「ねえリリー。今度の週末空いてる?」
「空いてるに決まってるじゃない!」
「だよね、よかった。一緒にホグズミードに行かない?」
「言うまでもないわよ! 行くわ!」
「よかった。それじゃ週末にね!」
「絶対よ!」

断られなくて良かった。
後は週末になるのを待てば良い。

ごめんね、リリー。


「そう言うことだから、後は自分で頑張ってね」
リリーと別れた後、物陰に隠れていた人物に向かって言った。するとリリーが去ったことを確認するように、辺りを警戒しながら悪戯仕掛人はようやく物陰から出てきた。

ジェームズは出てきた瞬間私の両手を掴み、満面の笑みで「ありがとう」と何度もお礼を言ってきた。

嬉しいのはすごく伝わったから、早くその手を離して欲しい。じゃないと私の心臓の音がジェームズに聞こえてしまいそうだ。

距離が近いから赤くなった顔を見られるのも正直避けたい。そう思っていたからなのか、ジェームズはシリウスに喜びを伝えに行ってしまった。離れてくれてホッとしたのに、やっぱり何処かで「もう少し」と思ってしまう私がいた。


「なまえが作ってくれたせっかくのチャンス、無駄にすんなよ!」
「もちろんさ、パッドフッド!」
「一歩前進、だね」
「でも、なまえは本当にいいの?」
「うん。リリーとジェームズの為だもの」
「僕、なまえと友達になれて本当に嬉しいよ!」
「はは、ジェームズ大袈裟」

まだ何も成功していないと言うのに、このはしゃぎ様だ。みんなも自分のことのように喜び、シリウスは「ついにこの日が来たか!」と有頂天である。まだ分からないと言うのにみんなは気が早過ぎる。

ピーターなんてもうすでに最悪のケースを考えているらしく、一人でブツブツと何かを呟いている。「ここで振られたら二度と立ち直れないんじゃ…」と言う考えには同意する。けれど今回のはジェームズから誘ったわけではない。よってそれほどダメージにはならないだろうと私は踏んだ。まだ喜びではしゃぎまくるジェームズを見て、少しだけ可愛いと思った。

それよりも問題は約束の日に私が行けなくなり、代わりにジェームズとホグズミードに行く選択をリリーが選ぶかどうかだ。今までのリリーなら、きっと行かないで即刻寮に引き返していただろう。

でも、今なら大丈夫だと思えた。少なからずリリーはジェームズを気になり出しているのだし、ジェームズが押していけば問題ないだろう。但し攻め混み注意だ。


「あ、そろそろ夕食の時間だ」
「早く行かないと食い損ねちまう!」
「シリウスなら大丈夫だと思う、な」
「女の子達が取っといてくれるからね、ピーター」
「いいねー。シリウスは相手に困らなくて」
「なまえ、どういう意味だ」
「きっと不純って意味だよ」
「うっ、リーマス…」
「ほらほら、早く行こ!」

幸せそうなキミを見るたびに、何処かでチラつく嫉妬。楽しそうにしているのを見るたびに、私の心に刃が刺さる。

側にいることがこんなにも辛いなんて、前々からだ。それが最近になって増しているだなんて、きっと気のせいなんだ。

歩き出した四人の中で、私と同じように立ち止まっているリーマスがいた。彼はじっと私を見つめていて、もしかしたら私の気持ちに感付いたのだろうか。昔から、リーマスは些細なことに気付いてくれるのだ。今だけは知らない振りをしていて欲しい。せめて二人が付き合うまでは、そのままで。

リーマスは何も言わずに、私をじっと見つめた後「なまえ、行こう」と手を差し出した。私はその手を掴まずに、リーマスの顔も見ないでみんなの後を追い掛けた。

もし気付いたのだとしても、同情なんてしないで欲しい。優しく手を差し伸べないで欲しい。あんな、あんな辛そうに悲しそうな顔をして私を見ないで欲しい。

私は、可哀想じゃない。私は、みんなの友達なんだから。そんなに弱くもない。

心がチクチクと痛い。

何故だろう。
リーマスの顔が、頭から離れない。





差し伸ばされた手を
強がって見て見ぬ振りをした



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