるのは幸せそうだと言う君の噂だけ。


「リーマス、待てよ!!」

後ろからシリウスが追いかけてきた。だけど僕は振り返らない。違う、振り返れない。

だって、どんな悪戯をしたらこんなことになるって言うんだ。シリウスが企んだことなのかそうじゃないのか、僕はまんまと罠のようなものに嵌まったのだろう。

喜ぶべきなのか悔やむべきなのか、どちらとも言い難い感情が身体の底からフツフツと沸き上がってくるようだ。


「…リーマス……」

静かに、普通に名前を呼ばれただけなのに誰かに抱き締められた時と同じような、徐々に感じる温もりみたいに僕の心は満たされていく。

「元気にしてた?」

そう言って僕から目を離さない二つの瞳から、あたたかさを感じた。

「久し振り、リーマス」

なまえは僕を見て、微笑んだ。






僕は無意識に彼女を抱き締める





ALICE+