孤独の渦に飲まれる
練習で流した汗をタオルで拭い、ごろんと広い練習室に寝転がる。今日はぼくだけが休みで、みんなはラジオやバラエティーなんかの収録で忙しい。だから宿舎に居るだけなんて耐えられなくて、ひとり事務所に来て空いてる練習室を借りた。
ぼくにそう言った仕事があまり来ないのは、自分の性格が大元の原因だと言うことは解ってる。いくら韓国語が出来ても、置いてけぼりになってしまってリアクションが追い付かないことも多々あった。他の中国人メンバーと比べても、だめすぎる。
なにより、メンバー以外の人と触れ合うことが苦手だった。話さなければいけない、なんて解ってる。でも、緊張して上手く出来なくて、それも相俟って話せなくなったことも。
メンバーともやっと打ち解けだしたのに、ぼくがそこまで成長出来るはずもなくて。でもジュンミョンお兄さんもマネージャーも、無理しなくていいと優しくする。
確かに人には向き不向きはあるけれど、アイドルになったからにはそんな甘えたなことは言っていられない。解ってる、ぼくだってそんなこと、解ってるんだ。
「Sit...!」
悔しい。悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。
「…ぼくは、何をしているんだろう…。」
他のメンバーは、EXOとして名を広めてがんばっているのに。ぼくはこうして、ひとり静かに汗を掻くだけ。みんなが有名にしてくれるグループに胡座をかいてただ座っている。
最近では落ち着いているけれど、それでもぼくへのアンチはかなり酷い。きっと事務所はそれも案じてあまり仕事を回さないのだろうけど。そんなもの、ぼくに向けられるアンチをますます酷くさせる要因にしかならない。
MAMA以降曲を出さなかったのだって、ぼくが居るからなんじゃ…?ぼくが存在しているから、EXOは思うように活動することが出来ないんじゃないか?
ーーーボクガイナケレバ
「なまえ!!」
「!…じょん、うに…おっぱ…。」
何をしようとしたか、ぼくにも解らない。解らないけど、いつの間にか目の前に現れたジョンウンお兄さんが血相を変えた必死の形相でぼくのことを見つめていた。
震える声で、お兄さんの名前を呼ぶ。落ち着いて周りを見れば、ぼくはさっき汗を拭いたタオルを両手で握っていて、ジョンウンお兄さんはそのぼくの手を掴んでいた。
首元にタオルがある、と言うことは、ぼくは自身で自分を殺めようとしたのか。今さらながら、そうだと思うと自身の無意識からの行動がひどく恐ろしいと思えた。
「なまえ…苦しいなら、俺がおまえをずっと守ってやるから…。だから、2度と死のうとするのはやめてくれ…!」
寝転んだままのぼくの頭を抱え、ぼくの首元に顔を埋めるジョンウンお兄さん。お兄さんの身体は小刻みに震えていて、ぼくは自身だけでなく最愛の人にまで恐怖を植え付けてしまったのだと自覚した。
ああ、ぼくは、なんて情けないんだ。こんなにもぼくを想ってくれる人が居るのに、ぼくはそれを無下にしようとしたなんて。
ジョンウンお兄さんがぼくの頭を抱えたことで行き場を失った手を、ゆっくりとジョンウンお兄さんの背中に回す。たったそれだけの行動で、なんとなく落ち着けた気がした。