今日は仕事が早く終わるから、久しぶりにコイビトであるなまえに会える。
どれだけ久しぶりかって言うと、一週間ぶり。

え、そんなに久しぶりじゃないって?
ボクは一週間会わないだけで一年会わないのと同じくらいに思えるんだから!
…ごめんなさい、少し盛りました、二ヶ月くらいの感覚です。

まあ、そんなボクの感情はどうでも良くて。
仕事が終えたと同時に、お疲れ様でしたー!、と叫んで控え室に戻り、マイバッグを掴んで仕事場から飛び出した。

後ろでジェファンかホンビンが、なまえヌナに会いに行くのは良いですけど早めに戻って来てくださいねー、と言っていたけど。
不可能に限りなく近いよね、うん。
だって久しぶりのなまえなんだから、たっぷり堪能しなきゃだもん。

るんるん気分でタクシーに乗り、なまえの家まで向かう。
早く早くと心だけで急かし、30分くらいで到着したなまえの家に入ってリビングに行くと、何故かワンルームのベッドの上で悶え倒れているなまえが居た(いつもと違うからこれは絶対に寝てない)。

そっかそっか。
なまえはそんなにもボクに会えることが嬉しかったんだね。
音がしたはずなのに気付いてないけど。



「なまえ!久しぶり!あいた」

「ギャァァアアアア!!!!」

「へ?」



ベッドの上で寝転がっているなまえに抱き着くように飛び乗ると、素晴らしい声をあげながら無理矢理ベッドから落とされた。
え、これどんな状態なの?

ワケも解らず首を傾げるボクとは反対に、温もりが…感覚が消えちゃう…!、と悲痛に呟くなまえは真顔でとても怖い。
感覚とか温もりとか、いったいなんなの?
もしかして浮気…!?



「ちょ、なまえ!ボクと言うものがありながらも浮気してたの!?」

「うっさいわね!浮気じゃないわよ!それよりあんたのせいで覚えてた感覚と温もりを失くしそうじゃない!このお馬鹿!!」

「温もりとか…!浮気だー!」

「だから違うって言ってるでしょ!?」



本人は否定しているけど、ボクは浮気をされているっぽい。
ううん、きっと浮気されているんだ。

やっぱり頻繁に会えない彼氏なんて、どんなにサバサバしているなまえでも嫌だよね…。
きっと今日は、会えない彼氏なんて彼氏じゃないから要らないわ、なんて言われて泣きじゃくりながら帰らなきゃいけないんだよ。
ジェファン、ホンビン、ボクは早々にも帰らなきゃいけなくなりそうです。



「被害妄想もそこまでいったら末期よね。それよりそのブッサイクな声、わたし?モノマネ下手にも限度ってものがあんでしょうよ。」

「え、口に出てた!?」

「バッチリ。だから隠しごと出来ないのよ。」



どうやらボクの悲痛な心の叫びはなまえにも届いていたらしい。
頭を抱えながらなまえが言うから、本当なんだと思う。
プライバシーもへったくりもないよね。

それより、温もりだ感覚だの原因はなに?
久しぶりにボクに会ったのに、ボクに会っての第一声が変質者に会ったときの反応みたいって正直傷付くんだけど。

でもチキンなボクは訊けそうになくて。
ジーッとなまえを見つめていると、なまえはまたしても呆れたかのように深い溜息を零した。



「別に浮気じゃないわよ。本当に。ただ、大好きなアイドルのファンイベントでハグされたから、その人の温もりを消したくないだけよ。」

「あ、そういうことか!………浮気だ!ボクというアイドルグループのリーダーと会っておきながら違うグループの人たちと会うなんて!」

「あーもう、めんどくさいなぁ。言っとくけどその人、あんたより先輩なのよ?ハギョン。」

「え、先輩…。」



今日なまえが会ったのは、どうやらなまえが好きなアイドルらしい。
しかもイベントだから一安心、って思ったけどいろんな意味で浮気だよね!

なんでなんで!、と騒ぐと、呆れたようにその相手は先輩なのだと言われた。
"先輩"という文字には、ボクも弱い。
だって芸能界は、"そういう"社会だから。

先輩には後輩らしい態度を。
それを心掛けているからこそ、今度こそなにも言えなくなってしまった。

…うぅ。
いろいろと悔しい…。
ボクのなまえなのに、違う男が抱き締めるなんて本当はすごく嫌だもん。



「ま、安心しなさい。あんたのコネで会わせてとか言わないし。好きなのはチャ・ハギョンだからね。結局、アイドルはアイドルなのよ。」

「え?ん?どういうこと?」

「…馬鹿なの?」



なまえが、ボクをVIXXのエンとして見ていないでチャ・ハギョンとして見てくれていると言っているのはボクでも解る。
だけど、アイドルはアイドルなのよ、という言葉がイマイチ理解出来ない。

どういうことかと素直に訊くと、またしてもなまえに呆れられてしまった。
………ボク、今日だけでなまえに何回呆れられちゃったかな…?



「だから、アイドルはアイドル。アイドルとしてしか見ていないけど、ハギョナはアイドルなんかじゃなく、ひとりの男として見て好きになったから、ハギョナ以外を本気で好きになることはないって言ってんの。」



顔をほんのりと赤く染めながら、そんなことを言うなまえにキュンとする。
普段のなまえはそんなことを言うタイプなんかじゃないから、なおさらに。

どうしよう。
今、すごく触りたい。
なまえのことが大好き過ぎて、なまえのすべてを触りたいと思う。



「…なまえ、触っても…良い?」

「だめ。」

「なんで!?そこは、うん…良いよ、って言うところじゃないの!?」

「そんな少女漫画みたいな展開、リアルで存在するわけないでしょ。あと裏声気持ち悪い。」



勇気を振り絞って、触っても良い?、と確認すると、返ってきたのは拒否の返事。
こんな空気で断ってくるなんて、多分世界中のどこを探してもなまえだけだと思う。

体育座りでいじけていると、少し経ってから背中に温もりを感じた。
ふと後ろを振り返ると、そこにはボクに背中を向けてもたれかかるなまえが居て。
なまえはボクの顔を見ないまま、そういうのは彼氏なら確認してするものじゃないでしょ、と小さく呟いた。

ああ、どうしよう。
本当に、愛しいと思う。

くるりと振り返って、背中からなまえの細い身体を包み込む。
他の男が触るなんて!、とも思ったけど、そんなものどうでも良い。
触ったところで、なまえのこんな一面は絶対に見ることが出来ないんだから。

なまえは、ボクだけの人。
可愛い一面はボクにだけ見せたら良いんだよ。






ボクより

そいつの方が好きなのかと思っちゃった。



(なまえ、)

(あ、エッチはしないから。)

(え、なんで!?)

(温もりと感覚を消したくないもん。)

(準備万端だったのに!勃ったのに!)

(へし折ってやろうか。)

(ごめんなさい。)

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