◎ 羞恥心なんてありません
俺の彼女は変態である。
「おはようヨン・ジュニョン。今日も良いケツしてるよね。揉ませろ。」
「黙っとけ痴女。」
取り敢えず、かなりの変態だ。
「ジュニョニも毎回大変だよなぁ。でも愛されてるって感じもするよね。」
「そう思うなら代わってみるか?」
「絶対やだ。俺じゃ手に負えないし。」
はあ、と項垂れる俺の肩にポンと手を置いたのは、同じグループのヨソプ。
ヨソプはいつもどこかしら楽しそうにしているから、腹が立つ。
そんなこと絶対に言わないが。
あの痴女具合いを見てもなお、愛されてるって感じもするよね、なんて言うヨソプに呆れて言葉が出ない。
あれはもう、愛されてるとかそんな次元をとうに超えている。
馬鹿痴女ことなまえに会ったのは、今からだいたい3年前くらい。
俺たちがデビューして3年経った頃あたりにスタイリストとして配属されたのが当時新人でガチガチだったなまえなのだ。
最初は普通の奴だと思っていた。
見た目だって特別悪くないし、話だって面白くないわけじゃない。
どちらかと言えば、気さくな奴。
…それがどう転んだらこうなるんだか。
「あ、ちょっとなまえヌナー!もう、何してるんだよー!」
「あらニエラ。今日も元気にハゼ顔なことでよろしい。」
「ハゼって言わないで!」
隙を見て俺のケツを揉もうとくだらないことを怪しく企んでいるなまえに、迎えが来る。
去年までは俺たちの担当だったなまえは事務所ごと移動させられ、今年からは迎えに来たニエルの居るTEEN TOPにスタイリストリーダーとして移動していた。
ヌナが居ないと始まらないってみんな言ってるから早く!、えーわたしが居なくても頑張ってよ、なんてアホな会話をしているのに、なまえの視線は俺。
…確かに、ヨソプが言う通り愛されていることは愛されているんだろう。
TEEN TOPって俺らより全然若いし、浮気されても仕方がないくらいなのにいつもスケジュールが合うときは俺に会いに来ているから。
だけど普通…女がここまで羞恥を捨てるだろうか。
別にもう、気にしていないけど。
「ヨン・ジュニョン…。残念ながらわたしは行かなきゃいけないみたいなの。」
「おー。早く行って来い。」
「取り敢えずジュニョン不足だから、ケツ揉んでから行っても良いよね。」
「なんで断言してんだよ!!」
セクハラよろしくな発言をするなまえにゲンコツをプレゼントすると、いったーい!、と嘘くさそうに言い出す。
こいつのそういう発言はだいたいが嘘だから、気にもしていない。
ヨン・ジュニョンのケツー!、と聞こえてくる声に思わず寒気。
ニエルにズルズルと引っ張られながらもなまえは聞こえなくなるまで、ずっと俺のことを呼んでいた。
普通なら可愛いって思えるのに。
どうして可愛いって思えないんだか。
それがまあ、あいつの良いところ…なんだけど(多分)。
(ジュニョン!脚で顔を挟んで!)
(お前女だよな?女なんだよな?)
(あ、そういう差別良くないんだー!)
(煩ェ黙れ。差別じゃない。)
(良いからムチムチ脚で挟んでよ!!)
(そこで逆上するお前が解んねぇ。)
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