呼び出された理由
社長に呼び出された。
しかも僕だけじゃない。
ドンウンと…他5人。
全員名前は知っている。
男とか女とか、そう言う割り振りのないレッスンのときに、彼らとはよく対面していた。
それに…もう、この組み合わせで対面している。
「今日は話しがあってお前たちを集めた。お前たちをB2STとしてデビューさせることは、収録もあったし知ってるな。」
社長の話しは、僕たちでB2STというグループを組み、デビューさせるという話し。
それはMTVとか言う番組のカメラが入ってるところで言われていたし、特に驚きはない。
だからだろうか。
さして興味が持てず、ただただ、ドンウンを祝う彼らを見つめることしか出来ず。
そんな僕を見た社長は、そこで報告がある、と真面目な表情で口にした。
ああ、きっと、僕についてだろう。
「そこに居るミンスの名は本名じゃない。私の判断でミンスと名乗るように言ったからね。」
「…え?どういうこと、ですか?」
「ミンスの本名は、赤西なまえ。韓国生まれでもなく、生粋の日本人だよ。」
やっぱり。
素直に、そう思った。
自分から本名を隠せと言ったくせに、どうして今さら事実を言うんだか。
「仲間になるのに仲間内で秘密ごとは良くないだろう?」なんて笑顔で言ってのけている目の前の社長を殴ってやりたい。
そして本名を晒したことにより、周りが一気にざわつきだした。
もちろん、既にすべてを話してあるドンウンだけは落ち着いていたけど。
「でも、その名前だと…え、女…?」
「ん?なんだ、知らなかったのか?ミンスは女子の練習カリキュラムに参加するように言っておいたし、性別を隠せとは言ってないぞ。」
「…僕別に、女だってこと、隠してないよ。」
彼らがまず驚いたのは、日本人ということよりも僕の性別らしい。
こいつらも僕を勝手に男だと思い込んでた、ということか…。
確かドンウンも誤解していて、本当の性別を言ったときはかなり驚いていたかな。
それに僕は、こんな僕を受け入れてくれた社長の言い付けをちゃんと守ってやっていた。
「物足りないかもしれないが女子の練習カリキュラムに参加しろ」と言われていたからそれに参加していたし、男女混合のレッスンでない限り、彼らの前には現れていないのに。
まあ、女子の大半も僕は物好きで練習熱心な練習生だと思っていただけで、僕が男なんだと信じていたみたいだからね。
一度も男子の練習には参加してないけど。
勝手に勘違いしたのは、そっちだ。
「まあ良い。ミンスを男だと思うほど自分たちに引けを取らなかったんだろう?それならミンスが入っても、もちろん文句はないね。」
社長はきっと、僕は女なんだとみんなに知られていると思っていたんだろう。
だから女だからと反対する声もあると予想していたみたいだけど、まあ、この展開は社長からしてみたら好都合だ。
女の僕を男だと思っていた、ということは、彼らも僕の実力を自分たちと同等のものだと思っていたからだろうし。
せっかく間違えられないように、普通の男よりも髪を伸ばしたんだけどな。
社長の言葉に黙る5人。
ドンウンだけは素直に、良かったね、と僕のことも喜んでくれていた。
この7人で活動をしなければならない。
果たして彼らは、異質とも呼べる僕のことを受け入れてくれるんだか。
ちなみに、こいつらが勘違いしてるならもしかして…と思った社長によって、公式発表で僕が女であることだけが伝えられた。
…別に良いんだけど、みんな失礼じゃない?
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