遊園地デート


早くも訪れたウギョル2回目の収録。

あの日は帰ってからメンバーが煩く喚いたことしか記憶にない。
相手は誰!?、変な人じゃない!?、危なそうじゃないの!?、とか…。

愛されていることはとても嬉しいことに変わりはないけど、こうも一斉に詰め寄られると困ってしまう。
いや、どっちかと言うとかなり怖い。

そしてわたしたちシークレットは、一昨日からカムバックの準備に取り掛かりはじめた。
ヒョソンオンニがソロとして活動したあと、ジウンにもソロの話が出ていたみたいだしわたしにもウギョルのオファーが来たりで、個人の仕事ばかりなのかと思った矢先のことだった。
振り付けを覚えたり歌を覚えたりと、なかなかに忙しい日々を送っている。



「遊園地…?」

「貸し切りだって!すごい!」



そんなこんなで、冒頭でも言ったけど今日はウギョル2回目の収録。
練習終わりに連れて来られたのは遊園地で、別の仕事をしていたヒョンスンオッパとは現地集合だった。

閉園に差し掛かった時間に、貸し切った遊園地。
一応アイドルとしてはお互いにもう長いからなのか、貸し切りにでもしなくちゃまずかったのだろう。

…そう言えば、第一話の放送って来週なんだっけ。
みんなの反応も怖いけど、何よりもテグンの反応が1番怖い。

結局、あの日に送ったメッセージの返事は至って普通で、頑張って、の素っ気ない一言だけ。
ちょっとは妬いてほしかったな、なんて欲張りなことは言えない。

テグンたちもカムバックを控えて練習しているらしいし、わたしたちもバタバタしていたし一昨日からカムバックの練習を始めたしで、会うどころか電話すら出来ていない状況。
だからこそ、一話の放送が少しだけ怖かったりする。

一番煩く言うのはビーエイピーくらいだろうけどね。
ハギョンは絶対馬鹿にしてくる。



「なまえ、なんだかボーッとしてるけど、大丈夫?疲れてるの?」

「え、あ…っ、ごめん…。大丈夫。」



いつの間にか考え込み過ぎていたみたいで、ボーッとしていたらしい。
ボーッとしていたことをヒョンスンオッパに指摘されて、意識が戻る。

危ない危ない。
いくらテグンとのことが不安で、カムバックの練習に疲れていてもどちらも悟られてはいけないんだ。
特に、テグンの方は。

大丈夫、と返すと、またあの無邪気な笑顔を浮かべるヒョンスンオッパ。
じゃあジェットコースターに乗ろう、と浮かれながらもわたしの手を引っ張るその姿は、やっぱり小さな子どものように見えた(年上だけど)。

…もし。
もし仮にテグンと結婚出来て、子どもが生まれたら…。
こうやって手を引っ張られながら、家族全員で遊園地に行きたいな。



「大丈夫?」

「う…、うん…。」



なんて未来予想図を想像していたら、これですよ。

今わたしが置かれている状況を簡単に説明すると…。
なんとわたし、ヒョンスンオッパに膝枕してもらってます。
とっても恥ずかしいんですが。

けれど仕方が無い。
この遊園地で一番怖いと有名なジェットコースターに乗って酔ってしまい、気持ち悪くなってしまってグッタリしているのだから。

グッタリしたわたしを見たヒョンスンオッパは、慌ててベンチへと案内し、膝の上にわたしを寝かした。
もちろん最初は抵抗したけど、動けば動くほど乗り物酔いが酷くなってしまったので、断念したということ。

ジェットコースターになんて乗る機会が無かったから、全然知らなかった。
わたし、ジェットコースターとかの絶叫系は駄目らしい。



「ごめんね。無理させちゃった?」

「…ううん、ヒョンスニオッパは悪くないから大丈夫。わたしも…酔うって知らなかったから…気にしないで。」



ごめんね、と謝るヒョンスンオッパの表情は少し辛そうで。
心配させたくないから、微笑みつつ気にしないでと伝えた。

いつの間に頼んでいたのか、スタッフさんが水のペットボトルを持って来てヒョンスンオッパに手渡す。
どうせならわたしに直接渡してくれても良かったんじゃないんですかね…。
番組的にはヒョンスンオッパに渡してからわたしに、っていう方が良いんだろうからそうしてるんだろうけど。



