閑話休題 ( 4 / 4 )




『…で、なんで此処に居るの?』

『カメと中丸が先にホテル行ったから。』

『先に行かせた、の間違いだろ。』



ウギョルが終わり、テグンと別れてそのままジン兄とバンに乗って帰宅した。
ひとりの家だから良いとしても、こうして人を入れるのはあまりよろしくはないだろう。
僕たちの関係は、まだ公表していないんだし。

まあ、どうせ今回のことで、前回撮った分が放送されたあとかその前にでも事務所が発表するだろうから良いけど。
また面倒なことになった。



『なんで結婚したって言わねえんだよ。』

『あんな番組の偽装結婚で、なんでジン兄に言う必要があるんだよ。』

『事後報告すんなっていつも言ってんだろ。』



ジン兄に仮想結婚のことは何も言っていない。
言えばこの人は、無理にでも休みを取って韓国まで来ると思ったから。
だから何も言わなかったのに、ウギョルのスタッフも面倒なことをしてくれる。

確かにこのゲスト出演は、友人もドンウン以外居らず、他国に住む家族にも会えていない僕への気遣いだったのかもしれないけど。
こんなもの、有り難迷惑に近いものがある。
まあ、来てしまった以上今さら文句をぐだぐだと言うつもりはないけど。

人の家でくつろぎモードに入るジン兄に視線を送り、思わず溜息が溢れる。
明日から本格的にソロ活動が始まるから、朝早くから事務所へ行ってBEASTでのカムバックの曲も練習しなければならないのに。
早く帰ってくれないだろうか。



『あ、俺明日の夕方くらいまで居るから。』

『は?訊いてないし。』

『言ってねぇもん。お前、明日ソロでステージに立つんだろ?見てやるよ。』

『見んな。』



どうやらジン兄たちは、明日の夕方以降の飛行機を予約しているらしい。
まあ、僕のソロデビューは公表されていたものだから、ウギョルで聞き付けていたとなればこちらも知っていてもおかしくはないか。

だけど、それを見られても困るものがある。
だって僕はいわゆる"デビュー"だし、ソロでステージに立つのなんて初めてだから。
どうせ見るのであれば、GOOD LUCKでカムバックしてからにして欲しかった。

テレビまで観だしたジン兄を放置して、風呂に入りに風呂場へ行く。
十数分で出ても、ジン兄は理解出来ていないであろう韓国語ばかりの番組を未だに観ていた。



『帰れば?』

『なぁ。』

『…なに。』



いつまでそうやってのんびりしているつもりなんだ、と言う意味を込めて、帰ることを促す。
すると返ってきたのはその問いに対する返答ではなく、「なぁ」という問い掛け。

ジン兄との会話が成立しないのはいつものことだったし、今はヒョンスンという四次元人間が居るから、もう気にはならない。
気が済んだら勝手に帰るだろう、と思ってその問い掛けに対して短く返事をすると、ジン兄は真剣な表情で僕を見て来た。



『もし仮におまえが俺の妹だって世間に知れて評判が悪くなったとしても、俺や礼央だけはおまえの味方だからな。』



ジン兄の言葉に、思わず目を見開く。
どうやらジン兄は、自分とグループの評価を踏まえて僕を心配しているらしい。

自分のこととなれば気にしないくせに。
僕たちに優しいところは、本当…いつまで経っても変わらないんだね。



『…反対したくせに。』

『あれは!お前が韓国語が解らないくせに韓国に行こうとしたからだろ!』



それが優しさだって解っているけど、僕は可愛くない言葉を返してしまう。
これもいつものことだから、ジン兄は慣れたものかもしれないけど。

本当にジン兄の評判とグループの評価で僕の人気が落ちる…とでも思ったのかな。
そんなわけ、ないだろう。
僕は底辺からここまでのし上がったんだから。

今さら、兄妹でどうこう言われないだろう。
言われるとしたら、「似てる」くらいしか言われないだろうし。
女である僕ひとりがBEASTに入った時点で批判は多かったんだから、気にしていられない。



『僕は大丈夫。BEASTが居るから。』

『…おまえ、強くなったな。』

『当たり前だろ。何年間、あのむさ苦しい中に居たと思ってるんだよ。』



僕はもう、ひとりよがりだったあの頃と同じなんかじゃない。
BEASTを受け入れるって決めた日から、あいつらになら…頼れるようになった。

マナーに関してはメンバー1煩いけどそれは僕のためで、いつも見守ってくれて悪いところは叱って正してくれる、リーダーのドゥジュン。
考えていることがおかしいし、言っていることもたまにおかしくなるけど…メンバーへの優しさも持って心から心配してくれるヒョンスン。
歌が苦手だった僕に歌を教えてくれて、お節介だと突っぱねていた僕を見捨てず、僕が受け入れるまでずっと待ってくれていたヨソプ。
ドンウンしか受け入れなかった時期から、1番最初にずっと話し掛けてくれて輪の中に入れようとして、ダンスも教えてくれたギグァン。

そして…練習生の頃、付きまとうなと言ってもまっすぐな言葉でこんな僕に「友だちになってくれ」と言ってきて友だちになってから、ずっと側に居て支えてくれるドンウン。
1番辛かった頃に欲しかった言葉をくれて、僕の心の拠り所になって…時には喧嘩もしながら幸せも不幸も一緒に経験し、僕に人を頼ることを教えてくれた…ジュンヒョン。

良いことも悪いことも全部ひっくるめてこいつらが僕と一緒に居てくれたから、今の僕…"ミンス"という人間は成り立っている。

それをジン兄にすべて伝えれば「そっか」と、ただ一言だけで返ってきた。
だけどその言葉の中には、"良い仲間に恵まれたな"という、隠された意味が含まれているような気がして…。
なんとなく、嬉しいと思った。



『じゃあ俺、帰るわ。カメとハゲも煩ェし。』

『カメと中丸によろしく。』

『おう。たまには帰って来いよ。』

『うん。』



満足したのか、帰り支度を始めたジン兄。
ジン兄を見送ってドアが閉まる直前で呟いた。

"ありがとう。"

反対もされたし、無理だと言われたけど。
だけどこうして活動している僕を見て心配もしてくれて、FICTIONが受賞したときは電話もくれた優しくて誇れる、最強のライバル。

だから僕は、そんなジン兄の背中に感謝の言葉を投げ掛けたんだ。



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