感じる異変


「お疲れ様でした!」

「ありがとうございます。お疲れ様でした。みなさんとお仕事が出来て、本当に光栄に思っています。」



長いようで短いドラマの撮影が、今、終了した。
クランクアップということで、スタッフさんからテグンとわたしに大きな花束を渡される。

刑事モノとは緊張感のあるシーンばかりで、精神を削ったような感覚から解放されるんだ。
寂しくはあるけれど、申し訳ないが有り難くも思えた。
わたしにはまだ、ドラマの主演は向いていないらしい。

だけど、わたしとテグンはまだ終わっていなかった。
これからレコーディングスタジオに向かい、録音してからダンス練習。
終わることのないスケジュールは最初こそ有り難かったが、こんなにも分刻みに動かされると気が滅入る。



「なまえ、大丈夫か?」

「大丈夫よ。声はちゃんと出るし。」

「そうじゃない。身体の方だ。」

「…大丈夫。身体もなんともない。」



移動中の車の中で、テグンから身体を心配された。
運転はわたしのマネージャーだから、もしかしたらテグンに言ったのかもしれないけど…。

わたしの身体は、そんなに解りやすくへこたれているんだろうか。
自分ではそうでもないと思っているのに、こうも周りから言われるとどうも気になってしまう。



「なまえ…、何かあったらすぐに俺に頼れ。駆け付ける、から。」

「…大丈夫。気にしないで。ね?」



いつだったか、テグンのスケジュールもめまぐるしいものだとハギョンから訊いていた。
カムバックはまだ先ではあるけど、それの準備なんかも重なっているからテグンは帰るとすぐに爆睡する、とも言っていたかな。

そんなテグンに、わたしのことで心配させたくない。
心配してくれるのは有り難いし嬉しいけど、やっぱり申し訳ないから。

忙しいのはわたしだけじゃない。
そう思っただけで身体が少しだけ楽になったような気がした。







レコーディングを完了し、次は歌番組で披露するダンスの練習。
身体は限界だったのかもしれないけれど、声の調子は良くて。
わりとすんなりとレコーディングを終えることが出来た。

だけどダンスでは、あまり力が入らずにサラッと流しているだけ。
わたしはほとんど完成していたので、先生も特には何も言わなかった。

まあ、完成しているから、と言うよりはスケジュールを考慮して怒らなかった、の方が正しいかもしれない。
どちらにせよ、有り難いのだけども。



「なまえ、水。」

「わ…。ありがとうテグナ。」



休憩中、テグンに手渡された水。
壁にもたれるように座って休んでいたわたしに気を遣ったのか、その水はとても冷たくて。
買って来てくれたんだと思った。

キャップを開けようと思って力を込めるのに、なかなか開いてくれない。
おかしい…と、思う。
今までなら普通に開けられたのに、これくらいの力が入ってくれないなんておかしいとしか思えない…。

この異変みたいなものはテグンに気付かれてはいけないと思って、無理に力を込めてなんとかこじ開ける。
ペットボトルのキャップを開けるだけでこんなにも脱力感があるなんて、思ってもみなかった。



…わたしは。
わたしの身体は、おかしいの…?






(なまえおかえりー!)

(ご飯あるよ。今温めるから。)

(…いや、ごめん…いらない…。)

(え?)

(ちょ、なまえ待ちなさい!)

(食べないと駄目よ!)


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