いつから私はこんなにも強くなれたのだろうか。最近まで、弱い自分が嫌で嫌で仕方なかったのに。リーマスと深く関わるようになってから、私は少し、変わっていったんだと思う。リーマスのおかげで、私は変わることが出来たのだ。嫌な自分とさよならして、前より自分を好きになれた。
リーマスがいてくれたから、私は今、逃げ出さずにいることが出来る。
ねえお願い、泣かないで。
臆病なのはみんな一緒だから。私だって怖い。ずっと前に抱き締めてくれたリーマスは、もっと怖かったのかもしれない。私はそれを、リーマスの想いをはね除けた。してはいけないことをした。
あの時本当は、もうすでに分かっていたことなんだ。いつかこうしてリーマスに想いを伝える日が来るって、頭の何処かで分かっていたはずなのに。
ごめん、ごめんね。謝ったってどうしようもないことだけれど、心の中で何度も呟く。
やっと認めることが出来たから、このまま直接聞いて欲しい。お願いだから泣き止んで。リーマスの笑顔を、私は見たい。
真っ直ぐ前を向いて、視線は逸らさずにそのまま。
「リーマス、大好きだよ」
夕日が沈みもうすっかり夜になった頃、私の唇は先程とは打って変わって、容易に言葉を紡ぎ出した。
リーマスに告白をしてから、今更顔に熱が集中し始める。リーマスの涙は光っていたから見えたけど、顔が赤いのまでは暗いから分からないだろうと、視線を逸らすことはない。
今此処でルーモスなんて唱えられたらどうしようとは思うけれど、ピタッと動きを止めたリーマスからはそんな気配はしないからまあ大丈夫だろう。私の心臓は大丈夫ではないけれど。
「…リーマス、は、私のこと、どう思ってる?」
「……………えっ…?」
「…リーマス、ちゃんと聞いてた?」
「あっと、えと、突然過ぎてよく聞こえなかった、かな?」
何それ何それ。
私泣きそうなんだけど。
「実は嘘でした!」とか言われると思っているのだろうか。本当に聞いていなかったのだろうか。
それとも、何? 私の告白を、なかったことにしようとしている…とか?
「本当に、よく聞こえなかったの?」
「え? うん、星見ながらボーッとしてたから」
「嘘」
「いや、だから本当だって」
「泣いてたくせに」
「僕は泣いてないよ」
「隠さなくていいんだよ」
「本当に、泣いてないから」
「星がね、リーマスが泣いてるって教えてくれたの」
「…真っ暗だから気付かれないと思ってたんだけどね」
暗闇に慣れてきた目がリーマスをぼんやりと捉える。流れた涙を拭っているのか、右腕が忙しなく顔の辺りを行ったり来たりしている。
「私、リーマスのこと、よく見てるから」
「聞いたことある言葉だね」
「そうかな? 私は今初めて言ったけど」
「それもそうだね」
「……………さっき、けじめ付けてきたよ。ちゃんとジェームズに告白してきた」
「うん、見ていたから知ってるよ」
「ジェームズのこと、振ってきた」
「うん。え……?」
リーマスは馬鹿だ。
人の話は最後まで聞きなさいって誰かに言われなかったの? 私なんてマクゴナガル教授によく言われるというのに。
告白する場面を見て何処かに行っちゃうなんて自惚れても仕方がない。あんな表情、させたくなんてなかった。どうして聞いてなかったと嘘を吐くのか、私には分からない。けれど、諦めるなんてことはしたくもない。
「私、リーマスのことが好き」
ありったけの想いを込めて伝える。もう聞いてないなんて言わせない。もしまた惚けたことを言ったら何度だって言ってやる。
我慢の限界が近付いたらジェームズ達に悪戯させてやる。こうなればやけくそだ。
リーマスは何も言わない。返事をしようともしない。私の方を見ているはずなのに、薄暗くぼんやりしているせいか、まるでリーマスではないのかと不安にもなる。
けれどほんのり香るチョコレートが、目の前にいるのはリーマスなんだと教えてくれる。
「リーマスのことが、大好き」
薄暗い中、ぼんやりと見えるリーマスの手を握り締める。今の私はこれで精一杯。ジェームズだったらリリーに抱き付いたりすることが出来るのだろうけど。まあ、抱き締める前に殴られているから出来てはいないか。
リーマスの保温魔法のおかげで指先はそれほど寒くはない。繋いだ手のひらから、リーマスのぬくもりが伝わってくる。とてもあたたかくて、ドキドキする。
リーマスはまだ、何も言わない。私も何も言わない代わりに、ギュッと握る手に力を込めた。離さないと意思表示をするように、ドキドキと高鳴る心臓なんて知らない振り。
「僕の何処が好きなの?」
「……何処って答えないと駄目?」
「気になるから」
「そんなこと言うなら、どうして私のことが好きなの?」
「なまえのこと好きって言ったっけ?」
「言われてないけど、自惚れてはいるよ」
「何それ、僕が好きじゃないよって言ったらどうするのさ」
「好きになってもらうまで諦めないよ」
「なんかそれ、危ないね」
「だって、リーマスのことが大好きだから」
「なまえは、本当に馬鹿だよ」
ゆっくり、手繰り寄せるように、リーマスは私を抱き締めた。優しく、とても優しく。けれど強く。
私も答えるようにリーマスを抱き締める。この際心臓の音なんて気にしていられない。リーマスだって、心臓の音がすごいのだから。私に負けないくらいドキドキしている。自惚れたって、仕方ない。
「僕でいいの?」と、リーマスは小さく聞く。何を今更。嫌だなんて言うはずがない。代わりにギュッと抱き付く力を強めた。
「私でいいの?」と、聞き返してみる。リーマスも強く私を抱き締めてくれた。嬉しくなってリーマスの胸に顔をぐりぐりやってみる。「何してるの」と笑われたけど、別にいい。リーマスも私の首にぐりぐりと顔を擦り寄せてきた。私も「何してるの」と笑ってやった。
「ついさっき、流れ星見付けたんだ」
「え?! いいな、願い事した?」
「うん。叶ったよ」
「流石お星様。仕事が早いね」
「ねえなまえ」
「何?」
「ずっと前から君が大好きだよ」
「私も、リーマスが大好きだよ」
重なる手のひらが愛おしい。
心臓の音が聞こえるくらい近くに。
抱き締めて好きだと囁いて、口づけを交わす。
流れ星を追いかけた
ようやく君の元へたどり着いた
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