いつも通り、今日もジェームズはリリーに振られた。これで何度目の失恋だろう。けれどジェームズは諦めると言うことをしない。先程まで落ち込んでいたかと思いきや、五分もすればいつも通り悪戯に励んでいるのだ。

もしかするとジェームズは「しない」のではなく「知らない」のではないかと思う程、しつこくリリーに付き纏っている。それこそストーカーと疑われても弁解の余地がない程にだ。

リリーにストーカーと言われようと、それでもきっとジェームズは諦めない。それほどリリーのことが大好きで、愛しているからなのだろう。

その姿をいつも側で見ている私としては、やめてもらいたいくらいなのだけど、ジェームズは知る由もないだろう。リリーを直向きに、純粋に想うその心に、私はいつも嫉妬してしまう。

私はリリーみたいに綺麗な赤毛ではないし瞳も緑色でもない。何よりも、あんな素敵に笑うことは出来ないのだ。私は、リリーにはなれない。


「全く。ポッターもいい加減しつこいのよ」
「ジェームズだからね」
「名前で呼ばないで。考えたくもないわ」

ジェームズが唯一入れない女子寮で愚痴るリリーはそれでも可愛くて、私だったらきっと醜いんだろうなと無意識に比べていた。

こんなにも綺麗で性格も素敵だから、相手がリリーだから、ジェームズは惹かれたのだと思う。私もリリーに惹かれた身だから尚更そう思う。

リリーは誰にでも優しく接していつも平等で、だけど親友の私はその平等から飛び抜けている。

「なまえは大切な友達だから特別なのよ」と、少し前に言われたのを思い出す。小さい差かもしれないけれど、それでも私は嬉しかった。私がリリーを好きなように、リリーも私を好きでいてくれているのだとそう思えた。


「でもさ、ジェームズのことを最初に話したのはリリーだよ?」と、そう口にすると彼女は見て分かるくらい慌てていて、おまけによく見れば顔もほんのり赤く染まり挙動不審だった。

「そ、それは、あんまりにも嫌だからよ」
「嫌なら話題にも出したくないんじゃないかな?」
「悪口なんだから少しくらいは出て来るわよ」
「ねえリリー。もしかしてさ、」
「も、もう寝るわ。おやすみなさい」
「……おやすみ、リリー」

シャーッとベッドの脇に付いているカーテンを勢いよく閉めるリリー。

もしかしての後に続くはずだった「気になってる?」と言う答えは聞けなかったけれど、リリーの反応を見て一目瞭然だ。

なんだ、リリーも満更でもなくなってきたと言うことなのか。リリーも少しずつジェームズのことを好きになってきているのだ。

親友の恋が実って欲しいと思う半面、私は声を上げて泣き出してしまいたくなった。気になり出してきたと言うことは、そういうことだ。


なんで、なんでリリーなのだろう。私の方がずっとジェームズのことを想っているのだと自信はある。私の方がこんなにもジェームズのことが好きなのだ。ただ単に気になりかけている彼女とは丸っきり違う。

分かってはいるけれど、そう思わずにはいられない。


何年片想いをしてきたと思うだろうか。入学してから今までずっと、好きなのだ。馬鹿みたいにジェームズだけを一途に想い続け、もう何年経っただろうか。今年でもう四年目になる。

こんなにもジェームズの気持ちを一身に受けていると言うのに、リリーはそれをさらりと受け流す。

私に向けて欲しい想いも、笑顔も、全部与えられていると言うのに。だからこそ、リリーに対して嫉妬をしまう。そんな私はとても醜くて、更にリリーが輝いて見えてしまう。こんなことを考えてしまうから、私は良くないことを思ってしまうのだ。

「だけど許して」と、そう思うのは狡いことだ。私はとても、狡い人間なのだ。


ほんの少し、少しだけ、最低なことを考えた。

ごめんリリー、ごめんなさい。
リリーなんていなくなっちゃえ、だなんて。





親友の彼女に対して
初めてこんなにも憎んだかもしれない



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