少女と亀と
ヒチョルお兄さんに影響されて飼ったペットを引き連れて、彼の意思を尊重した現場に足を運ぶ。水がなくても大丈夫かな。そんなことを言えば、横に居たお兄さんがクスクスと小さく笑いを零した。
「どうして笑っているの?」
「タンコマの生死が気になるなら、連れて来なかったら良かったのに。」
「でもきっと、あの人はこの子にも会いたいと思ってるよ。」
「そうだね。」
お兄さんの親友は素直じゃないから、ぼくとお兄さんが行くと言えば「宿舎(ここ)で待つから行かない」と言った。むしろお兄さんにも行くなって言ってたな。ぼくに気を遣っているのかは知らないけれど、あまり足を運ぶことのないこんな場所にたったひとりで来れる自信はカケラもなかった。
半ば無理矢理連れて来たお兄さんは、自分のメンバーだからこその嬉しさもあるみたいで表情が明るい。自分だけ入隊しないから、悲しさも寂しさも嬉しさも、全部多く経験してるもんね。ぼくも寂しかったよ。
「…!」
「あ、もしかしてあれ…、なまえ!?」
今か今かと待ちわびた瞬間だった。チラリと見えたその姿は、ぼくが待ち望んでいた、ずっと我慢していたその姿。入隊中は名残惜しくなるから我慢もしていたし、ぼくが多忙だったから、と言うのもあってまったく会えなかった愛しい人。
久しぶりのその姿は、とても凛々しくて。風でタンコマが乾いちゃう、なんて思いながらもお兄さんの制止の声を聞かず、ぼくは彼目掛けて思いっきり走った。
「わ!」
堪らずタンコマを手にしたまま飛び付いたけど、ちょっと後ろに体重が倒れただけで簡単に受け止められる。逞しくなったんだなあ。
ぐりぐりと鎖骨付近に頭を押し付けると、前みたいに優しく撫でられる。小さくてちょっと丸い優しい手が好き。この手に撫でられると、すごく落ち着く。
頭を上げて、視線を重ね。ここには記者もいないから、と言うことで彼の顎にキスをひとつ。お兄さんが近くにいなくて良かった。
「おかえりなさい。ジョンウニオッパ。」
彼から離れて、タンコマとともに笑いかければ、彼も笑ってくれた。