どうやら俺は死んだらしい。身体が風船のようにふわふわと上空に浮いている。そして眼下に見えるのが俺の葬式会場である。
死因は出来れば聞かないでほしい。恥ずかしくて死にたくなる。ああ、俺もう死んでるか。
お袋は泣いていた。その中で妹が酷く呆れた顔をしていたのが印象的だ。
そりゃそうだよな、兄貴がとても人様には言えないような死に方したんだからな。
葬式が終わりしばらくすると、友人が俯いて肩を震わせながら俺の亡骸へ近づいて来た。
なんだか自分のために泣いてくれているのが少しだけ嬉しかった。
友人は俺の亡骸が入った棺の前に立ち、更に肩を震わせる。そこまで泣いてくれるなんて……。さすが俺の親友。
「ぶはははっ!」
友人はいきなり棺を叩きながら爆笑をする。てめぇ泣いてたんじゃねーのかよ!?
さっきまでの俺の感動返せと声を大にして叫びたいが、俺は死人。それは叶わなかった。
「お前、最後の最後までアホだな。卵の食い過ぎで喉に詰まって窒息死かよ!」
うおおおせっかくお袋が黙ってくれてたのにアホな死因が会場で露呈した。
友人が笑い転げたところで会場にざわめきが広がる。
「卵ですって」「まぁ可哀想に」という声が奥様方から聞こえてきた。本当に可哀想だと思うならその話題は避けてほしい。
お袋はそれでも泣いてくれていた。「あんた欲張って三個も食べるから」なんて声は聞こえない。例え聞こえたとしても幻聴だ。きっとそうだ。
「こんな死に方嫌だッ!」
勢い良く飛び起きると、そこは見慣れた俺の部屋だった。あれ、これまさかの夢オチ。
そうして死者蘇生した俺は朝ご飯のゆでたまごを友人に投げつけ、叫びながら学校へ向かった。
途中で不審者としてお巡りさんに捕まったが後悔はしていない。生きているだけで充分だ。
その後俺がゆでたまごを食べたかどうかは想像にお任せします。
110506
220731修正