Breath - side.BEAST
今回も、僕は女装させられるらしい。
踊るならウィッグは暑いからあまり被りたくない、ということで、エクステを着けた。
「え、長ッ!青!派手!」
「お前、本当派手好きだな。」
「でも可愛いー。」
エクステを着けた僕を見て、メンバー全員が一斉に驚きの声を上げる。
エクステを着けたお陰で、ショートだった僕の髪の毛は腰あたりまで来た。
ウィッグが暑い、というのも理由だけど、ヒョンスンとカップルダンスのような振り付けをするから、というのも理由にある。
どうせカップルダンスのような振り付けなら女の子姿の方が絵にはなるだろうし、踊るならウィッグはいろいろと邪魔だ。
みんなが興味津々で見ている中、不機嫌そうにしている人物が約1名。
あんまりにも不貞腐れているものだから、僕はみんなの輪から離れて、前に立った。
「不貞腐れてるの?」
「…なんで伸ばしたんだよ。」
「ヒョンスンとカップルダンスをするから、かな。ウィッグも蒸れるから当分嫌だしね。」
「…なんで、ヒョンスナなんだよ。」
「ジュニョンが踊れないからだろ?」
不貞腐れてるの?、と訊いても、不貞腐れている張本人はそれの答えは返さない。
その代わり、「なんで伸ばしたんだよ」なんてことを言ってきた。
カップルダンスと思ってはいないけど「ヒョンスンとカップルダンスをするから」と言えば、さらに不機嫌になる。
本当、解りやすいよね。
僕とヒョンスンが選ばれた理由は、きっとメインダンサーである僕に、ヒョンスンはついてこれるボーカル班だから。
ただそれだけで、他に理由はないのに。
このヤキモチ妬きな男は、すっかり不貞腐れてしまっていたらしい。
僕のことをかわいいって言うけど、ジュンヒョンだって充分かわいいと思うよ。
「ダンス、がんばりなよ。メインダンサーの僕にも引けを取らないくらい。」
「…あー、ムカつく。」
「ちょ、ジュニョン!」
少しの嫌味を込めて、ダンス頑張りなよ、と言って顔をグッと近付ける。
するとジュンヒョンの眉間には皺が寄り、不機嫌に拍車がかかった。
そろそろ準備をしようと思って顔を離すと同時にジュンヒョンから腕を掴まれ、ジュンヒョンの元へと引き寄せられる。
椅子に座っているジュンヒョンにもたれかかる体勢になったことに焦り、離れようとするのにジュンヒョンは僕を離してくれない。
こうなると、ジュンヒョンは気が済むまでは僕を離さないんだろう。
こんなジュンヒョン、珍しい。
「かわいいとか言われんなよな。」
「僕が女装したらいつも言われてるんだ。そんなこと、今さらだよ。」
「ブスにでもなれ。」
「無理。僕は顔が良いんだもん。」
「かわいいとか言われんなよ」なんて、嫉妬満載なことを言うジュンヒョン。
珍しく嫉妬を表現してくるジュンヒョンに、愛しさと笑みが溢れてくる。
かわいいなんて言われても、嬉しくはない。
それは今も昔も変わらないが、でも、ひとつだけ変わったことがある。
それはジュンヒョンにかわいいと言われると、嬉しいと思う、ということだ。
ジュンヒョンに言われると、それが本心のように思えたから…嬉しくなる。
「ジュニョン、僕のことがかわいくて仕方がないんだって素直に言いなよ。」
「…お前、生意気になったな。」
「僕は元からこんな性格だよ。」
「はぁ…。認めるよ。急に女っぽくなるから不安になった。かわいい。降参する。」
クスクスと笑いながら「かわいくて仕方がないんだって素直に言いなよ」と言えば、未だにどこか不服そうな表情を浮かべるジュンヒョンとバッチリ視線が重なる。
見つめ合ったまま会話を交わしていると、ジュンヒョンが折れたらしい。
耳まで真っ赤にしながら素直になるジュンヒョンが、素直にかわいいと思った。
「真っ赤になって…かわいいところもあるんだね」と耳元で意地悪く言ってみると、「煩ェ」と言いながら噛み付くように口付けられる。
こうしてかわいいジュンヒョンが見れるなら。
まあ、女装も悪くはないかもしれないね。
(お前らイチャつくなよ。)
(僕たちが居るの覚えてたー?)
(あーあー、ふたりのせいで暑いなー。)
(あ、忘れてた。)
(なまえ!いくらなんでも場所を考え)
(解ってるよドンウニオンマ。)
(オンマじゃない!)
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