「ねえリーマス! リーマスはわたしのことすき?」
「どうして?」
「いいからこたえて!」
「…すきだよ」
「本当? でもわたしはねえ、すっごくだいすき!」
「ぼくもなまえがすっごくだいすき!」
「ずっとだいすきだよ!」
「うん! ずっと!」



小さい頃、なまえとこんなことを言い合っていた。まだ幼い僕等はそれがどんな想いでとても大切な言葉なのか、理解していなかった。だけど幼いながらも純粋に、僕はなまえを大切に想っていたのは確かだ。

なまえがいなくなるのは嫌で、傍にいられなくなるのも絶対嫌で、無知な僕はそれをなまえに押し付けていた。

それでも、なまえは笑ってくれた。


「大切だから」

とても大事なものを包み込むように僕を抱き締めてくれた。僕もなまえが大切だと伝えたくて、強く強く抱き締めた。

あの頃の記憶はとても大切な思い出だ。
大事に大事に箱の中にしまい込んだ。

あの頃は何もかもがキラキラして見えた気がして、なまえの周りが一際輝いていた。笑顔が眩しくて、僕が触れたらいけないような気がした。けれど、なまえは僕の手を掴んで離そうとはしない。それがとても嬉しくて、照れくさかったのを今でも覚えている。


今でも大切なのは変わらない。

なまえは隣で得意気にシリウスと魔法薬を調合している。今の時間は魔法薬学の授業だ。

なまえが僕に声をかけようとする前にシリウスがなまえをペアに誘ったから、僕はジェームズと組むことになった。ジェームズはエバンズと組みたかったみたいだけど、他の女子と組んで仕舞いにはジェームズを睨み付けながら「黙りなさいポッター!」と一喝されて終わり。けれどジェームズはちっともへこたれてなんかいない。それが何だかとても羨ましくて、いつかの僕となまえのようにキラキラして見えた。


なまえは手際よく材料を切りながら鍋に放り投げ、慎重に混ぜながらシリウスと楽しそうに笑い合っている。ジェームズとの調合に専念しなきゃいけないのに、なまえから目を離すことが出来ない。魔法薬も相変わらずお手の物だ。

教授に気付かれないように会話をする彼らは何なのだろうか。なまえはエバンズほど真面目ではない。だからこうして授業中にも限らずお喋りをする。見つかってしまえばいいのにと思うものの、二人は教授の行動パターンを理解しているらしく今の所バレていない。見つかるとしてもシリウス一人で十分なんだけど。


「どうしたんだいリーマス君?」

ニヤニヤといやらしい目付きでジェームズは僕を見てくる。勘弁して欲しいな。

ジェームズの言いたいことは分かっている。今は、否、今じゃなくても放っておいて欲しい。

「何でもないよ」
「何でもなくはないだろ? 早くしないとシリウスに、」
「ジェームズ。なまえが笑っていてくれるなら、幸せなら、僕はそれでいいんだよ」
「そうかな? 僕は、」
「ほらジェームズ。今のエバンズなんかとても可愛らしいんじゃないかな」
「え?! 何処だい!? ああリリー! 髪を耳にかけるのは反則だよ! リリー、もう一回やってくれないかい?!」
「Mr.ポッター。先程から騒がしいぞ! 調合に集中したまえ!」
「はい先生!」

ああ、もう。
お喋りよりも授業妨害でこっちが注意された。おかげで教室中の目が此方に向く。急いでなまえから目を逸らす。

ジェームズはきっと納得していない。話題を逸らされたと分かっている。天才なのに馬鹿な彼は何だかんだで勘がいい。

言葉の続きは聞きたくない。寧ろ聞かなくていい。すでに分かっていることだ。分かっていることを周りからとやかく言われたくはない。

僕もジェームズのような性格だったら、今頃はシリウスの所にいただろうか。二人で魔法薬を調合していただろうか。あんな風に顔を近付けて、なまえの身体に触って……。


目の前の試験管がパリンと割れた。

隣にいてくれたジェームズが慌てて修復魔法で直してくれたから教授には気付かれずに済んだ。そうこうしている内に完成した魔法薬は毒々しい緑色をしていて、もしかしたら僕はシリウスに嫉妬をしているのかもしれないと思った。かもしれないじゃない、しているんだ。シリウスが羨ましくて仕方がない。なまえの隣に僕はもう、いることが出来ない。


「…………ずっと、……を…」

「えっ?」
「早く完成品を持って行って夕食に行こうか」
「…分かった。行こう」


「ずっと僕だけを見ていて欲しかった」
こんなのただのエゴイズムでしかない。

けれど小さい頃に、約束をしたんだ。
ずっとなまえを大好きでいると。

秘密の話をするように、なまえと二人っきりの森で誓い合った。今でもその気持ちが変わらない僕は、きっとなまえ以外を好きにはなれないかもしれない。

長い長い片想いは、片想いのまま終わっていくのだろう。この気持ちに終わりは来ない。終わりが来るとすれば、それは僕が死んだ時だ。


提出してジェームズと一緒に教室から出て行った後、なまえが見ていたなんて一ミリたりとも気付かなかった。






気付けていたら何か変わっていただろうか





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