「またあいつらかーッ!! 何処行ったーッ!!」
「逃げろ! フィルチが追いかけて来るぞ!」
「ピーターの言う道を通れば問題ないさ」
「頼んだぜ、ピーター!」
「う、うん! 次は右だよ!」
「はいはい、右ねー!」
今日も今日とて、悪戯をしてホグワーツ内を駆け回る私達。今頃フィルチは血眼になって私達を探していることだろう。だけどこっちには忍びの地図がある。
ピーターはフィルチの行動を読んで「次は下! 階段下りて!」と息を切らしながらも楽しそうに言う。
みんなでダーッと階段を下りている最中、私はうっかり気紛れな階段のことを忘れていた。気付いて気を付けようと思った時に、ガタンッと動き始めてしまった。急に動いたせいでバランスが取れなくなり、私は階段から足を踏み外す。
「あっ」と思った時にはもうすでに遅かった。私の身体は傾いていて倒れようとしている。これから受けるであろう衝撃を少しでも軽減が出来ればと、大してそれほど意味のない身体を丸めると言う形でガードする。ゴスッと鈍い音がして、私は階段から落ちた。
「なまえ! ジェームズ! 大丈夫?!」
「二人とも無事か?!」
「…いてて。んー、何とか?」
「…う、ん…大丈、夫」
「とりあえず大丈夫そうだね」
「よ、よかった。本当によかった…ッ」
「おいピーター。泣くなよ」
「だ、だって。ぼくがこのルートを選ばなかったら、なまえとジェームズは怪我しなかったのに……」
「それは僕の責任でもあるよピーター。一緒に考えていたのは僕もだからね」
「ったく、誰が悪いわけでもねえだろうが」
「そうそう。それに早く逃げないと追いつかれちゃうからね」
「うん。早く談話室に行こう!」
「なまえ、立てるかい?」
ジェームズが私の手をとって立ち上がらせようとしてくれた。
ずっと、望んでいた手だった。ジェームズの隣で手を繋げたら、なんて考えたことがあった。だけどジェームズはリリーしか見ていなくて、私なんて眼中にないんだろうなと同時に思った。
その手が今、私の手をとっている。だけどそれは私を立ち上がらせる為であって、階段から落ちそうになったのだって、もしかしたらあんなことを思ってしまった私に対しての罰なんじゃないだろうか。そう考えてしまって、私はその手を払ってしまった。
「…なまえ?」
私の名前を呼んでくれたのはジェームズ、ではなくリーマスだった。みんな私の行動にびっくりしていて、一番びっくりしたであろうジェームズは振り払われた手をじっと見つめていた。
俯いていて顔は見えないのに悲しい顔をしている気がして、申し訳なくて私はジェームズから顔を背けた。
「なまえ、どうしたんだよ」
「…ごめん。本当は大丈夫じゃない」
「え? もしかして何処か痛い?」
「うん。だからちょっと医務室に行って来るから、みんなは先に行ってて」
「だったらぼく達も、」
「そこは大丈夫。私が捕まらないように、みんながフィルチを動かしてくれるでしょ?」
私は精一杯笑顔で答える。いつも鋭いリーマスだけど、今だけは気付かないでいて欲しい。
「ジェームズの手を振り払ったのは何でもないんだよ」と、ただ「医務室は反対方向になるから此処で一旦別れようって意味なんだよ」と、誰が聞いているわけでもないのに、私は心の中で言い訳をした。
「よし分かった。此処は我らが悪戯仕掛人、プロングズが引き受けさせてもらおう」
「同じく、ムーニーも」
「パッドフッドもな」
「ぼ、ぼくも。ワームテールも!」
「…みんな、ありがとう」
「でも、本当に大丈夫?」
相変わらずピーターは心配性だ。でも、素直に心配してくれるのは嬉しい。みんなもピーターみたいに口には出さないけれど、心配してくれている雰囲気は伝わってきている。
心配してくれているのが嬉しくて、それと同時に身体の傷じゃないからこそ多少なりの罪悪感がある。みんな、ごめんね。身体は全然痛くはないんだけど、心がすごく痛くてたまらない。
「気を付けろよ」
「うん」
フィルチが医務室の周辺を通らないようにみんなが囮役をかって出てくれたのだから、とりあえず医務室まで向かおう。
あの時、ジェームズが私を守ってくれたことがすごく嬉しかった。あの一瞬でもリリーじゃなくて私を思って行動してくれたのだと思うと、泣いてしまうくらい嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて、一瞬でも自分が酷いことを思っていたのを忘れていた。ジェームズの大好きな、私の大好きな親友を、一瞬でも憎んでしまい挙句には「いなくなれ」だなんて。
ごめんジェームズ。
ごめんなさい、リリー。
でも、私やっぱりジェームズのことが好きなんだ、大好きなんだ。
リリーに向ける表情やリリーのことを嬉しそうに話す横顔や、ほんの些細なことで嫉妬するくらいジェームズが好きなんだ。
このまま黙って応援しようと思っていたけれど、想っているくらいならいいよね。それくらいは許して欲しい。
だけどほんの少しくらい、私を見て欲しい。
リリーに向ける感情が、私も欲しい。
そう思うのは、我が儘ですか?
いつかキミが
私を見てくれますように
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