「なまえ……今、幸せ?」
「急にどうしたの?」
「なまえが幸せなのか気になった」
「何それ。変なリーマス」
「至って真面目なんだけどなあ」
「真面目に返した方がいい?」
「もういいよ」
「あれ? 怒った?」
「今のなまえは幸せそうだね」
「だって……………」



この先の言葉を、僕はずっと思い出せないでいた。なまえがどんな顔でなんて言ったのか、ちっとも覚えていなかった。知らず知らずの内に忘れていて、過去と同じような質問をした僕。

だからなまえは泣いた。
僕が覚えていなかったから。

答えはもう、聞いていたのに。


「なまえッ!!」

必要な時にしか現れない必要の部屋。なまえはやっぱり此処にいた。だけどこっちを見てくれない。僕とはもう顔も会わせたくないのか、声を掛けても微動だにしない。この前のことで嫌われてしまっただろうか。嫌われて当然のことをしたのだ。

返事がなくとも、僕は声を掛け続けた。

「なまえ」

今度は優しく名前を呼んでみる。それでもなまえは背を向けたままで、こっちを向く気配は一向にない。

「なまえ。まだ言ってないことがあったんだ。そのままでいいから、聞いて欲しい」

頷く気配もないけれど、僕は続けた。

「今まで忘れていて、本当にごめん。なまえは今、幸せじゃなかったんだよね?」

自惚れているのかもしれない。
否、自惚れている。

彼女の言葉が嘘でなければ、僕は今まで大馬鹿だったと言うことだ。


「一人にしてごめん。約束破ってごめん」

こんな言葉で許されるだなんて思っていない。遅過ぎるかもしれないけれど、思い出したんだ。まだ、もし間に合うのであれば。

ゆっくりなまえに近付いて、愛しいその背中を優しく抱き締めた。きっと僕の心臓は五月蝿いくらい鳴っていて、それはなまえにまで聞こえているのだろう。

きちんと口に出して言うことが出来るかどうか分からないけれど、せめて僕がなまえをどんな風に想っているかを伝えたい。

なまえはそのままでいて大人しい。今の僕は自惚れているから、良い方に考えてしまう。

なまえは今、僕といて幸せ?


「……許さない…ッ」

少し涙声で、なまえは答えてくれた。

「うん」

許さないでくれていいよ。

「リーマスがいないと、淋しい…」
「うん」

僕もなまえがいなくて寂しかった。

「やっぱり、忘れていたんだね」
「うん」

けれど一字一句、ちゃんと思い出したよ。

「…私といて、幸せ……?」
「幸せだよ。なまえは、幸せ?」
「昔と一緒」

それだけ聞ければ十分だ。
「一回しか言わないからよく聞いていて」

これ以上長引くと恥ずかしくて言えなさそうだ。


「ずっと前から、」

「今のなまえは幸せそうだね」
「だって、リーマスとずっと一緒だから! これからもずっとね!」
「うん。なまえと一緒がいい」

「だからずっと傍にいてね!」
「約束するよ、なまえ」






「ずっと昔から名前が好きなんだ」
「…私も。リーマスのこと、ずっと好きだったよ」


「「ありがとう」」






君はずっと昔のまま、変わっていなかった





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