新しいお仕事


「え?」



それは、まったく予想にもしていなかった出来事でした。







ある日のこと。
すべての仕事が終了し、いつもより幾分早く帰宅することが出来る。
そのことが嬉しくてソナやジウンと、帰りにパンケーキ食べて帰ろうか、なんて言っていた。

これこそガールズトーク、なんだろうなぁ、と思っていたとき。
ガチャッと扉を開けてマネージャーが入って来たと思ったら、マネージャーは寒気が立ちそうな程の笑みを浮かべながらわたしに顔を向けた。

ああ、そうなんですね。
わたしに休みというものは、ないと。



「なまえ、あなたにウギョルのオファーが来たわ。」

「え?」



はい、ここで冒頭に戻ります。
つまり何故驚いていたか、と言うと、ウギョルをすることについて、です。

マネージャーの話によると、このウギョルは既に引き受けているらしい。
テグンと恋仲なのはマネージャーも社長もみんな知っているので最初は渋ったらしいが、期間限定の特別版なので長くない、とのことで引き受けたんだと言っていた。

期間限定の特別版、か。
結婚はしないけど恋人同士にはなるらしく、期間は一ヶ月から二ヶ月分だけらしい。
まあ、そのくらいなら別に良いかな。



「これから相手に会いに行くから、ちょっとメイク直しするわよ。」

「解りました。」



このタイミングで言ってきたのには理由があった。
このまま反論もさせずに連れ去ろう、という魂胆だろう。
別にヒョソンオンニたちじゃないのだから、わたしが反論するわけない。

メイク直しをしてもらいながら、相手は解らないのかと訊く。
すると、解らない、との返事が返って来たので、あれは番組を面白くするために台本でやっているのかと思っていたけど、台本でもなんでも無いのだと理解することが出来た。

それにしても、台本じゃなくて本当に良かった。
わたし、演技力無いし…。
あ、でも台本の方が口下手には助かるかもしれない。

メイク直しを終えて、撮影場所にまでマネージャーの運転で向かう。
あ、そうだ、ウギョルのこと…一応テグンに言っておかないと。
あとから言われても面倒だしね。



「よ、久しぶり。」

「…え?チャナ?」



ここが撮影場所よ、と言われて降ろされたのは、ちょっと高そうなホテルの目の前。
こんなところで撮影なんて、贅沢過ぎやしないだろうか…と思っていると、入り口付近に見覚えのある顔が。

よく見るとその人物はビーエイピーのメンバーで、同い年でもあり親しい仲でもあるヒムチャンだった。
あれ、今日は日本に行く予定だったんじゃ…(デヒョンに訊いてるからビーエイピーのスケジュールはばっちり把握しています)。

でも、まあ居るのなら居るで良い。
もしかしてチャナが相手?、と訊いてみると、ヒムチャンは苦笑いを浮かべながら首を振った。
あ、これは多分、ヒムチャンは相手を知っているんだ。
ヒムチャンって嘘が付けないから、解りやすくて助かる。

この様子だと、テグンが相手、というのは無いんだろうな…。
ちょっと期待していたんだけど、その期待も無駄だったらしい。



「取り敢えずコレ。はい。」

「…ミッション、カード?」



取り敢えず、と手渡されたのは、一枚の封筒。
表にはミッションカードと書いていたので、なんとなく読めてきた。

そうか、簡単に言えば、ヒムチャンは仕掛け人なわけね。
なるほど。

何はともあれ、ミッションカードに書かれている階数に行った方が良さそうな雰囲気になってるか。
ヒムチャンに、チャナありがとう、とお礼を言えば、ヒムチャンは嬉しそうに微笑んだ。
母親に褒められた子どもか…。



「72階、か…。」



無駄に高いホテルを建てたのね、と建設側に少し不満を思いながらもエレベーターに乗り込み、指定された階にまで向かう。
エレベーターの壁に書いてあるモノで解ったけど、72階から75階までは部屋は無く、フロアのようになっているらしかった。

へぇ、つまりこのフロアでご対面するってことなのね。
期間限定の企画なのに、かなり手が込んでいる。

チン、と音を立てて到着する。
少し離れた場所にある扉に手を掛けてゆっくりと開けると、中にはある人物が立っていた。
その人物を見て、目を丸くする。



「はじめまして、僕の彼女さん。」



まさか、この人と期間限定で恋人になるだなんて、思ってもみなかった。






((本当にこの人が相手なの…?))

((ファンの反応が…怖い…。))


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