「なまえ、水飲める?」

「うん…。ありがとう…。」

「どういたしまして。」



ペットボトルを手渡され、重たい身体を起こし、水を飲む。
水を飲んだら少し楽になり、ヒョンスンオッパの膝枕に戻ることなくそのままベンチにもたれかかった。

ヒョンスンオッパはその様子を見て、少し楽になった?、と訊いてくる。
それに対して頷きで返すと、安心したようにヒョンスンオッパは微笑んだ。



「でも残念。せっかくなまえが僕に頼ってくれてたのに。」

「え…?」

「膝枕。もっとしてあげたかった。」



…ヒョンスンオッパは、恐らく天然の女たらしなんだろう。
こうやって照れることも何気なくサラッと言ってのけてしまうなんて、周りの落とされた女の子も可哀想だ。

しばらく休憩して、再びアトラクションへと向かっていく。
ヒョンスンオッパはわたしが絶叫系に弱いと解るなり、コーヒーカップやメリーゴーランドなど、可愛らしいアトラクションにばかり乗せてくれた。

でも、初っ端からジェットコースターに乗るくらいだし、ヒョンスンオッパは絶叫系が好きなんだろう。
だから申し訳なくて、待ってるからジェットコースターとか乗って来ても大丈夫だよ、と言うとヒョンスンオッパは一瞬キョトンとしたあと、なまえが一緒じゃないと嫌だから乗らない、と拗ねたように口にした。

あの…この人、本当にわたしより年上なんでしょうか。
中身が可愛くて年下に思えてしまう。
多分ジュノンとそう変わらないよ。



「最後にこれ行こう?」

「え…。」

「こういうの苦手…?」

「ど、どう…なんだろう…。」



貸し切る時間も終盤に差し掛かり、最後のアトラクション周りとなった。
ヒョンスンオッパが最後に、と提案して来たのは、なんとお化け屋敷。

こういうの苦手?、とヒョンスンオッパに訊かれたけれど、本当に遊園地なんて全然来ないしお化け屋敷は入ったこともないから解らない。
ホラー映画とかはひとりでも全然観れるから、多分大丈夫だとは思うけど。

どうだろう、と濁す答えをすると、じゃあ取り敢えず入ってみよう、と繋いでいた手をグイッと引っ張ったヒョンスンオッパ。
まだ心の準備が出来ていないのに…。



「へー、結構本格的だね。」

「そう、だね…。」



中に入ると、建物の中は当たり前に薄暗くて肌寒かった。
映画や番組なら話は別だけど、こうもリアルに感じると怖い。

こんなことなら苦手って言っておけば良かった…。
でももう入っちゃったし、あとに戻ることは出来ないだろう。



「もしかしてなまえ、怖い?」

「え…?なんで…?」

「手、さっきよりギュッてされてるから…もしかして、と思って。」



そろりそろりと歩いていると、ヒョンスンオッパがわたしの顔を見て、もしかして怖い?、と訊いてきた。
どうしてこの人には全部バレてしまうんだろう。
バレないように頑張っていたのに。

どうして、と訊くと、さっきよりギュッてされてるから、と言われる。
無意識のうちに握る力を強めてしまっていたらしい。
ごめんなさい!、と謝りながら手を離そうとすると、反対にヒョンスンオッパからギュッと手を握られた。



「怖かったらギュッてしてて大丈夫。僕がちゃんと出口まで連れて行ってあげるから安心して。」

「ヒョンスニオッパ…。」



わたしを安心させるように、大丈夫、安心して、と言うヒョンスンオッパ。
その優しさがすごく嬉しくて、ヒョンスンオッパの言葉に甘えるようにギュッと手に力を込めた。

…あ、手汗かいてないかな?

そんなロマンチックの欠片も無いことを考えつつ、ヒョンスンオッパの足だけを頼りに出口へと進んで行った。
出口に着いて外に出ると、襲ってくるとは安心感と変な疲れ。

ヒョンスンオッパは楽しそうにしているし、楽しかったー、なんて言っているけど…。
わたしは決めました。
もう2度とお化け屋敷には入らない。



今日もまたヒョンスンオッパに振り回されつつ、収録を終えたのであった。






(今日のなまえ、可愛かったよ。)

(か、からかわないで…!)

(今も赤くなってて可愛い。)

(うぅ…。)


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