最初から、無理だったんだと思う。
お互い結ばれるには…まだ早かったんだ。
好きの気持ちだけじゃ、世の中どうにもならないこともある。
カーテンも閉められていない窓から見えたわたしの顔は、ひどく冷め切っていた。
「そう…。無理だった。」
テーブルの上に、悲惨な形状で置かれているひとつの雑誌と携帯。
すべてがぐちゃぐちゃで、もう、何もかも考えたくなくなっていた。
別に、浮気くらい仕方ないと思っている。
本心では嫌だと胸が訴えるけど、男の本性だって解っているつもり。
男とは、セックスをしなきゃ死んでしまう、と言ってもあまり大袈裟ではないような生き物。
もちろん違う人も居るだろうけど、遠距離の彼女居るけど…と言って身体の関係を迫るような男たちが居ることも、また事実。
食べたいのに食べるのを我慢して飢えて、なんて無理でしょ。
結局女という生き物は、わたしも含めて理想観念を男に押し付けているだけなんだ。
ずっと会えてなくてセックスしてあげていないのに、他の女を抱くな、はおかしいでしょう?
毎日抱かせてあげてるのに浮気された、と言うのなら理解出来るけど。
それがもし、女本人が拒否してそんな結末になったところで、責めることは大間違い。
だからわたしは、責めたりはしない。
でもわたしにだって、理想観念はある。
素直じゃないからこそ、恋人には気付いてほしいことがあったのに。
「もう、駄目ね。」
もう無理だ。
彼もわたしも恋愛が下手くそ過ぎる。
お客さんからの連絡も、友だちからの連絡も、彼からの連絡も。
全部全部鬱陶しい。
彼の熱愛を謳っている週刊誌も鬱陶しくて、燃やしたくて堪らない。
それなら…何もかも、要らないわ。
求めていないフリをすることも疲れた。
物分かりが良くてサバサバしている彼女を演じるのも疲れた。
当たり前じゃない。
だって…わたしが出来るのは、たったひとつ。
嘘の恋愛だけなのだから。
「なまえ、さっきメール…、っ!?」
「早いのね。でももう、関わるのもめんどくさいんだわ。お互い子どもで、まるでガキのママゴトだったんだから…。満足したでしょう?」
無残な雑誌と、わたし自身に壊された携帯を見つめていると彼が帰宅した。
壊す前に送ったメールを見て、恐らくは慌てて帰って来たんだろう。
でもね、もう、手遅れなの。
何度も電話をして来たのだろうか、手には画面が光っぱなしの携帯。
走って来たのだろうか、整っていない呼吸。
わたしには、勿体無い。
こうして全力で気にして走ってもらえるほど価値もないし、彼が思い描いているような女でもないのだから。
ガキのママゴトと変わらない恋愛だった、と言えば悲痛に歪んでいく表情。
そんな表情させたかったわけではないのにね。
やっぱりわたしには、複雑な恋愛なんてまだ早かったのかもしれない。
「なまえ、あれは嘘だって解るだろ…?あんなもの、デマしか載らないんだか」
「嘘だろうが真実だろうが関係ないわ。もう疲れたの。だから終わりにするって言いたいんだって…解らない?」
何を言われても、耳に入って来ない。
弁明している言葉は嘘偽りのような気がして、受け入れられそうになかった。
この際、あれが嘘でもなんでも良い。
聞き分けの良い彼女は、もう疲れた。
何度も弁明をする彼。
そんな彼の言葉も訊かず、わたしは最後、彼を見てから部屋を出た。
悲痛に歪んでいた顔。
今にも泣き出しそうだった表情。
それらが、胸を締め付けた。
今でもわたしは好きだと言える。
だけどそれは脆く儚く、互いの理想や都合が拗れると崩れ落ちていく名前の無いカタチ。
それを守れるほど、わたしは強くはなかった。
さようなら、愛しい人。
幸せになってね。
Good-by,My love.
気持ちだけではどうにもならないもの。
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