王子様の隣には、お姫様。
イケメンの隣には、可愛い女の子。

そんなもの誰が決めたの?、と彼女は言う。



「……ジュニョアー、どうにかしてよー。」

「俺に言うな。」



王子様の隣には王子様。
イケメンの隣にはイケメンで良いじゃないか!
これも、彼女の定型文。

ヒョンスンと一緒に事務所の廊下を歩いていると、背中に突き刺さる視線を感じた。
その視線の送り主が誰か、なんて解っている。



「おいなまえ。覗くな。」

「ひぃ!わ、わたしなんて気にせず、どうぞわたしの為にジュニョスンしていてください!」

「普通に気にするわ!」



存在感バシバシのなまえに、覗くな、と言うとオドオドしながら気にするなと言う。
あんなに熱い視線を送って来ておきながら、よくもまあそんなことが言えたものだな、と逆に感心すら覚えてしまった。

こいつと知り合ったのは去年の春。
そして付き合い出したのは、今年の春だった。

最初の頃から、なまえは俺に熱い視線を向けていたからこそ、気になって。
事務業をしていたなまえの有能ぶりは噂で訊いていたし、仕事が出来てそれなりに可愛くて熱い視線を向けてくる、となれば、そりゃあまあ良いなと思ってしまい。
結局俺が好きだと言えば、反対になまえを困らせてしまったんだ。

なんでか、だと?
そんなもの、こいつが俺を好きで見ていたワケじゃない、からに決まってんだろ。



『わ、わたし…ジュニョンさんのこと、よく、解らないので…!ごごご、ごめんなさい…!』

『は?でも毎日見て来てただろ?』

『あ、あれは…その、えっと…。』



せっかく(ここ重要)俺から告白したのに、言葉を詰まらせながら困惑しているなまえ。
毎日熱い視線を向けて来るくせに、俺のことはよく解らないと言ったんだ。

言いにくそうに下を向きながらもごもごと話しているなまえ。
そんななまえを見て、俺は思わず答えを待つ忍耐力が尽きてしまった。



『付き合うか付き合わないか。どっちかだ。』

『つ、付き合い、ます…!!』



頬を摘み、付き合うか付き合わないか以外の言葉は要らない、と簡単に伝えるとなまえは何度も首を縦に振った。
俺だってあまり顔立ちに自信はないが、振られるとは思っていない。
だからそのときはその答えに満足したが…。

こうなるとは、思ってもいなかった。

なまえはいわゆる、腐った女子と書いて腐女子と読む"アレ"。
最初は婦女子かと思ったがありえなさそうだったし、説明されても"性根が腐った女子"くらいにしか思っていなかった。

けれどだんだんと明かされていく、なまえの隠された本性。
付き合って1ヶ月ほどで、なまえの本性はなまえの自宅で明らかになった。

あいつの家に並んでいたのは、日本のアニメ、漫画のポスターやぬいぐるみなどのグッズ。
それから妙に薄っぺらい本までがあった。
あのときの衝撃は忘れられない。



「ヒョンスナだって気になるだろ。」

「だって…ジュニョスンがわたしの目の前で…肩を組んで…じゅる…。」

「…解ったから、取り敢えず涎を拭け。」



だけど今もこうして付き合っているのは、なんだかんだで好きだから。
"そういうもの"が好きだろうがなんだろうが俺は惚れてしまったワケだし、別にあれを知ったからと言って別れるつもりもない。

なまえの場合はオープンにしたままあとで気付いて慌てた、っていうパターンだったが。
それはそれでおもしろ…可愛かったから、まあ良かったんじゃないかと思う。

目の前で涎を垂らしながらも、嬉々とした瞳で俺とヒョンスンについて語るなまえ。
そんななまえの涎を、キザながらもキスで拭ってやればなまえの顔は真っ赤になった。



「じゅじゅじゅ、ジュニョンさん!!こここここここ、ここ!駄目です!」

「真っ赤な顔で言われても説得力ないけどな。もう変な妄想で視線向けるのは止めろよ。」



真っ赤になったなまえの言葉は聞き流し、あまり見ないようにと忠告する。
メンバーにはなまえの性癖と言うか…、まあ本性は明かしていないから、俺のように誰かに勘違いされても俺が困るし。

最後になまえの頭をわしゃわしゃと掻き上げてから、さっきから待たせていたヒョンスンの元へと戻って行く。
いちゃいちゃして来たの?、なんてヘラヘラしながら言ってくるヒョンスンは、この際無視。

あの忠告から数時間後。
またしても俺と、今度はドゥジュンに向けられて来た視線に頭を抱えたことは、言わない。






腐った彼女の妄想癖

一押しはキドンなんだとか…。



(調教が足りなかったのか?)

(え!誰に調教するんですか!?萌える!!)

(お前だ馬鹿。)

(へ?)

(見るなって言ったよな。)

(ひぃ!で、でもエサがあったから…!)

(明日、は…休みか。丁度良い。)

(何が丁度良いんですか!?えぇ!?)

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