Shadow - side.BEAST
「ヤァ、ヨン・ジュニョン。」
「ってぇ!」
近頃は個別での仕事が多く、僕はShadowのミュージックビデオ撮影のときに、久しぶりにメンバーと会った。
前までは毎日のように一緒で、いつも同じ仕事ばかりだったのに。
僕個人もメンバー個人も有名になったんだと思うと、なんだかすごく嬉しかった。
と言うわけで、僕はメンバーたちとは久しぶりの再会を果たしたことになる。
みんなに言いたいことはあるけど、まずはこの男、ヨン・ジュニョンだ。
「ハラに訊いたよ。別れたって。しかもキミ、僕のことを引きずっていたんだって?」
ついこの間、偶然話すようになって連絡先を交換したハラから、ジュンヒョンと別れたという報告を受けた。
しかも理由が、ハラから見ても僕のことを引きずっていたことが解ったから、らしい。
僕はもうとっくの昔に吹っ切れた(FICTIONは黒歴史だよ)と言うのに、この男は…。
女々しいジュンヒョンに腹が立って、会うなり思い切り蹴り飛ばしてやった。
聖から直々に受け継いだこの蹴りは、たぶん相当痛いと思う(ざまあみろ)。
「…まあ、そうなんだけど。」
「ハラが可哀想だよ。」
「最低だったって、解ってる。」
「最低。本当に最低だよ。」
苦虫を噛み砕いたような表情を浮かべるジュンヒョンは、なんだか哀れだ。
だけどジュンヒョンよりも誰よりも、ハラが一番可哀想だと思う。
僕なんかを引きずってたばかジュンヒョンのせいで、かわいいかわいいハラが傷付いた。
本当、なんでこんな男の側には僕やハラみたいに端正な顔立ちの子が集まるんだろうね。
まあ、結局僕も…きっとハラも、ジュンヒョンの性格に惹かれていたんだけど。
「まったく。女の気持ちも、っ!?」
「ピンク、可愛い。似合ってる。」
まったく、と呆れながらジュンヒョンに説教をしていると、突然ジュンヒョンが僕に近付いて来て思わず後退りをする。
ハラからも「僕を引きずっていた」と聞かされているから、つい構えてしまった。
ジュンヒョンはBAD GIRLとMysteryのときと同じ髪型で、そしてピンクに染まった僕の髪の毛を優しく撫でる。
BAD GIRLとMysteryは今までで一番短かった髪型だから、そんな髪型で触っているとなると自然と距離も近付いた。
「なんでなまえは、彼氏を作らないんだ?」
「っ、僕はジュニョンみたいに短い期間で乗り換えられるほど軽くもなかったし、今は仕事で忙しいから要らないんだよ。」
「そっか。じゃ、まだ俺にも希望はある?」
「〜〜〜ッ!ない!」
何故彼氏を作らない、と言う質問に、ジュンヒョンほど軽くないのだという嫌味と仕事が忙しいから要らない、と返してやった。
するとジュンヒョンは何を考えていたのか「まだ俺にも希望はある?」なんて言ってのける。
いつの間に習得したのか、一般の女の子じゃ思わず落ちてしまいそうな表情で僕のことを見つめて来たジュンヒョン。
久しぶりに感じる至近距離のジュンヒョンのせいで、心臓の鼓動が速まった。
「冗談だって。」
「冗談言うならもっとマシなのにしろ!!」
「なまえー?何叫んでるのー?」
久しぶりのミュージックビデオ撮影だと言うのに、本当、心臓に悪い。
冗談だと言うジュンヒョンに怒っていると、ふと現れたドンウン。
本当、たまにタイミング悪いけど、今はドンウンのタイミングに感謝する。
ドンウンの腕を掴んで、そのまま他のメンバーが待機してる場所に行く僕。
引っ張られているドンウンは状況が解っていないからか、「え?え?」と慌てていた。
ハラは、あんな馬鹿野朗とは別れて大正解だ。
ついでに僕も、別れて大正解。
あんな奴と居たら、心臓が保たないよ。
無意識のうちにジュンヒョンが褒めてくれた髪の毛を触っていたことを、僕は知らない。
(ドゥジュン、ハンバーガー。)
(太るぞ。)
(イライラするから、食べたい。)
(なに、カルシウム不足?)
(ヨン・ジュニョンがムカつくんだよ。)
(あー、痴話喧嘩?)
(違う!もう終わった話しだろ!)
(なまえ、元気になったねぇ。)
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