何もかもが初めての経験で、何処へ行くにしても君は私を連れ添った。
楽しい気持ちが全身から滲み出ていて、「わア」っと感激する君を見るたびに私も楽しくなる。
あの日々が、一番輝いていた。
「………ドロシー?」
「でも髪の毛金色じゃ、ナイ…」とボソボソ呟いている。私と誰かを勘違いしているようで、表情は分からないのにしょんぼりして見えた。
て言うか、え、私何やっているの。恥ずかしい。パッと離れて俯く。ついでに涙も拭いておく。なんで私、泣いてしまったんだろう。
見上げると、じいっと見られていることに気が付いた。両目の部分は目隠しのように布で覆われている為、表情は分からない。今更気付いたけれど、ものすごい格好をしている。顔全体が包帯のようなものでぐるぐる巻きだ。
「……君はドロシーなノ?」
「え、いえ、違います」
「それじゃ、君ハ誰さんなノ?」
「私は……………」
私は、誰なんだろう………?
分からない筈はないのに、どうしても思い出せない。「……あなたはどちら様ですか?」と、咄嗟に話題を逸らす。
「僕、クロウっていうんダー。ドロシーがつけてくれたんだヨー」
「…ドロシー……」
「ドロシーはネ、虹色の脳ミソを持ってるんダ」
「え……!?」
「まだ見せてもらったコトないケド、きっと虹色でピカピカーっで光ってるんだヨ」
すみません、そんな人って本当にいるの…?
あんまりにも楽しそうに話すものだから、そんな人間はいないとは言い出せなかった。もしかしたら、本当にそんな人がこの世にいるのかもしれない。
それからも彼の話は続いた。
自分はカカシでドロシーに自由にしてもらい、一緒に旅をしていたと言う。数々のトラブルに巻き込まれながらも旅を終え、今は金のキャベツを探している最中だそうだ。
金のキャベツって、やっぱり食用で探しているわけじゃないのよね…?
くしゅん。小さなくしゃみが出た。
ちょっと肌寒い。
無意識に両手で腕を摩る。
あれ、何かおかしい。私、裸足だ。服もちょっとおかしい。これって毛布とかそういった類のものだ。服は何処いった。いつ脱いだ、いや脱いだ記憶もない。
おかしいものがもう一つ。広げてみた手のひらがやけに小さい。私の手ってこんなにも小さかったかな。
不安になって、もう一度ぐるりと辺りを見回す。よく見ると、私を取り囲むように、周りに黒い大きな葉っぱのようなものが生えていた。毛布がずり落ちないように立ち上がり、見下ろすとちょうど葉の中心部分に私が座っていたようだ。
「……あの、私がどうして此処にいるのか、何か知りませんか…?」
「君ネ、そこの黒いキャベツから生まれたんだヨー」
ただの黒い葉っぱだと思ったらキャベツだったんだ…。黒いキャベツから私が生まれたって、何の冗談なのかな。人はキャベツから生まれない。このクロウって人に頼って大丈夫かな私。
「管理されてナいキャベツは、はぐれキャベツっていうんだヨ」
「へ、へえ、そうなんですか」
「だから君もはぐれキャベツなんだヨー」
「レオンとお揃いだネー」と、もうよく分からないことまで喋りはじめた。とりあえず聞いてもいないのに彼是喋り出す彼を制し、このまま此処に居ても何も分からず仕舞いなので、ついて行くことにした。
「もうすぐ迎えが来るヨー」と言う言葉に安堵したけれど、迎えに来たのが大きな大きなライオンのような動物だったので、思わず泣き出してしまった。
君の笑顔に、いつも泣きそうになる
きゅうっと締め付けられた気がして、痛くて、切ない。