Gotta Go To Work - side.BEAST
こうやって形として残すのは、FICTION以来じゃないだろうか。
まあ、FICTIONは僕としては綺麗な思い出とかではないんだけどね。
だからこうして考えると、初めてのことなのかもしれない。
好きな人と、一緒に何かを作って残すのは。
「…テグン、暑苦しい。」
「………。」
「はぁ…。」
今回のミュージックビデオは、僕の相手に最初からテグンが使われる予定だった。
だけどいろいろあってティーザーはドゥジュンとの映像になり、今日、やっとテグンとすべての映像を撮ることになったんだけど…。
さっきから、テグンが僕に後ろから抱き着いたまま座っていて離してくれない。
「暑苦しい」と言ってみたところで、テグンは無視して離してくれる気配がなかった。
どうして今日はこんなにも離れようとしないのか、一応は解っている。
それはきっと、僕が髪色と髪型を変えたのにテグンに見せなかったから。
そしてテグンが来たとき、僕がメンバーに囲まれていたからなんだろう。
いや、ティーザー撮影でメンバーには見せていたんだから、わざとなんだろうけど。
本当、どうして僕が付き合う人間は、こんなにも嫉妬心が激しいんだか。
それが嬉しくないワケでは、ないんだけど。
「テグン、あいつらがああやって囲ってくるのはいつものことだから。」
「…かわいいって、言ってただろ。」
「まあ、僕の顔は悪くないからね。」
「それが嫌だ。」
僕の首元に顔を埋め、甘えてくるテグン。
そんなテグンに甘えるように、僕も無言でテグンに体重を預けた。
そこで、ふと思う。
僕がジュンヒョンと付き合っていた頃、僕はジュンヒョンに甘えるのが下手だったなと。
いつも素直じゃなくて。
何を言われてもかわいくない言葉と行動しか返せなかったけど、今は言葉はまだ改善されていないにしろ、行動はマシになった。
「別に良いでしょ。あいつらは僕の髪の感想を述べているだけであって、どうせ僕から相手にはされないんだから。」
「それでも、嫌だ。」
「…ほんと、テグンは僕と変わらないくらいワガママだよね。映像で堂々と触れ合えるんだから、それくらいは我慢しなよ。」
横にあるテグンの頭に手を伸ばし、髪の毛を掬うように撫でる。
それが気持ち良いのかテグンの声のトーンはさっきよりもだいぶマシになったが、やっぱり嫌なものは嫌らしい。
下がっているテグンの頭を上げさせ、テグンの唇に自分から自分の唇を重ね合わせる。
楽屋とは言え、いつ関係者が来るかも解らずメンバーも全員居るこの空間で、僕のこんな行動は限りなく珍しい。
だからなのか、唇を離して目を合わせたテグンは驚きで目を丸くしていて。
それが面白くて、思わず笑ってしまった。
「今の僕は、テグンだけのものなんだ。だからテグンは余計な心配をしないで、僕だけを見ていたら良いんだよ。」
「……かわいい。」
「ちょ、苦しい!テグン!」
過去はどうであれ、僕は今、テグンのもの。
テグンは、そんな僕をずっと見ていたら良い。
それだけで僕は満足するし、嬉しくもなる。
まあ、僕を見てくれているからこそ、嫉妬したんだろうけどね。
そのことをテグンに伝えると、テグンは「かわいい」と呟いて僕のお腹に回した腕のチカラを一気に強めた。
テグンの身体は当たり前に僕よりも全然大きくて、筋肉だってあるんだ。
それで苦しくないはずがない。
「苦しい!」と言えば緩められる腕。
だけど包み込む代わりに、と言わんばかりに、今度はテグンからキスされた。
「俺はなまえしか見えない。」
「それもどうかと思うけど。…まあ良いか。僕もその方が嬉しいからね。」
テグンの僕しか見えないという発言に、思わず頬が緩んでしまう。
今日のミュージックビデオの映像には、幸せな僕が映ってしまいそうだな。
そんなことを思いながらも、セットの準備が終わるのをテグンの腕の中で待ち続けた。
(俺たちが居るの、解ってるのかな。)
(すっかりふたりの世界、って感じだね。)
(…俺も昔、あんなだったのか。)
(いや、今の方が酷い。特になまえ。)
(ジュニョアのときはそうでも無いよね。)
(それはそれで複雑だな…。)
(なまえも成長して素直になったんだよ。)
(今のなまえ、幸せそうですね。)
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