友だち以上恋人未満

「さて、と…。」

「あ?お前もどっか行くのか?」

「そ、ワガママ姫のお迎えに。」



ジョンオプが恋人のお迎えに出て数十分後。
俺ものそのそとソファーから立ち上がり、着替えるためにクローゼットがある部屋へと向かっていると、ヨングクから呼び止められた。

どっか行くのか、というヨングクの答えに微笑みながら、ワガママ姫のお迎えに行くと告げると、ヨングクはそれ以上なにも言うことは無かったので部屋に向かう。
そのワガママ姫、というのは、ジョンオプの恋人と同僚のなまえ。

別に"俺の恋人"、というわけではないが、なまえはことあるごとに俺に連絡をくれるちょっと気まぐれな女の子。
ゆっくりと着替えを済ませ、宿舎を出たときにタイミング良く掛かってきた電話。
ジョンオプはもう、到着したのだろうか。



「もしもし?」

『…帰れない。迎えに来て。』

「言うと思った。今迎えに向かってるから、そこの場所を教えて?」



電話に出ると、予想通りの一言。
クスクスと笑いながらそこが何処なのかと訊いたら、なまえは面白くなさそうにその場所を説明しだした。
多分、俺に読まれていたことが面白く無かったんだろう。

適当にタクシーを拾い、なるべく急ぎで、とタクシーの運転手に告げて指定された飲み屋がある場所へと向かった。

数分後、そこに到着したけれどこの飲み屋になまえの姿は見当たらない。
捻くれ娘は場所を変えたのか、と、ちょっと呆れつつも近くの公園に入った。
ほら、ビンゴ。

公園のベンチに座っているなまえ。
例えそれが後ろ姿だったとしてもすぐに解ってしまうほど、俺は年下の彼女に相当惚れ込んでしまっているらしい。

後ろから近付き、なまえのことをそっと…優しく抱き締める。
ひっ、と短い悲鳴を零したけど、迎えに来たよお姫様、と言えば、安心したように小さな溜息をフッと零した。



「変態かと思った。」

「男はみんな変態だよ。だからなまえも気を付けなきゃね。」

「…じゃあ、ヒムチャンさんも変態ね。」

「あは、確かに。」



不機嫌そうに、変態かと思った、なんて言うなまえだけど、顔が赤い。
可愛いなぁ、なんて思いながらも、俺がアイドルである以上、こんなおおっぴらな場所でいつまでも抱き締めるワケにもいかないから、名残惜しく思いながらも離れる。

迎えに来たとは言え、別に車で迎えに来たわけじゃない。
いつもの車は?、となまえに訊かれ、今日は宿舎にお留守番、と言えばなまえはまた不機嫌そうな表情になった。

車で来なかったのには、ちゃんと理由がある。
車で来ると送るのは簡単。
だけど、なまえと過ごせる時間が短くなるのが嫌だったんだ。



「たまには歩きで帰ろうよ。」

「馬鹿じゃないの。歩いたらここからウチまで何分掛かると思ってんのよあんた。」

「んー、20分くらい?」

「馬鹿。50分くらいはかかるわよ。」



なまえの腕を引いて、歩こうと言ったらなまえに文句を言われる。
20分くらい、なんて、思ってない。
いつも送ってるし、だいたいどれくらいの距離かは解ってるつもりだ。

ちょっとした冗談のつもりだったのに…なまえが真面目に返すものだから、ついつい笑えてきてしまって。
クスクスと小さく笑えば、なまえはムッとしながら、なに笑ってんのよ、と、不機嫌そうに小さく言葉を洩らした。

それを無視して、じゃあ50分歩こうか、と言えば小さな抵抗。
めんどくさい、とか、やだ、とか。
でも俺はそれすらも無視して、なまえの細い腕を引っ張りながら歩いた。



歩きながら交わす、なんてことない会話。
今は友だち以上恋人未満な付き合いだけど、いつかは恋人になれたらなぁ、と思う。

だけど当分は、このままの関係でも良いのかもしれない。
そう思ってしまうほど、この関係が心地良い。






友だち以上恋人未満

心地良いこの関係



(ねぇなまえ、いつか俺と付き合ってね。)

(は?あたしたち、付き合ってなかったの?)

(へ?)

(恋人だから呼んでたのに。馬鹿ね。)

(え、えぇ!?)



なんだか、進展しそうです。

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