予兆


この前行った(おこなった)BAPとのコラボ企画は、大好評だったらしい。
事務所も周りの反応を喜び、調子に乗ったついででBAPとのコラボステージを組んだ仕事が増えていった。

つまり、練習に割く時間が増え、さらにわたしにはドラマの収録もあるから多忙になった、ということ。
最初はみんなそれに反対していたけれど、結局逆らうことも出来ないから受け入れることにした。
まあ、わたしが大丈夫だと言ったのが一番の理由だろうけどね。

正直、わたしにはあまり、暇という時間が性格に見合っていないような気がしてたまらなかった。
身体を動かしている方が楽しいし、どちらかと言えば動いていないと気持ちも身体も落ち着かないから。
だから多分、こんな殺人スケジュールにも応じたんだと思う。

でも、そんな殺人スケジュールだってもうすぐ終わるんだ。
ドラマも単発一本だから収録期間も短いし、今日を含めて2回ほど撮影したら終われるんだから。
OSTなんかはもうちょっと時間がかかるんだけどね…。



「なまえ、おはよう。」

「おはよう、テグン。」



さっきも言った通り、今日で収録は残り1回になる。
前の仕事が少し押したと言うテグンを待っていると、少ししてテグンが撮影現場へとやって来た。

そしてわたしに挨拶してすぐ、撮影スタッフさんと監督さんに挨拶をして回るテグン。
そんな姿がウギョルのときのヒョンスンお兄さんと重なって、ちょっとだけ笑ってしまった。
そんなことを思ってるってテグンにバレたら、怒られちゃうんだろうけど。

テグンが到着したことでテグンは衣装を着替えに行き、わたしは途中だったメイクを再開した。
スタイリストさんも準備で大変だったのかな?



『ミンギ刑事、この事件の見解をあなたはどう見る?』

『…これは他殺です。事故ではありません。絶対に。』

『そう…。だったらそれを証明するために、理事官の事故死と言い張るものを消さなければなりません。言っている意味が解りますか?ミンギ刑事。』

『はい。』



ドラマの撮影がスタート。
今回の撮影で、事件の捜査を録り終える予定でいる。

タッグを組んでいるとは言え、こうした空気になるのはどうしてなのか…。
もうちょっと、こう…協力的な雰囲気があると思っていたんだけど…監督としては少し違うらしい。

これはこれで面白いか、なんて思いながらもどんどん進んで行く収録。
6時間掛けて捜査のシーンすべてを録り終えると、なんだか疲労がドッと身体を襲って来た。

演技に慣れていないと、こうも身体に疲れが出るものなのだろうか。
自分が演技をしてみると、役者の人たちがすごいな、と改めて感じる。



「なまえ、疲れたの?」

「はい、少し…。今日はなんだか、緊張感のあるシーンが多くて…。」

「そっか。でも、もうそろそろ役者としてのオファーが来てもおかしくはない頃合いだから…慣れましょうね。」

「はい…。」



収録を終え、SecretとBAPのコラボステージの練習をするためにマネージャーの車で事務所へと向かう。
車に乗った瞬間に襲って来た倦怠感。
それとともに頭痛もして来た。

偏頭痛はよくあったから慣れている。
慣れないのは、倦怠感だ。

助手席に倒れるように乗り込むと、マネージャーは心配したように疲れたのかと訊いてくる。
原因は、なんとなく解っていた。
天気もそうだし緊張感のあるシーンばかり撮っていたから、偏頭痛と倦怠感に襲われているんだと思う。

マネージャーの言うように、これは慣れなければいけない。
ドラマに出てもおかしくはない程度に認知はされていると思うし、これから役立つと言えば役立つのだから。

ドリンク置きにあるコーヒーを一口飲んで、深呼吸で落ち着きを取り戻す。
だけどやっぱり、このなんとも言えない倦怠感は抜けなかった。






(なまえー!お疲れ…あれ?)

(どうしたの?顔色悪いわよ?)

(…なんでもないです。)

(そう…溜め込んだら駄目よ?)

(肝に銘じておきますね。)

(ヌナー!無理しないでください!)

(おいジュノア!抱き着くな!)

(静かにしろよお前ら…。)


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