真っ黒な闇の中に
「なまえ?」
「っ、」
「おま、何してんだ!」
見つかってしまった。
よりにもよって、ドゥジュンに。
「なぁ、なんでこんなことしたんだ?傷が残ったら…おまえも困るだろ?」
「…別に、何も困らない。」
ドゥジュンは幼子をあやすように、優しく僕に話しかけてきた。
そんなドゥジュンの手は、僕の傷の手当てのために忙しなく動いている。
僕ははじめて、薄くリストカットをした。
特別弱いメンタルだとは思っていない。
なんでも強気ではいた。
だけど、パートも貰えず、メインだと言われたのに踊ることも制限され。
仕上げにアンチの酷い罵詈雑言を浴びたんだ。
さすがの僕だって、そこまで強くない。
「女はキズモノにしたら駄目なんだよ。」
「…良い。どうせ僕なんか、引き取り手なんて見つからないよ。」
そうやって自分を傷付けたとき、そこまで溝も埋まっていない、どこか距離のあるドゥジュンに見つかった。
ヒョンスンやギグァンやドンウンならまだ良かったにしろ、ドゥジュンはこれ見よがしに文句を言ってくる、と思った。
だけどドゥジュンは手当てして、文句と言ったら女はキズモノにしては駄目だとか。
そんなことばかりで、僕のことを責めたりすることは一切しなかった。
「おまえが本当に困ったら、俺が引き取り手にでもなってやるよ。努力する奴は好きだし。」
はじめて、彼がリーダーで良かったと思った。
ドゥジュンは、見てくれていたのに。
だけど僕が勝手に突っぱねて、話しかけて来ない限り、ドゥジュンたちと話さなかったんだ。
リーダーとは、すごいんだと思った。
何故か、安心出来たから。
「なまえ、おまえは今、独りじゃない。ひとりだからって済ませられる世界に居ないんだ。」
「……。」
「俺らを頼れ、とは言わないけど抱えきれなくなったら言えよ。ドンウナにでも良いから。」
それだけ告げて、救急箱を持ったドゥジュンは寝室へと戻ってしまった。
あの馬鹿みたいに狭い空間に戻れるまで、もう少しゆっくりしないといけない。
けれど、もう怖くはなかった。
何が怖かったのかは解らないが、怖くない。
メンバーというのは、仲間なんだと思えた。
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