どうしてだろうか。
ふと、疑問を感じた。



「ねぇ。自分自身の中で何よりも一番恐ろしいことってなに?」

「んー、地震雷火事親父?」

「なにそれ。」



その疑問をヒョンスンにぶつけてみたけど…答えはなんだかすごく微妙。
多分ヒョンスンは真面目に答えてない。
だって雑誌読んでるし、なんかその雑誌に夢中っぽいしね。

そんなふざけた答え求めてないんだけど、と少し拗ねると雑誌を閉じてわたしの側に近寄る。
なまえ拗ねちゃった?、なんて可愛く言ってきても許さないんだから!…とは思うものの、わたしはヒョンスンに甘い。

別にそんなに拗ねてはいなかったけど、拗ねてないよ、と敢えて普通のトーンで返した。
どうせ適当に扱ったら、拗ねてるじゃん、と騒ぎ立てるに間違いないんだから。



「じゃあ逆に僕が訊くけど、なまえはなにがこの世で一番怖いの?」

「え?わたし?」

「うん。なまえ。」



ギュッと後ろからヒョンスンがわたしを抱き締めてきた。
その状態で、さっきヒョンスンにした質問が綺麗に返される。

まさかヒョンスンが訊いてくるとは思ってもいなかったから、少しの驚き。
だっていつもみたいに、ねぇー、と甘えて来るんだと思っていたから。

少し黙っていると、なまえ?、と耳元でわたしの名前を呟かれる。
なんで耳元で言う必要があるのかは解らないけど、どうせヒョンスンのことだからそんなに深く考えていないだろう。
んー、と悩む素振りをしてから、わたしはゆっくりと口を開いた。



「そうだねぇ。一番怖いって思うのは…わたしの存在が消えちゃうことかな?」

「……どういうこと?」



軽く笑いながら、自分の存在が消えることが怖いのだと言えば、ヒョンスンはキョトンと不思議そうな顔をしてきた。
ヒョンスンはピンときていないらしく、どういうこと?、と訊ねてくる。

わたし的には率直に、解りやすく言ったつもりだったんだけど…紛らわしかったかな?

ヒョンスンに説明すべく内容を整理しながら、なんとなく…ヒョンスンに体重を預けた。
それに応えるかのように、ヒョンスンもわたしを抱く力を少しだけ強める。



「わたしね、死ぬこと自体は怖くないの。昔は気にしても無かったけど…今は思う。死んで、わたしという存在が無かったものとして扱われたり忘れ去られることが一番辛いし怖いの。」



存在が無いものとして扱われたら…。
今見ているもの、今感じているもの、今知っているものすべても失うのに。
またさらに大きなショックがある。

ヒョンスンはずっと黙って訊いて、わたしを安心させるかのように頭を撫でてくれた。
この温もりを感じた記憶も、全部全部残しておきたいのに。
そう願うのは、贅沢なことなのかな?



「なまえ、死んだらもう、そんなの自分じゃ解らないんだよ?」

「うん…。解ってるんだけど、怖い…。ヒョンスンも全部残しておきたいのに…辛い…。」

「そっか。じゃあ、いっぱいいっぱい刻み込んで、死んでも消えないくらい自分の中に僕たちを刻み込んじゃおうよ。」

「ひゃ!」



まるで、泣き付くかのようにヒョンスンの胸にしがみつく。
考えれば考えるほど恐怖に支配されてしまうのに、何故か思考回路は止まらなくて。

半分泣きそうになっていると、ヒョンスンは、死んでも消えないくらい自分の中に僕たちを刻み込んじゃおうよ、と言って、わたしの身体をふわりと持ち上げた。
このとき、あ…重い、って呟いたのは今回だけ見逃してあげる(くそぅ)。



「いっぱい刻み込んで、いっぱい映像残して、子どもから子どもに繋いでもらおう。そうしたら、世の中からも消えないよ。」

「…なんだか、ヒョンスナが言うとそれで良いような気がして来ちゃった。」

「でしょ?安心してよ。なまえの中に、嫌って思うくらい僕を刻んであげるから。」



ヒョンスンという人間は、不思議だ。
確かに四次元と呼ばれているし、存在からして不思議なところはあるけれど。

それでも、ヒョンスンが言うと本当にしちゃうんじゃないか、出来ちゃうんじゃないかって思うことが出来るんだ。
それってある意味、才能だよね。

チュッとリップ音を立てて離れる唇。
なんだかもっとヒョンスンが欲しくなって、わたしからヒョンスンの唇に噛み付いた。



いっぱい、わたしにあなたを残して。






世界で一番怖いもの

あなたが居たら、もう何も怖くない。



(どうしよう、なまえ。)

(なに?)

(なまえが可愛くてヤりたくなった。)

(…今日は、良いよ。)

(良いの?こんなに早いのに?)

(うん。ヒョンスナが、欲しいから…。)

(今日のなまえ、すごくかわいい。)

(…一言余計なのよ。)

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