閑話休題 ( 5 / 5 )




日本から韓国に戻って家に帰ると、リビングに光が差していた。
点けっ放しで行ってしまったのだろうか、と思ったが、そう言えば靴があったっけな。



「ただいま、不法侵入者。」

「よう。」



僕の家に居たのは、唯一この家の合鍵を持っているメンバー、ジュンヒョン。
ジュンヒョンに合鍵を渡したことに大きな意味はなく、ただジュンヒョンがよく来るから合鍵を渡しているだけなのだけど。

まさか、居るとは思わなかった。
最近はドンウンばかりだったし、ジュンヒョンだって作業しっぱなしだったから。



「それで、キミは何をしに来たの?」

「人妻をからかうついでに、ソロデビューの祝杯でもあげようかと思って。俺の曲だしな。」



ソロデビューの祝杯でもあげようかと思って、と言ってジュンヒョンが見せて来たのは、僕が気に入っているメーカーの焼酎。
日本の焼酎だと言うのに、ジュンヒョンもよく手に入れられたなと感心する。

ジュンヒョンの言うように、僕はもう少しでソロデビューを果たす。
それもジュンヒョンが手掛けた曲で、だ。

SHOW TIMEの収録も始まり、ソロデビューに向けての準備も行われている。
その中でウギョルもやっているんだ、最近の僕の忙しさは尋常ではない。
まあ、ヨソプもミュージカルで忙しいけどね。

本来ならば、早く帰って寝ろ、とでも言ってやりたいところだが…。
まあ、今日は気分も良いし、ジュンヒョンの酒に付き合ってやらなくもない。
ジュンヒョンは僕よりもお酒が弱いから、長く飲むことは出来ないけどね。



「人妻は余計。曲…僕のためにありがとう。あの曲、結構気に入ってるよ。」

「そっか。まあ、気に入ってくれてるんならそれで良いけど。無理はするなよ。」

「言われなくても。」



ジュンヒョンが手掛けた曲は、僕のキーやラップに合わせたもので。
作詞は自分でやったりジュンヒョンがやったりだけれど、曲は全部作ってくれた。

ジュンヒョンと過ごした時間が長ければ長いほど、僕の中の過去が蘇ってくる。
それが一時期は苦痛だったが、ウギョルが始まると自然に…それも無くなっていた。

それは、BEASTとは違う誰かと一緒に居て触れ合っているから、なのか。
もしくはまた別の何かがあるのか…。
知りたいような気もするけど、今はそれを考えるのも面倒。

ジュンヒョンによって注がれた焼酎を一瞥し、一気に喉に流し込んだ。
飲み過ぎるなよ、と聞こえた気がしたが、今日はもうなんだって良い。
明日は久しぶりの休みなんだしね。



「おまえ、相変わらずの酒豪なんだな。」

「普通でしょ。キミたちが弱過ぎるんだよ。」

「おまえと比べたら、そりゃ弱いだろ。」



僕の飲みっぷりに呆れてるジュンヒョン。
僕がザルの酒飲みだということは今さらのことなのに、何を言っているんだか。

目の前でゆっくり酒を飲んでいるジュンヒョンを見ていると、何故か今日のテグンの姿がふと脳裏を過ぎった。
なんだかそれがすこし気まずくて視線を下に向けると、ジュンヒョンに名前を呼ばれる。



「なに、っ…!」



一瞬目を閉じて脳裏を過ぎったテグンを消し、ジュンヒョンに視線を合わせる。
するとジュンヒョンは僕の近くに来ていて、鼻先が触れ合い…それこそ、少しズレただけでキスしてしまいそうな距離に居た。

心臓に悪いイタズラだね、といつものように返してやりたいのに、言葉が出て来ない。
それは高ピッチでアルコールを摂取し過ぎて頭が回ってくれていないのか解らないが…多分理由はアルコールだ。



「俺はもうずっと、一緒に居られる。おまえの側に居てやれる。もうなまえのことを傷付けたりしないし、逃げたりなんて絶対にしない。」

「………本当、キミって諦めが悪いよね。」

「ハッ。俺の諦めが悪いから、こうしてデビューしてやったんだろ?」



胸の奥が擽られているかのように、擽ったい。
僕の中にあるむず痒い気持ちが、言葉として今にも出て来そうだ。



「…ばーか。僕はもう、懲りてるよ。何度も言っただろう?恋愛はしない、って。」

「相変わらず、か…。最近は作業でずっと一緒に居たから、変わったと思ったんだけどな。」

「僕を落とすのは難しいんだって、キミが一番解ってるだろ?」



だけどそれを言葉として口に出すには、もう時間が経ち過ぎていた。
過去のことは時間が解決してくれる、とは、よく言ったもので。
僕の中では、もうすべてが終わっているんだ。

今さら掘り起こすつもりなんてない。
ドンウンには恋愛をした方が良いんじゃないかと言われたが、結局のところ、僕は過去に囚われてしまっているから。

恋愛で傷付くのは、もう懲り懲り。

近距離に居たジュンヒョンを押し退けて立ち上がり、ジュンヒョンが置いていったスウェットを投げ付けてやる。
危ないだろ、なんて悪態をついているジュンヒョンも、昔の面影は少なくなっていた。

僕もジュンヒョンも、そろそろ過去の自分から進まなければならない。
その準備はもう、整っている。






(泊まるんでしょ?布団は自分で出して。)

(俺は一緒に寝ても良いけどな。)

(狭いから嫌だよ。ジュニョン太ったし。)

(おま…それ言うなよ。)

(事実でしょ。悔しいなら痩せれば?)

(痩せて惚れても知らないからな。)

(ああ、絶対に惚れないから安心して。)

(…本当おまえ、生意気だよな。)



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