なまえと付き合いだして、1ヶ月。
出会いは本当に些細なことで、お互い一目惚れみたいな形で付き合った。
そんなボクたちのデートは、いつもどっちかの家っていう室内デート。
本当なら何処か外に出てデートをしてあげたいし、きっとなまえもそっちを望んでいるんだろうけど……。
ボクの仕事柄、どうしても外でデートをすることは許されていなかったから。
たまにはなまえと外に出て、堂々と恋人らしいデートもしてみたい。
それをするには…やっぱり、変装して夜に出るしかない…のかな。
「なまえ!外にデート行かない?」
「いや、家で良いよ。ギグァナも危ないし。」
スタイリストの姉さんたちから借りた変装道具を持って、なまえの家に来て外へ出掛けようと提案してみたは良いけど…。
まさかのなまえがその気じゃないパターン。
これは予想していなかった…。
ベッドに寝転がって携帯を触りながら、たまに起き上がってタバコを吸う。
立ち上がる気配なんてまったく見せないなまえは、本物のインドア人間だと思った。
普通って、外に出掛けたり買い物したり、そういうデートをしたいもんじゃないの?
そんなことを思いながらなまえを見ていると、不意に視線が重なった。
「なに?」
「あ、いや…。屋外デート、ってなまえは嫌なのかなぁ…と思って…。」
「うん、やだ。わたし家でゆっくりしてる方が好きだし、人混み嫌いだもん。」
携帯から一瞬だけ視線を逸らし、また携帯に視線を戻すなまえ。
なまえはどうやら、人混みが嫌いなようだ。
むしろ外という空間が嫌いなのかもしれない。
でも確かに、よくよく考えたらタイミング良く行われたファンイベントのチケットをあげると言っても断られたし。
なまえが好きなバンドさんのチケットも取れそうだったからあげるって言っても、要らない、で終わってたもんな…。
あれ、もしかして本気で、なまえは家から出るのが嫌い?
じゃあボクがなまえと出会えたのって、もう奇跡に近いよね。
…じゃなくて。
「せっかくだし、外に行こうよ…。ヌナたちから変装道具も借りて来たのに…。」
「今日寒いから出たくない。ぬくぬくーん。」
「…だめか。」
でもなまえが例え極度なインドア人間だとしても、ボクはアウトドア人間なんだ。
だから諦めずにもう一度訊いてみたけど…反応は薄いどころか、拒否されてしまう。
確かに今日はなまえが言うように、かなり寒い天気になっている。
もともと寒がりらしいなまえだからなのか、こんな寒さの中では出たくないらしい。
外に出るの、楽しみにしていたんだけどな…。
「…はぁ。今日だけだからね。」
「え?」
「それ、借りたんでしょ?だったら使わなきゃいけないもんね。」
「じゃあ、外…!」
「しょうがないなぁ。ギグァナの奢りなら、ご飯くらいには行って差し上げましょう。」
ボクが外出を諦めて落ち込んでいると、なまえが諦めたように折れた。
しょうがないなぁ、なんて言っているけど、なまえの表情はなんだか楽しそうで。
一気にボクまで楽しくなってきた。
暖かくしないとねー、なんて言いながら何枚も何枚も重ね着をするなまえ。
少し着すぎだと思うんだけど…と思いながら、ボクも変装の準備を始める。
まさか外出デートでこんなに手間がかかるとは思ってもみなかったけど…。
結果、デートは出来るから良いとしようかな。
ひきこもりカノジョ
寒い日、外に出るべからず。
(わぁ〜。ギグァナ怪しい人みたい。)
(なまえに言われたくなかった。)
(変装ってやっぱり怪しい格好になるね〜。)
(ところでなまえ。)
(ん〜?なに〜?)
(それ、何枚重ね着してるの?)
(これね、6枚!)
(ろ、6枚!?)
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