閑話休題 ( 6 / 6 )




「ねぇなまえ。レオさんと、どんな感じ?」

「………さあね。」



今日は早い時間に仕事が終わったから、自宅にはドンウンが遊びに来ていた。
軽い料理を肴に、ふたりで酒を飲む。

そんなとき、ドンウンに訊かれた。
テグンとどんな感じか、と。

どんな感じかと言われても、仮想での夫婦でしかないとしか言いようがない。
あとはたまに…本当たまにあいつと重なるな、と思うくらいで。
特別何かを思うことは無かった。



「レオさんって見た目も良いし、歌も上手い。ダンスだって下手じゃないし背も高いよね。」

「…それで。何が言いたいんだい?」

「なまえもさ、確かに昔よりは元気になったけど…進んでも良いんじゃないかな、って。」

「………別に、進めないわけじゃない。」



ドンウンが言いたいのは、つまり。
昔の恋人など引きずらないで、次に進んでも…恋愛をしても良いんじゃないか、ということ。

今までだって恋愛出来なかったわけではない。
告白はされていたけど、そのときもそんな気になれずに流して断っていたから。

機会があれば、恋愛しても良い。
だけどそれは機会があればの話であって、僕から好きになることはない…と思う。



「それに僕はアイドルなんだ。恋愛しようがしまいがあまり関係ないし、恋愛したところでバレたらファンが悲しむだけなんだからね。」

「それはそうだけど…。なまえもひとりの人間なんだし、公開恋愛の先輩も…あ。」

「……そうだね。」



もし仮に恋愛したとして。
その恋愛というものが、何かプラスになることはあるのだろうか。
答えは否、そんなことはない。

恋愛に没頭して、仕事やレッスンが疎かになる人たちは今までにたくさん見てきた。
僕はたまたまそうならなかっただけであって、僕もそうなる可能性は無くは無いんだから。

公にして傷付いてしまうのは、ファン。
僕はファンを傷付けたくはない。
だからこそ…前の恋愛も終わらせたんだ。

ドンウンが言うことは解る。
僕は少し、真面目に考え過ぎているだけ。
それでも僕は、恋愛をしたいと思わなかった。



「…より戻すのも、やなんだよね?」

「もちろん戻さないよ。僕に未練はないし。」



手にした酒を飲みながら、「より戻すのもやなんだよね」と言われて頷く。
未練はないから、とは言ったものの、テグンの優しさやいろんなモノが重なるから、どうしても断言出来そうにはないが。

だけど確かに、未練はない。
ドンウンはそれ以上は言えないとでも判断したのか、再び酒を飲み出した。

あのときの気持ちを忘れられないワケでもないし、忘れたいとも思わない。
確かに幸せなときもあったから、すべてが不幸なワケではないはずなのに…。
前に進めていないのと変わらない僕は、未だに心に残しているままなのだろうか。



prev next


ALICE+