◎ 女の子の天敵なんです
ぎやあああああああ…ーー!!
「!?」
今日は俺の家に泊まっているなまえ。
たまに宿舎にあいつが行けば俺も行くけど、基本は俺の家。
なんて、そんなことはどうでも良い。
それよりもさっきの奇声はなんだ?
声からして、叫んだのはなまえ(この際、聞こえて来た叫び声がぶっさいくだったことには触れないでおく)。
こんな階数の高い家にゴキブリが出るとも思えないし、そもそもなまえはゴキブリでは叫んだりはしない(なんでも蜘蛛の方がゴキブリより嫌いなんだとか)。
「おいなまえ、どうし…ブッ!」
「やだジュニョアのえっち!」
「おま…っ!」
ゴキブリでも蜘蛛でも無さそうだと思ったら、思い当たるものは何もない。
なまえは風呂に入ると言って風呂場に向かったから、何事かと思って俺も風呂場に行ったのは良いが…。
合図もせずに風呂場の扉を開けると、飛んできたバスタオル。
何が悲しくてバスタオルなんかと挨拶しなきゃいけないんだよ。
しかも、やだえっち!、なんて。
お前が普段から散々言ってるヤツはなんだっていうんだ。
馬鹿過ぎるなまえには呆れるが、このままここに居てもラチがあかない。
それに普通と言えば普通だから、俺が出る幕もないだろう。
蜘蛛かゴキブリなら退治してやろうと思ったのに…あの馬鹿。
「じゅ、ジュニョア〜。」
「お前さっきから忙しいな。」
約30分後。
風呂から出て来たなまえは、俺のパーカーを着て泣きそうになりながらも俺にタックルして来た。
そう、これはハグではない。
タックルなんだ。
ハグとかいう可愛い勢いではない。
叫んだり馬鹿になったり泣きそうになったりと、忙しいなこいつは。
うぇえ、と言うあたり何かがあったんだろうから、一応は優しくしてやる。
珍しく頭を抱えて撫でてやってるんだ。
「わ、わたし…!」
「うん。」
「太ってたー!」
「は?」
太ってたー!、と叫んでぎゃあぎゃあ騒ぎ出すなまえ。
やっぱりロケ先でのご飯が駄目だったのね!、とか、新米って食べ過ぎは禁物なのにー!、とか……。
そりゃ太るだろう、と言わんばかりの食生活を暴露していた。
太ったなんだと喚くなまえの身体を抱く力を、少しだけ強める。
抱き締めている感覚では前と変わりないようにしか思えないが、きっと数字には変化が出ていたんだろう。
なまえはそんなに痩せてる方じゃないから、気にしてたのか?
「ジュニョア!エッチしよ!」
「なんだよ急に。」
「運動しなきゃ!明日からハードスケジュールになるけど、痩せるためなら朝まで何ラウンドまでもやっちゃうよ!!」
「いや、寝ろよ馬鹿。」
気にするほどでもないけどな、と思っていると勢い良く顔を上げたなまえ。
なんだよ、と疑問に感じながらもなまえを見ていると、なまえは必死な剣幕でセックスしようと言ってきた。
あれ、こいつ女だったよな。
ベラベラと勝手に話だし、明日からハードスケジュールが始まると言って自爆するなまえを宥め、寝る方向に持って行く俺ってやっぱり優しい。
風呂上がりで俺のパーカーを着てるって結構オイシイ状況だけど、ハードスケジュールが始まると知って朝までヤるなんてこと絶対にしないから。
ぶつぶつと文句は言うものの、おとなしく布団に包まるなまえ。
ご褒美と言わんばかりに俺も横になって抱き付いてやると、ジュニョアお風呂入ってから寝てよ、と言われた。
……こいつ殴りたい!!
(ジュニョアお風呂の良い匂い〜。)
(お前も同じ匂いしてんだろ。)
(なんだかえっちなヒ・ビ・キ。)
(良いから寝ろ。)
(えー。えっちはしな)
(い。俺はもう寝る。)
(ジュニョアのいけず!)
(なんとでも言ってろ。)
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