Mystery - side.BEAST
「血、みたいだな。」
「………は?」
今日は音楽番組でMysteryを披露する。
Mysteryを披露するキッカケとしては、まあ僕が社長にワガママを言ったっていうのもあるんだけど、一番はBAD GIRLで僕のファンが増えていったというところだ。
ファンが増えるなんて、解っていた。
もともとファンは居たし、みんな僕の顔やパフォーマンスに惹かれていたんだろう?
だったらまた、顔とパフォーマンスで取り戻せば良いんだから。
前にドンウンにそう言ったら、「なまえだからそんなこと言っても事務所から許されるし実行出来るんだよ」と言われた。
別に僕だから出来るワケじゃない。
やろうと思えば、誰にだって出来ることだ。
僕のパートが多い、ということで披露されることになった曲、Mystery。
注目を浴びて期待値を越したパフォーマンスをすれば、もっとファンが増えるはず。
こうして、ドンウンが言ったように…少しずつ階段を上がったら良い。
そこで注目を浴びるために、僕はこの短期間で髪色を変えた。
事務所にもメンバーにも言わなかったから、戻って来たときはみんな驚いていて。
だけど誰からも、文句は言われなかった。
「血みたいだな。」
「…さっきも訊いたよ。」
真っ赤に染まった髪色。
海外の染め粉を使わせて、馬鹿みたいに真っ赤にしてもらったんだ。
髪型はそのままだけど、案外気に入ってる。
そんな髪色にずっと興味を示していたのは、ヒョンスンとジュンヒョン。
そして今、「血みたいだな」なんて言って僕の髪の毛を触っているのは、ジュンヒョンだ。
少しずつ歩み寄る。
ドンウンとそう決めてからは、メンバーが歩み寄ってきても今までのように冷たく接することはしなくなった。
それでもやはり、壁はあるが。
中でもジュンヒョンとは一番触れ合わなかったのだけど、髪色を変えてからは頻繁に近付いて来るようになった。
ヒョンスンやギグァンあたりは前々から近寄って来ていたから解るが…ジュンヒョンのこの反応・態度には思わず驚く。
「似合ってる。」
「へぇ。ジュニョンって案外、人を褒めてあげるタイプなんだね。」
ーーー似合ってる。
なんだかそれがジュンヒョンの本心のような気がして、心がむず痒くなった。
トレーナーから褒められることはあっても、仲間から褒められることは今までに無くて。
だからこそ、ドンウン曰くの素直じゃない反応になってしまった。
こういう部分が悪いとドンウンにも言われたのに、なかなか素直に受け取ることが出来ない自分は不器用なんだろう。
気を悪くしてしまったんだろうか、いや僕の性格上ドゥジュンみたいな奴からしてみたら気も悪くなるか、なんて思っていると、不意にジュンヒョンから頭を撫でられた。
「な、なんだよ。」
「おまえ、ドンウナの言う通り本っ当素直じゃねぇよな。嬉しいなら嬉しいって言えよ。」
「だ、誰が血みたいな髪色で似合ってるって言われて喜ぶんだっ。」
フッと軽く笑いながら、嬉しいなら嬉しいって言えよ、と言われる。
こんな扱いをされたのは久しぶりで。
なんとなく、照れ臭かった。
素直じゃない部分を直せ、と言われても、そんなにすぐ改善することは不可能。
またしても悪態をつくように、「誰が血みたいな髪色で似合ってるって言われて喜ぶんだ」と言えば、ジュンヒョンは僕の頭に置いていた手をパッと離した。
「綺麗だ、って褒めてんだよ。」
「…キミも僕と変わらないよ。」
綺麗だって褒めてんだよ、と吐き捨てるように告げて僕に背中を向けるジュンヒョン。
トイレにでも行くのか、ジュンヒョンは待機していた楽屋からそのまま出て行った。
僕もそうなのかもしれないが、ジュンヒョンだって充分解り辛いし捻くれている。
血みたい、という言葉を、誰が綺麗という言葉だと思うんだ?
滅多に褒められることのない恥ずかしさからなのか、顔に熱が集まる。
そのあとヒョンスンとドンウンが話し掛けて来たが、何を話したのか、僕の記憶にはまったく残っていなかった。
(なまえ、熱でもある?)
(…別に。熱なんかないよ。なに。)
(顔が赤いから、熱かと思った。)
(っ!?か、顔が…赤い…!?)
(なまえ、まだ照れてるのか?可愛い奴。)
(ジュニョン!!)
(え?え?どういうこと?)
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