どっちが好きですか?

今日は比較的に平和だ。
何が平和かって、そりゃなまえが楽屋に来ないからに決まってる。

今日の仕事はTEEN TOPと別の場所らしく、なまえが仕事でも俺たちと重ならないから来ない、ということ。
朝っぱらから、ジュニョア愛してるよ、とこっちが照れるようなメッセージと一緒に自撮り写真を送ってきたなまえ。
ちなみに、その写真は一応保存した。



「ジュニョア、暇そうだね。」

「なにが。」

「なまえちゃん来ないから、寂しい?」

「まさか。平和過ぎて落ち着いてる。」



メイク待ちでソファーに座っていると、メイクを終えたばかりのヒョンスンが話し掛けて来た。
なまえがいないから寂しい?、なんて訊いて来るけど、その逆。
平和過ぎてこの平和を楽しんでいる。

女とは到底思い難い発言をしてくるわ、いつも後輩に迷惑をかけているわななまえが居なければ本当に静か。
それに俺の嫌いなやり取りを見なくて済むから、一石二鳥だ。



「僕はつまんないなぁ。なまえちゃんとジュニョアのやり取り、好きだもん。」

「そうか。俺はそうでもない。」



つまんない、と唇を尖らせるヒョンスンは子どものよう。
確かにヒョンスンはいつも、俺となまえのやり取りを見て楽しんでいた。
四次元の人間とは、よく解らない。

俺はそうでもない、と返せば、ヒョンスンはケラケラと笑いながら、素直じゃないなー、なんて言ってきた。
俺はいつだって素直だ、とは思うけど、ヒョンスンにはなにを言っても通用することはないんだろう。

別に、俺は本当になまえとのやり取りが好きなんかではない。
だけど静か過ぎて…平和過ぎて物足りないということは否定しないでおこう。



「………ん?」



そんなことを思っていると、なまえからメッセージが送られて来た。
開こうと思ったらメイクの順番が来たのだと言われたから、それはやめてメイクを優先する。
メイクしてないの、あとは俺だけかよ。

メイクを終えれば、あとは出番として呼ばれるのを待つだけ。
各々自由な時間を過ごしている中、そう言えば、となまえからメッセージが送られてきていたことを思い出す。

そのままずっと放置してたら、明日からセクハラ祭りが始まるだろう。
取り敢えずそのメッセージを開くためにアプリを開くと、そこには"写真が送られて来ました"という文字が。
なんだ、届いたのは写真か。



「ぶっ!!」

「え、なにジュニョア。なまえちゃんが来なくて頭おかしくなった?」

「ンなわけあるか。」



全力で殴りたいと思った。

なまえから送られてきた写真は、俺の予想を超えるもの。
思わず飲みかけていたコーラを噴き出すと、ヨソプが心配しているんだかしていないんだかよく解らないことを言いながら近付いて来た。

頭おかしくなった?、なんて失礼なことを言うヨソプに、ンなわけあるか、と否定して視線を携帯に戻す。
本当にこいつは…デリカシーというものがあるんだろうか。



"ジュニョア!どれが好き!?"



わざわざ画像に書かれた文字。
写真に写っているのは、女性下着がズラリと並んでいるもの。

どうしてくれようか、と悩んでいると、既読無視よくない!、とか、焦らしプレイなのね!、とか解読不能なことばかりを言ってくるなまえ。
頼むからこいつの口を誰か縫ってくれ。
いや、手を縛ってくれ、の間違いか(そんなこと本人に言ったらまた変態が爆発するだろうから言わない)。

こいつ、TEEN TOPとの仕事でスタジオに行ってるんだよな?
なのになんでこんなところに居るんだ。
休憩時間だとしても、普通に考えてこんなところ行かないだろ。



「BEASTさん、もうそろそろなのでスタンバイお願いします。」



スタッフが出番を知らせに来た。
つまりはこれから携帯をいじれない時間が来るから、一応返すことにする。

返信をしてから携帯を置けば、すぐに返信を知らせる音が鳴った。
それを見ることはない。
だってどうせ、なまえは調子に乗っているんだろうから。



"お前がするのならなんでも良い。"



ああ、もう。
恥ずかしくて堪らない。

こんなこと言うような性格では無かったのに、明らかなまえの影響を受けているような気がする。
本来の俺なら、こんなこと絶対に言ったりはしないから。

顔赤くないですか?、とドンウンに言われたけど、取り合える状態じゃない。
気の所為だろ、とはぐらかしはしたけど通用していないんだろうな。

ああ、もう。
本当に振り回されてばかりだ。






(ねぇ!ジュニョアが!)

(僅かな休憩に、何処に行ってたの。)

(チャニ!ジュニョアがね!)

(めんどくさいから惚気は訊かない。)

(えー!訊いてよ!)

(絶対やだ。)



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